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 ルビィクト王国への旅路はまず王都レクサリアを出発し、商業都市エルガンで一泊しルビィクト王国の国境砦にむかい向かいます。

 ルビィクト王国の国境砦についてからはルビィクト王国側の案内人及び護衛について行く予定です。帰りは行きとは逆の道順で帰ります。

 現在は王都とエルガンの間にある街道を移どうしています馬車の中には私とセレスティーナそれとティア様が同乗しています


「ティア様、お暇でしたら少しお話でも致しましょうか?」


「嬉しいわでも一体なんのお話をしてくれるの?」


「遠出をしますからそれに関係した話を致しましょう。まず自然界には魔力溜りが存在致します。ここまでは授業でやりましたね?」

「はい」

「これは魔力濃度が高い場所のことを言います。そして野生の動物が魔力溜りに近づきその体に魔力を溜めすぎると魔獣と呼ばれる存在になってしまいます。希にこの街道にも現れますが定期的に騎士団が討伐隊を編成しているのでほぼ安全と言ってもいいでしょう」

「騎士団はそのようなこともしていたのね」

「そうですね、またレクサリア王国の主な街道は近くの領主が魔獣を討伐していますから、国内を移動する分には安全なのです。なのでこのまま順調にエルガンまで行けますよ」


「魔獣のことは初めて聞いたわ。ねぇ魔獣ってどのくらい強いのかしら?」


「そうですね、魔獣の強さは元となった動物と体に溜まった魔力の量によって決まりますがリーアであれば簡単に倒せると思いますよ。騎士団にも多くいると思います」


「そうなのね。レティア、窓の外に生えている木の名前はわかる?」


「たしかこの周辺はシクドという名前の樹木だったはずですよ。建材に利用されることが多いようですよ」


「じゃあ、あの花は……」


 エルガンに着くまでの間ティア様の質問に答えながら時間を過ごしました。


「そろそろエルガンに着きますからお話はここまでに致しましょう」


「そうね。今日はエルガンで泊まるのよね?」


「そうですね。セレスティーナ場所は何処でしたか?」


「エルガン領主の舘ですわ。」


「そうなのね。あっ門が見えてきたわ!」


 ティア様は嬉しそうに窓の外に映る景色を見ていました。今まで王都から出たことがありませんから珍しいのでしょうね。あとでリーアに夕食前に街中に出れるか聞いてみましょう。

 外に広がる門を抜け大通りを進むと眼前に領主舘が見えてきました。門前にはエルガン・ディーボ様がいました。


「レクサリア・ティア王女様ようこそエルガンにおいで下さいました」

「出迎えありがとう」

「もったいないお言葉です。どうぞ中へ」


 エルガン邸の中は豪華過ぎない程の調度品が並べられとても良い雰囲気でした。リーアにティア様が街に出れないか聞きましたが流石に無理があるので駄目でした。

 その代わりこの街ならではの料理を夕食に出してもらいティア様には喜んで頂けました。翌日エルガンを後にしてルビィクト王国との国境砦に向かいました。

 ルビィクト王国の国境砦へ向かう最中急に馬車が止まりました。


「何かありましたか?」

「騎士様が止まったのです。そのため馬車も停止させました。」

 そこにちょうど騎士一人がこちらに向かって来ました。

「前方で木が倒れているため一旦隊を止めて木の撤去をするとの事です。」

「分かりました。迅速に対応をお願いします」

「それでどうだったの?」

「どうやら道を木が塞いでいるようで今撤去しているそうです」

「そうなの。じゃあ待つしかないわ」


 何か何か忘れている気がします、大事な何かを。それが思い出せません。私はもやもやした感情を残したまま木が撤去されるのを待っていました。

 そして一時間がたった頃です。外の方から「敵襲!」と鋭い声が聞こえてきました。


「敵襲!?ティア様動かないでください!セレスティーナそっちの鍵をしめて!」


 事前に敵襲などがあった際の取り決めどおりに馬車の扉に鍵をかけます。おそらく今外ではリーア達近衛騎士と騎士団が戦闘をしているはずです。


「レティア…これからどうなるの?」


 ティア様が怯えた様子でこちらに話しかけてきます。


「大丈夫です。リーア達が外で戦っています馬車は安全ですよ。それに私達が着いていますから安心してください。」


 外では近衛騎士団が襲撃者に、奇襲をされていました。木の撤去作業が終盤に差し掛かった時のことで、撤去作業をしていた近衛騎士団数名が負傷してしまいました。負傷者の救護に人を割く必要があり、近衛騎士団は防戦一方となっていました。


 ティア様にこう言ったもののさっきから感じているもやもやは強くなるばかり。私は何を忘れているのか。外からは戦闘音が聞こえてきます。


 ガン!ガンガン!急に馬車の扉が叩かれました。外での戦闘が終わったら声で知らせることになっている状況での音。襲撃者は馬車までたどり着いてしまったようです。


「セレスティーナ、ティア様をお願いします」

「分かりましたわ、ティア様私の傍に」


 扉への攻撃は激しくなるばかりいずれ木の扉は破られてしまうでしょう。その時はこの短刀で応戦するしかありません。

 そして私はもやもやの正体に気づきました。これはイベントです!ティア様が悪役令嬢になってしまうきっかけとなる事件。


 この事件でティア様はトラウマを抱えて、常に自らが上であることに執着するようになってしまうのです。

 このままではティア様は不幸になってしまう。ユリアとの約束を今ここで果たさなければなりません!


