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「さあ!ちとせん!今日も練習頑張ろう!」


「は、はい・・お願いします」


「ちょっと元気ないよ?体調悪い?」


「い、いえ先輩方に練習を付き合ってもらってるのに全然長続きしないし申し訳なくて・・・」


「気にしない!大丈夫だよ!」


「ヨシのあの明るさには助けられるわ」


「ほんとね」


「で、今日はどんな特訓しようケイちゃん!」


「考えてきてないのね」


「む~・・・1日じゃ思いつかないよぉ」


「今日はアイテムをいくつか持ってきたからそれを使いましょう」


「お!秘〇道具だね!ケイえもん!」


「誰が青い狸だ!」


「それより何を用意したの?」


「これよ」


「これって耳栓?それと鼻栓かな」


「そうよ、水の侵入が気になるならこれで大丈夫なはずでしょ」


「そっか!これなら苦しくならない!」


「すごいよケイちゃん!じゃあさっそく、ちとせん!挑戦だ!」


「は、はい・・・お願いします」





「さて・・・これで潜れるようになるかしら?」


「じゃあちょっと離れようか」


「あ、そうだったね」


「じゃあいきます!」


千歳が耳栓と鼻栓をつけて潜る。前回と違ってすぐには出てこない。


「やった!成功だ!ザバッってあれ?」


「ガハァゴホゴホ」


「ど、どうしたの!?」


「あ、ヨシだめ触ったら!」


「え?」


ヨシが千歳に指先がコツンと触れる。流れるように千歳の体が前のめりに滑り倒れ込む。

もともと咳き込んでいた千歳はさらに大量に水を飲んでしまった。


「ガバァゴボォ」


ケイとアコもそれをみた瞬間プールへと飛び込む。


「待って今引き上げキャッ!」


千歳は無我夢中で上に上がろうと試みる。だが千歳の体が上下が逆さまになっている。だがパニックになっている千歳にはそれすらわからない。


「あ、暴れないで!お、落ち着いて!」


だがアコの声も暴れてる水音と水の中で籠った音しか伝わらない千歳には聞こえることはない。


3人がかりで千歳を上に持ち上げようとするが暴れていて足が顔に当たり逆に倒されてしまう3人。


「ど、どうして2回おぼれた時も簡単に引き上げられたのに」


今回はケースに至っては千歳は意識を失っていなかった。ただ死にたくないという感情が千歳を火事場のばか力のごとく動かしている。


「3人同時に組み付いてあげるわよ!」


ヨシ、アコ、ケイの3人はせーので千歳に掴みかかる。

もちろん身動きが取れなくなる恐怖が千歳をあり得ないほどの力で3人を水中に引きずり込む。


「嘘ゴボォ」

「引きずり込まれ…」

「…マズ」


3人が沈みかけた瞬間力の抵抗がなくなる。


「え?」

「いいから今のうち!」


千歳は完全に気を失っていた。








「あれ・・・ここ?」


「保健室ですよ、千歳君」


「えっと、」


「保険医の柏木です。覚えてるかな君溺れて気を失ったのよ」


「記憶にないです・・・これから練習ってとこまで覚えてるんですが」


「そう・・・とりあえず大丈夫だと思うけど今日は私が車で送っていくから」


「あ、その?」


「気にしないで、途中で倒れらても事だしね」


「あの先輩方は?」


「あの子たちなら大丈夫よ。今顧問とお話し中だと思うから君が無事だったことは伝えておくからね」


「わ、わかりました。ありがとうございます」



―――


「お前たち・・・今日はシャレにならなかったのはわかるな」


「「「はい・・・」」」


「一歩間違えれば今日の出来事はニュースの一面だ」


「・・・」


「顧問として俺も見てなかったのは悪かった。そこは認めるが、女子水泳部員だから男である俺がいないほうが集中できると思って配慮はしていたつもりだったんだ」


「・・・」


「それに早川」


「はい…」


「俺はお前をかってたんだ。お前は才能は正直ずば抜けてる。個人水泳としては今のままでも県内上位かほぼトップクラスだ」


「そんなこと・・・ないです・・・」


「ふぅん、結構堪えたみたいだがら説教は短くしてやる、だが今後千歳の練習をするときは俺も監督として駐屯するからな」


「はい・・・お願いします」


「切り替えろ。さっき柏木先生からも千歳が起きたって連絡がきた」


「ちとせん無事なの!」


「ああ、どこも異常はないだろうが今日は休ませるから車で送るそうだ」


「よ、よかった・・・グス」


「ふぅ・・・お前ら諦める気にはならんか?」


「え?」


「千歳はどうせパニックでも起こして溺れたんだろ?」


「そ、そうです」


「お前らが一応記録として取ってるビデオを見せてもらった」


「あ・・・」


千歳の成長や悪いところを撮影するためビデオカメラを設置して随時練習記録をとっていたのだ。


「あれは無理だぞ。お前ら3人には手が負えない」


「そ、そんな・・でもちょっとずつ練習すれば!」


「水所恐怖症を舐めるな。お前らが今日それを感じたんじゃないのか?」


「先生、そんなに治らないものなんですか?ちょっとずつ慣れていけば…」


「前にビルの屋上の話したな?」


「え、ええ屋上に立ってるのと同じだって」


「慣れるのか?お前ら綱渡り状態のビルの屋上に?」


「で、でも!プールはビルの屋上と違って安全で!」


「だが今日千歳は死にかけた。安全なプールで」


「それは・・・」


「確かにビルの屋上だったら同じことが起きたら即死で助からない。プールだから助かった。だからなんだ?死にそうな目にあった場所には違いないだろう」


「「「・・・」」」


「あいつにとってプールはビルの屋上、それも1本橋状態だ」


「お前らが思ってるほど理解できる感情じゃないぞ?」


私たちのプール指導は暗雲が立ち込めていた。

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