猫カフェ【ニャン界前線】奮闘記
猫カフェに行きたい…
吾輩は猫カフェの猫である。
名前は『もち吉』
種族は愛らしいスコティッシュフォールドである。
吾輩が住んでいるのは某都会にある猫の楽園
通称猫カフェ『ニャン界前線』
ニャンの中のニャンが集いしニャン界の最前線に位置するこの猫カフェには様々な猛者猫が集いその猛者を求めて連日多くの人間が訪れる。
タイプ1:カップル
「うわぁ~かわぃぃ~ねぇ~とめ君めっちゃかわいいよぉ~」
「あぁ、うんそうだな。めっちゃかわいいな」
吾輩の目に映るのはヒラヒラふわふわした猫心を逆撫でするような衣を身にまとった女人と、スマホという機械をぽちぽちして心にもない世辞をいう男である。
吾輩を含めた10桀の猫達に対し、女人は何も感じるところがないのか近づいてくる。
尚、このカフェの店主は我等が他の人間に対し、どのような制裁を加えたとしても我関せずというスタイルである。
各々の陣地で体を休める我等を選び、最初に目をつけたのが…
「あ、あの灰色の猫ちゃんぶちゃかわ~」
なんと、目をつけたのは鋭い眼光で俺のおやつは俺のもの、お前のおやつも俺のものだよな?とそのもふもふっとした手足でさも当然の如くかっさらっていくブリテイッシュショートヘアの【将軍】ではにゃいか…っ!
将軍は自分が目をつけられた事を悟ったのか一度にゃぁっと啼き『ほう、俺に目をつけるとは大したヤツよ。そのヒラヒラした衣…ズタズタに引き裂いてやるにゃん』と好戦的な構えである。
徐々に距離が縮まっていく将軍と女人…
将軍はしっぽをゆらゆらと揺らし、臨戦態勢にゃ…
肉っ球を舐めるふりして爪のすべりをよくしている様はしっぽ以外をみれば完全にリラックスしている猫そのもの…
生類よ儂の為に働けの令に恥じぬことのない堂々とした猫カフェの猫っぷりよ…
遂にその時はやってきた。
女人の手が将軍に…
シュバッ!
『?!?!ニ、ニャア~ン』
なんと!!!あのフワフワした外見とは裏腹にあの女人、素早い手つきで将軍を捕らえたと思ったら猫の弱み処をこれでもかとこねくり回し、あの抱えた瞬間あばれんにゃん将軍をいとも簡単に抑え込んだにゃと?!?!
将軍は咄嗟の判断が出来ず、行動を制限され、もがくこともせず女人の腕の中で『苦しゅうにゃいにゃん近う寄れウニャアアアン』っと完全にトロトロになっているではにゃいか?!?!
あ、あれはやばいニャン…
ほかの9匹もそれぞれ将軍の状況を覗き見ていたのか、
『しょ、将軍が?!』
『嘘だろ…?!』
等と猫周波で口々に囁きあっているにゃん…
「ここきもちいいよね~しってるよぉ~ホラホラぁ~」
『ウニャ、ウニャァア~~~~ン』
なんたることだ、かれこれ5年近くこの前線にいるが将軍が腹を見せてされるがままになっている姿など数える程しか見た事がないにゃん。
だが、そのどれも将軍と幾度となく打ち合い、騙し騙され絆されて、直々に『ふむ。其方のこれまでの働き評ずるに値するにゃん。特別に儂の腹を撫でても構わないにゃん』とふんぞり返ってんのか寝転がってんのかもうどっちかわからないようなふてぶてしい態度のゴロニャンであった…今回は初のお目通りにも関わらず不意打ちの如く将軍の首がゴロゴロと鳴っちまってるニャン…
「ねぇめっちゃなついてくれるぅ~かわぃぃ」
「ん~おかしいなぁ…ここの猫なつきにくいって有名らしいんだけど…ってお前そういえば昔から得意だったな…こういうの」
「ん~あ~そうかも~なんか動物めっちゃなついてくるかも~」
て、手練れ…っ!!!
あの雰囲気に騙されたがあの女人自身の能力に気付かづに本能で将軍のツボを抑え込んだというのかにゃん?!?!
無自覚の奴程恐ろしい奴はいないというが最たる例にゃん…
と、とりあず将軍の失脚は痛いが…ここは将軍のような悲劇を繰り返さない様周りの英傑猫に呼びかけ…
「そういや、俺とっておきのやつ持ってきたんだよな~ほら、これ」
「あ~とめ君が作ってるおもちゃね~子供には人気だけど猫相手にうけるかなぁ~」
にゃ!あ、あの男先程までスマホぽちぽちしてたのにいつのまにかなんかおもちゃだしてるではないか…
しかも、あ、あの形は…ま、マズイ!
吾輩はバッっとキャットタワー頂上にいる英傑に目を向けた。
そこには前傾姿勢でおっしりをふりふりとふり瞳孔が完全に開いて今にも飛び掛かりそうな猫が…
そしてその様子を見てスッっと立ち上がる猫数匹の気配…
あぁ…もうダメにゃんっ
『あれこそは光をたたえしせいけん!エクスニャリバー!!!今こそ我が手に!円卓の騎士よ!我につづくのニャァアアアン!』
『『『ニャアアアアアン』』』
「お、なんかすごいくいつきいいな~」
「あ~とめ君ずるぅ~い!めっちゃちゃん囲まれてるぅ~」
魅惑的な光をゆらゆらとゆらしながらしなるその繰り出されるしなやかなおもちゃ捌き…
それを捕らえようと奮戦するラグドールのアーニャー王と愉快な仲間たち…
あぁ、見てられない…
なんと不甲斐ないことか…
諦めたような溜息と共に数匹の猫がヤレヤレ、と顔を伏せ眠る状態に移る。
勿論いつ男女の興味が我等に移るかわからないので警戒は怠らない…
吾輩もしっぽをたしんたしんとたたきながら憤慨の色を隠さずに眠る体制に入る。
そもそもニャン界前線の猫たるものいかなる状態であってもあの様に人間にだらけた姿を見せる等たるんどるにゃ…
何年この世界にいると思ってるのにゃ…
まったくだらしがな
「あ、そうだ、すいません~エサくださーい」
10匹の猫たちは一斉に駆け出した。
もち吉は適当につけた名前です…