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次の日
「おー水着ちゃんと来てるね!」
「へぇ・・・」
「なんだか新鮮ねぇ」
「あんまり見ないでくださいよ」
俺はプールに水着姿で立っていた。
「さて入団テストをするわけだけど・・・何を見ればいいのかな?」
「タイムじゃないかな?まあどんなに遅くてもこの天才の私にかかればあっという間に実力者にしちゃうけどね」
「あんたは本当に出来そうよね。実際私もかなり早くなれたし」
「でしょでしょ?」
「じゃあ50mのタイムでいいわね」
「私が指導すれば30秒台なるのもすぐよ」
「いや、さすがにそれは・・・」
「まあ平均値1分、遅い子でも2分くらいかしらね」
俺は飛び込み台の上にたつ。目標は1分くらいらしい。
まあ・・・
「ではスタート!」
ピッっという笛の音がなる。
俺はまず前かがみになる
もちろん膝は全部曲げる
しゃがむというポーズ
これが俺の最初の行動だ。
そして振り返る。
プールに背を向ける行動だ。
そして飛び込み台からゆっくり足を延ばす。
あとは懸垂の要領でゆっくりとプールの中へ・・あっ
飛び込み台の表面は思った以上に濡れ手の踏ん張りが効かない。
プールの中に落ちる。
「えっと・・・?」
「んーこれは?」
「上がってこないね?」
「「「・・・・・・」」」
「いそげーーーーー!!!!」
柔らかい感触が後頭部を包む
そして塩水消毒の匂いに混じって良い匂いが感じられる
目を開けると紺色の山が二つ目の前に広がる。
「ふ、二人とも目を開けたよ!!」
「ほんと!?」
「よ、よかった・・・初日から死人が出るところだったわ・・・」
「えっと・・・」
体を起こすと心配そうな3人がこちらを見ている。
何があったんだっけっか・・・
「あなた溺れたのよ?覚えてない?」
そうだ・・・。思った以上に飛び込み台が高くて滑ってそのままプール中に入ってしまったのか。
「す、すみません。ちょっとドジりました」
「び、ビックリしたんだから・・・その・・・緊急時だったし・・・」
「まあ緊急時だし・・・ね」
「そだね・・・うん。ノーカウントだよね」
「?」
「と、とにかく!素人にいきなり飛び込み台から行かせようとしたのは間違いだったわ」
「そうね、私も最初はプールの中からだったし」
「えー?私は最初から飛び込んでたよ?」
「魚は黙ってなさい!」
「ひどい!?」
「立てる?」
「何とか・・・問題もないみたいです」
「にゅ、入団テストどうしようか?やれそう?」
「えっと・・・体調的には問題ないみたいですけど」
「そ、そっか。じゃあさっきのこともあるし軽く10mくらいで試してみようか」
「はい、わかりました」
プール中に立つ。
プールの中に入るとプールは大きく見える。
誰も入ってない為水面はとても穏やかだ。
10mか線の色がついているのでわかりやすい。
まず俺は右足を前出すこの時バランスが失われたら終わりだ。
そして水面が動き出す。
この時あわてたらいけない。水面が落ち着くのを待つ。
次に左足だ。こちらは右足が前にある以上ゆっくりとついて行かせるだけでいい。
余計な力はいらない。そうゆっくりとだ。
まずは1歩進んだ。よし次だ。
これを繰り返せば10mなんてすぐに・・・。
「もう始まってるよー?」
そう始まっている俺とプールの戦いはもう始まっているのだ。
「あれ・・・もしかして・・・」
「いや、もしかしなくてもわかるでしょこれ・・・」
「なにが?」
そしてやりきった!俺は10mを歩き切った!
奇跡といえよう。
だが落ち着け。ここは10mのど真ん中
帰るまでが遠足だ。
岸にまず戻らなくては・・・。
そのとき、早川先輩がプールに飛び込んだ。
どうやらこちらに泳いでくるようだ。
「もしかして君ってカナヅチ?」
まずい・・・早川先輩が泳いだことにより水面が動いてしまう。
体が流される足が滑る早く岸に戻らないと
焦ってバランスの悪い1歩を前に出す
「ねぇ?聞いてる?」
早川先輩が肩をつつく。
ギリギリを保っていたバランスが完全に崩れた。
あとはもう崩壊するだけだ。
俺の体はゆっくりと後ろに倒れる。
そのあとからの記憶はぷっつりと途切れた。