プロローグ、そして。
人は現実から目を背ける生き物である。
例えどんなことがあったとしても、正面から受け止め、考えることができる者は人ではないだろう。
××年×月×日×時×分×秒。
ある時どこからともなく現れた神によって世界は神の所有物になってしまった。
神は、ここまで文明が発展している世界、つまり地球をたいそう気に入り、遊び道具として扱うことにした。そこで思い付いたのが、争いだ。国と国、地域と地域、人と人。人間の知能、技術、感情などの全てを駆使して行うこれは、神でも興奮がおさまらなかったという。
そこで『洗脳』の力を地球上の生きとし生ける者たちに施し、争いを起こさせることにした。
『洗脳』は文句なく、失敗することなく成功し、1人1匹残らずかかった。
国々は武器や核兵器、細菌兵器の開発を急いで行うようになり、学校ではこの扱い方や物、動物、更には人の壊し方まで実に多様なことを覚えていった。……そう、分かったと思うが、神のしたくだらない所業のせいで、戦争が起きこの世が無くなりかけているというわけだ。
ここから、『洗脳』された人間は考える。少なくなった人の増殖方法を。
種を増やすために生殖行為のみをする人材を用意し、それに子供を孕ませ、その子供までも『洗脳』によって地獄に投下させる。これで神の望んだ遊び道具は機能し続ける。
さぁ、ここで胸糞悪いバカな神は自分の失敗にやっと気付いた。こんなことをしたいという願いしか無かったからか、『洗脳』するとき生物に『感情』を残しておくのを忘れたのだ。
きっとこんなことを思っていたのだろう。
「あれ、どうしてこの世界の生きている物は恋愛というのをしないのか。」と。
この時すでに『洗脳』を果たしてから500年余りが過ぎていた。神はきっと気分屋なのだと思う。自分が失敗してしまったという小さなミスで、この長い争いに愛想がつきたのだ。
同じゲームをしていれば飽きてくる。当然の心理だと言えよう。そして神は、何をするでもなく、ここを放置したまま帰ってくることはなかった。元に戻すのでもなく、何もしなかった。
人は無惨にも殺し合い、壊し合い、奪い合い、そして、産まれてきた。この地獄のサイクルを今の今まで続けている。ざっと3000年ほど。
ここで1つの綻びが生じる。長い年月が経ち、錆びてきた鉄塔のように。本当に小さなことだった。機械的に生きてきた、生きながらに死んでいた人間の中にたった1人、『感情』を宿し産まれてくる者がいた。
その人間の名は祭軌倭。
この者が、これから世界を変え、最後に神を殺す者の名だ。
まぁ、つまり俺だ。