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「アコちゃん、ケイちゃんおはー」


「おはようございます」


「おはようー」


「昨日はなんか大変だったね」


「ええ、人に教えるのがここまで苦労するとは」


「いやまずそのレベルじゃなかった気がするんだけど?」


「いえ、まずこちらの常識で測るのが間違いでした」


「なにか解決策があるの?」


「ええ、知り合いのスイミングスクールの先生に電話でスイミングスクールの初歩を聞きました」


「なにそれ!すごい!」


「おーなら今日は進めそうだね!」


「ええ、やってみせます」





「よろしくお願いします」


「よろしくー」


「では昨日はいきなりプールで泳ぐ真似をするという技術のいることをしてしまったのでいらないことからしましょう」


「は、はい」


「プールの中でしゃがんで見て苦しくなったらすぐ立つ、まずはそれをしてみましょう」


「おおぉ、それなら安全だし昨日の心配もないわね」


「・・・」


「どうしたの?」


「いやしゃがんだらうまく立ち上がれるかどうか・・・」


「そこ!?」


「いやしゃがんで立つだけだよ?」


「水圧に勝てなくて立てない可能性も・・・」


「私たちより筋力あるでしょ?ならできるよ」


「そ・・・そうかなら大丈夫かな・・・」


「そうそう、その調子」


「苦しかったら立てばいいからね」


「はい」


「ではやってみようか」






「はい」


「だからなんで離れるのさ!」


「いや・・・何かあったら・・・」


「あったら間に合わない遠さだよ!?」


「ま・・・まあいいわ。この訓練なら危険もないでしょうし・・・」


「では初めてみましょうよ」


「よぉし!はじめぇ!」


ドボンッ  ザバァ!


「はぁはぁはぁ」


「はっや!1秒なかったよいま!?」


「苦しくなったらよ千歳君?」


「はぁ・・・い・・・や・・・もう・・くる・・しくて・・・はぁ・・はぁ」


「3秒は息止められるでしょう!?」


「いやもっと普通は止められるからな?」


「だって耳はゴォ―って痛いし鼻はぶわーって痛いし胸は苦しいし・・・もう限界です・・・」


「・・・んと?」


「・・・きょ・・・う、ゴホゴホ帰ります・・・耳に水が入ってグワングワンしますし・・・」


フラフラと千歳は更衣室へと入って行った。


「「「・・・」」」


ガラッ


「よう!青春してるか?水泳3馬鹿ども」


「か、上代先生!」


「あれ?例の男子いないな?今日は休みか?」


「ええっと今日はちょっと体調が悪くて帰りましたけど・・・」


「そっかそっかニヤニヤ」


「なんですか先生そのいやらしい顔は!セクハラです!」


「おいおい・・・まあ苦労してるようだなと思ってよ」


「苦労ってまだ2日目ですよ?」


「じゃあ順調か?」


「・・・・・・」


「だと思ったよ」


「上代先生は何か知ってるんですか?千歳君のこと?」


「なーんもしらんよ。まだ新学期3日目だぜ?」


「じゃあどうして苦労してるかなんて・・・」


「予想通りじゃなきゃこれを課題になんてしねーよ」


「先生は苦労するってわかってたってことですか?」


「当然だろ、水泳部の顧問だぞ。甘い裁定は下すわけないだろ?」


「なんで苦労するなんて・・・」


「お前ら2日目もやってまだ気づいてないのか?」


「え?」


「どうせあいつがプールに入る時お前ら遠ざけられたんじゃねーのか?」


「ど、どうしてそれを!」


「やっぱりな・・・」


「先生教えてよーちとせんはなんで私たちから離れたの?」


「簡単なことだ。あいつは水所恐怖症だよ」


「え・・・?」


「嘘だ先生ーだって今日もプールに入ってるし」


「重度じゃないだよ。だが間違いない」


「水所恐怖症に症状の度合いが?」


「ああ、人それぞれだがきちんと存在してるんだ」


「普通なら水のたまってる場所に近づけないっていう重度な例ならよく聞くと思うがあいつは違う」


「水には入れるが潜れない、神経質、過敏になる、足のつかない場所には近づかない、極力陸が手の届く範囲にいる、そして人には近づかないビデオで感じたのはこんなとこだな」


「千歳君が水所恐怖症・・・」


「なんで人に近づかないの?」


「イレギュラー因子の排除、防衛本能ってやつだ」


「アコちゃん生物得意?」


「得意じゃないよ・・・」


「簡単にいうと何かあるかもしれないから極力目に見えてるもの以外を信じない。不確定要素のある動きなものを排除するってことだ」


「私たちが信用されてないってことですか?」


「それとは違う、あいつなりの体の動きには計算があって動いてる所にお前らという動きが加わると計算できなくなってバランスを崩すから遠ざけてるんだ」


「えぇ・・・そんなことで?」


「あいつにとっては命の問題だ」


「命・・・ですか?」


「あいつにとってプールの中は無意識的なビルの屋上のふちに立ってるようなもんだ。プールの中にいるだけで精神力を削られるし体力は一気に持っていかれる」


「ビルのふちを歩いてるのに他人が近づいてきたら誰も良い気はしないだろ?それと同じなんだ」


「こ、克服はできないものなんですか?」


「無理とは言わないだろうが・・・前例はほぼ0だろうな。無意識的水所恐怖症なんて誰も克服しようと思わねえ。普通の常人は近づかないから治そうともしないからな」


「そ、そんなぁ・・・」


「1年後が楽しみだぜお前らの地獄の補修と課題の山を与えるのがよ」


「ひっ・・・」


「あと・・・362日間しかないんだからせいぜい足掻けよ」



上代先生はそういうと出て行ってしまった。



「どうしよアコちゃん?」


「・・・やるしかないのよね」


「頑張りましょう3人で」

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