 私は短刀を鞘から抜き構えます。構えは守りを重視し扉に対して垂直ではなくて傾けて、防ぐのでは無く逸らすこと基本とした構えです。時間を稼げれば必ず助けが来ることを信じて、時間を稼ぎます。

 そしてついに、扉が破られました。扉の先には片手剣を持った男がいました。両刃で斬ると言うよりは、叩き斬るものでしょう。おそらく力では叶わないでしょう。ならば先手をとるのみ!

 馬車の中では片手剣を振り回せないので私の方が有利だとは言え、ティア様を危険に晒す訳には行きません。どうにか外で戦わなくては。

 私は片手剣を持っている手に向けて短刀を下から上に、踏み込んで振り抜きます。男は一歩半下がり短刀を避けました。その隙に馬車を降り襲撃者と対峙し、私は直ぐに短刀を構え敵を見据えます。


「目的はなんですか!」

「言うわけないだろ。なに、直ぐに王女様も同じ所に送ってやるよ」


 お喋りですね。ですが、そのおかげで狙いがわかりました。やはりティア様ですか。このまま、時間を稼ぐことが出来れば。


 既に男は攻撃姿勢に入っており剣を振り抜くのではなく前に突き出してきました。短刀で防御しようとしましたが力が強く、攻撃を逸らせたものの腕を浅く斬られました。


「っ!」


 しかし男の姿勢が崩れた隙を狙い剣を持った腕に向け短刀を振り抜きます。短刀は男の腕を捉え切りつけました。


「痛って!クソこのやろ!」


 剣はゴトンと音を立てて地面に落ちます。このまま男を抑え込めばこちらの勝利。しかし敵が武器を失ったことや腕を切られたことで気が緩んでしまった私は、短刀を持った腕を掴まれました。


「良くもやってくれたな女」

「くっ!」


 私は掴まれた痛みで短刀を落としてしまい片手とはいえ力では負けてしまう私は何もすることが出来ません。

 男に転ばされ地面に倒れた私は、痛みに顔を歪めました。

 このままでは死んでしまう、どうすれば。そう思った瞬間、男の背後に見慣れない騎士が現れ男を切りつけました。男は悲鳴を上げその場に倒れふしました。


「お怪我はありませんか!」

 と男の背後に現れた騎士が問いかけてきました。

「私は少し切られただけです。それよりも、ティア様を」

「既に怪我をしているのですか!失礼します!」


 私の事話を聞いた騎士は、私を横抱きにして馬車へと連れていきました。


「そこの侍女の方この女性の手当をお願いします。私は馬車の周囲を確保してきますので!」


 私を座席に寝かせた騎士は、セレスティーナに傷の手当を頼み騎士は馬車の外に出ていきました。その騎士は近くの騎士に指示を出しどこかに行ってしまいました。

 入れ替わるように指示をされた騎士が扉の前で周囲を警戒していました。安全を確認したセレスティーナが切られた腕の手当をしてくれ痛みが少し引きました。手当をする光景をみたティア様が心配そうにこちらを見ています。


「レティア大丈夫なの!」

「大丈夫ですよ。ティア様浅く切られただけですから。」

 私はティア様に恐怖を感じさせないように笑いかけました。

「これで大丈夫ですけど、もしかしたら傷ができてしまうかも知れませんわ」

 セレスティーナが道具を片付けていいました。

「ティア様を守ってついた傷ですから本望ですよ」


 私達が会話をしているうちに外の戦闘も終わりを迎えたようで先程の騎士とリーアがこちらに向かってきました。


「レティア!腕を切られたと聞いたが大丈夫か!」

「セレスティーナに手当をして貰ったから大丈夫です」

「すまない私達が居ながら馬車まで敵を近づかせることになるとは…」

「仕方ありません。奇襲を受けたのですからおそらく木をどけていた騎士達が最初に被害を受けて人数が足らなかったのではないのですか?」

「ああ、その通りだ。だがそれでもだすまない。」

「リーアは仕事をしていたのですから間違ったことはしていませんよ。それよりそちらの騎士の方はルビィクト王国の騎士とお見受け致しますが」

「ああ、彼はルビィクト王国に入ったら案内をしてくれることになっていた…」

「フェルミナ・クロードと申します。ルビィクト王国第一騎士団長をしています。道を木で塞がれていると伝令が来たので援助に来たのですが急ぐべきでした」

「フェルミナ様が援助に来て頂けたのでこうして、ティア様が無事だったのです。ありがとうございます。出来ればすぐにでも移動したいのですがどうにかなりますか?」

「今代わりの馬車を手配するように伝令を砦に向かわせています。」

「分かりました。今後の予定ですがどう致しましょう?」

「馬車が到着し次第砦に向かい砦の方で今日は待機をお願い致します。もし予定通りであれば明日王都までお連れ致します」

「では私達は馬車で待機しています。代わりの馬車が到着したら連絡をお願いします」

「了解しました」


 フェルミナ様との話が終わり私達は馬車に戻りました。どうにかティア様を守りきることが出来ました。まだこの旅は続きます。このまま何事もなくルビィクト王国に着くことを祈るばかりです。

誤字脱字等ありましたらコメントなどお願いします。出来れば感想などを頂けると小説を書く励みになります。

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