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少し遅れてしまったので300文字ほどいつもより増量してます
「セレスティーナ、何かその大きな固体の特徴はありますか?」
「大きなトカゲのようにも見えます。あとは鱗肌ですね」
「地竜ですか?」
地竜はこの世界に生息する竜種の中でも温厚で、体が大きな事で有名です。他国では地竜を調教して、馬の代わりに馬車をひかせる竜車があるそうです。
そしてこの地竜は深い森の奥や山などに生息していて、滅多に見ることはありません。
たまに群れからはぐれた地竜が人里に降りてくることがありますが、それでも襲ってくることはありません。
しかし今回のスタンビートと一緒に来る地龍は明らかに暴走しているようで、魔獣を轢きながらこちらに向かっているそうです。
憶測ですが、はぐれた子竜がスタンビートに巻き込まれてしまったのでしょう。
どうにか止めることが出来れば良いのですが、出来なければ結界に穴が開きそこから魔獣がなだれ込んできます。
「進路はやはりこのまま結界にぶつかりますか?」
「どうでしょうか。ぶつかるような気もしますし、ギリギリぶつからないような気も致しますわ」
「そうですか、騎士達から見えるようになるのはどれほどかわかりますか?」
「あの大きさの地竜ならもう見えていると思いますわ」
セレスティーナの指摘通りに直ぐに騎士が駆け込んでき、一緒にクロードも戻ってきました。
クロードに話を聞くと、成体の地竜が見えたため急いで戻ってきたようです。
報告を聞いたルエンが館の窓から外を見て地竜を確認したようで直ぐに私の元にやって来ました。
恐らくは結界が地竜の突撃に耐えれるかどうかを聞きたいのでしょう。
「レティア、実は」
「クロードから聞いています。地竜の突撃に結界は耐えれません。もしあの質量の突撃を防ぐのなら、確実に私の魔力がなくなり周囲の結界も無くなります」
「そうか」
「ルエンから見て進路はどうですか?結界に衝突しそうなのですか?」
「恐らく衝突するはずだよ」
「分かりました。それでは二重に結界を張ります」
「結界を二重に?」
これはどういう事なのか。そう聞かれると予想していたので説明を始めました。
「結界はどうしても破られてしまう。ならば最初から破られる前提で考えればいいのです。ルエン、館には地竜が衝突することは無いのですよね?」
「うん、館にぶつかることは無いよ」
「ならば、館を覆うように小さな結界を張ります。こうすれば破られた結界から入られても館に到達することはありませんし、あの地竜は群れの後ろにいるのですからここで耐えることが出来ればスタンビートは乗り切れます」
「わざと破らせるか。二重結界ならば2つ目の結界が破られたとしても魔獣の数は少なく済む」
「はい、そして出来ればティア様に二つ目の結界を張っていた抱きたいのですが」
「それはどうしても?」
「一つ目の結界は貼り続けなくてはいけませんし、私でも同時に二つの結界を張ることは難しいです」
「分かった。ティア良いかい?」
「勿論ですわ、お父様。皆の為にも頑張るわ」
「よし。レティア結界の準備を急いでくれ」
「わかりました。ティア様、少し魔力をこの結界に流して感覚を掴んでください。いきなり結界を張るよりはいいと思いますので」
「分かったわ、やってみる」
ティア様にやり方を教えて、残っているインクを使い魔術式を書き始めます。
魔術式は一つ目と全く同じもの。その外側に補助の魔術式を付け加えることで完成します。
この補助の魔術式は一つ目の結界と二つ目の結界を繋ぐもので、結界が割られても直ぐに魔力を流し込めるようにする役割を持たせています。
あくまでも、二つ目の結界はティア様の魔力で起動しますから補助程度の魔力しか流すことは出来ませんが、それで十分だと思います。
ティア様は魔術式が書き終わる前に感覚を掴んだようで、安定して魔力を流せるようになっていました。
この辺りは個人によって感覚を掴むまで時間が異なるのですが、ティア様はとても早いですね。
ギリギリまで時間がかかると予想していたのですがね。嬉しい誤算です。
「それでは、ティア様この結界の起動をお願いします」
「分かったわ」
結界は確かに起動して、私の魔力も少しだけ流れました。
「騎士達を結界の内側に下がらせてください。一つ目の結界が破られるまでは通ることが可能ですから。」
「分かった、直ぐに下がらせる」
結界の強度を上げましょう、騎士達が下がりやすいように。
精霊が指を舐めてきました。そんなに舐めなくてもわかっていますよ。
私の手は赤みが引いて白くなっていました、魔力が少なくなり体にも影響がではじめたようです。
ここまで魔力を使ったのはいつぶりでしょうか。多く見積っても私の魔力は残り二割程度。地竜が結界と衝突すれば反動で私の魔力も持っていかれるでしょうけど、進路くらいは変えてみせます。
ルエン達には秘密ですけどね。こんなことを言えば止められるのは目に見えていますから。いえ、ルエンは止めないかもしれませんね。この場で優先されるのは国王の命ですから。
止めたくても止めることが出来ない。そうなれば罪悪感をルエンに与えてしまいますし。言わないのがどちらにしろ正解ということです。
「結界内部への退避完了しました!」
「地竜の様子はどうだ」
レオンがいつの間にかルエンの隣にいますね少し血がついていますから外から戻ってきたのでしょう。
「進路は変わらず進行しています。ハッキリと目視出来るため距離は近いかと」
「そろそろか」
報告した騎士はそのまま外に戻って行きました。そろそろ覚悟を決めないといけませんね。
方向はわかっています、あとはその部分だけを硬くするだけです。
私の結界が破られればティア様の結界は人も魔物も通さなくなりますが、すでに内部に騎士達がいるのですから問題ありません。
あの補助の魔術式は結界同士を繋ぎ私の魔力を通すことで人が通れるようになっています。
もちろん魔物も通れるのですが結界を堅くしてあるので、魔物の侵入も少ないはずですから対処も楽でしょう。
そして、外からなにか硬いものが割れる音がすると共に私の魔力は枯渇しました。
そろそろ終盤。戦闘らしい戦闘は書いてないですけどちゃんと最後はいい感じに終わらせるのでシリアスさんは出てきません。
春ということもありますのでラストはもちろんあれをします。冬の間から決めてたことなんですけどね。
次話はスタンビートが終わってひとまずの区切りになるのかなと
誤字脱字は下の方からお願いします。




