1
顔立ちは可愛いより美人。
黒髪の肩より少し長いロングヘア。
学園のアイドルだと言われても違和感はないだろう。
そんな人が俺に話しかけてるのか?
「えっと?俺ですか?」
制服のリボンが緑色。つまり2年だ。ちなみに赤は1年。青は3年だ。
「そう!君!この私が見抜いたんだから間違いないよ!」
なんの話だ一体。
「こらヨシ、1年が困ってるでしょ」
さきほど声を上げた人より後方から歩いてくる女子生徒。
この人も2年だ。
「ごめんなさい。いきなり」
「えー、だってだってー」
謝ってきたほうの女子生徒はショートヘアとメガネが似合うこれまた美人な女子だ。
この二人が並ぶとちょっとした絵になる。
「部活勧誘なの。この子ちょっと強引で」
「いえ、大丈夫です。でも俺水泳部は・・・」
「未経験?大丈夫!私天才だから!3日でオリンピックへ連れて行ってあげよう」
「この子は気にしないでいいよ、でもどうかな?去年は部員少なくて探してるんだけど興味ない?」
ふと思う。
この二人がいるような部活なら部員が少ないなんてことありえるのだろうか?
美人な先輩が二人もいて?
「いやでも・・・水泳は・・・」
「け、見学でもいいからさ!ほらアコちゃんの水着みたくない!?」
「ちょ!ちょっと恥ずかしいこと言わないで!」
いや、それはちょっと見たいけど・・・
「というか男子水泳と女子水泳で別れてないんですか?」
「分かれてないわね。色々とあるんだけど今は一緒」
「とにかくほらほら一度見学に来なよユー」
わかってきた残念美人だこの自称天才スイマー
「まずはプールへレッツゴー」
「え?」
手を握られる。女子に手を握られるなんて初めてだ。
この時俺が振りほどけばまだ間に合ったんだろうなと今にしてみれば思うことだ。
「じゃーん!ここが我が学校のプールだ!」
連れてこかれたプールはだいたい50m四方くらいの広さのプールだ。
深さも高校用で肩くらいまでつかるプールと言える。
「あらおかえりって新入部員さん?」
「ケイさーん!、部員だよー!」
「こら、まだ入るって言ってないでしょこの子」
プールサイドで暖をとってる女子生徒。
水着を着ていているので学年はわからない。
だがわかる。かなりのスタイルだ。
「そういえば君の名前は?」
「ち、千歳です」
「千歳君かー。私は早川吉見」
「私は、紺野亜子、奥にいるのが同じ2年の白川景子」
奥にいる白川さんがこちらに近づいてきた。
「この子は見学なの?」
「入れちゃおうよ!」
「ダメに決まってるでしょ本人に決めてもらわないと」
他の1年や2年は?女子生徒3人だけなのか?
「えっと他の部員さんは今日は?」
「「「・・・・・・」」」
何かまずいこと聞いたか?
「いないの・・・」
「え?」
「部員は私たち3人だけ!」
そ、そんな馬鹿な。
「本当なのよ。だからちょっと生徒会や職員側からもこれ以上この人数だと廃部って言われていてね」
「だから君を誘ったのさ!」
「というか君この高校のことあんまり知らない?」
白川さんが怪訝そうな顔でこちらを窺っているが
この高校のこと?家が近いから受けただけで高校の風土は全然知らないが
「家が近かったんで受けただけなので・・・特に調べたりは」
「この学校は運動系の部活に力を入れていてね。何度も全国へ行ってる学校なの」
「そうなんですが、ニュースとか見ないんであんまり知らないですけど」
「でね、一応全生徒全員が何らかの部活に入る必要があるの」
「げ!?そうなんですか!」
「ホームルームで言われなかった?」
「覚えてない・・です・うわのそらでしたから」
「そして大会である程度成績を残さないと長期の休みの時に補修授業と追加の課題提出が必要になるのよ」
「それって・・・」
「実力がない人は休みがなくなるってわけ」
「そして私たちは廃部になったら強制的に追加課題が出ちゃうようになるから」
「そこーーーーで!君のような優秀な部員を探していたの!さあこの入部届けに判を!」
そういうことか・・・ある程度の実力がないと部活に入っても活躍できず結局補修になるのか。
水泳はいきなり始めてもすぐ活躍できるわけじゃないから人気がないのか
「なら文科系に・・・」
「文科系の部活は敷居高いよ?やりやすい分実力ある人揃うし得意なのある?」
あるわけない。こちとら平凡な高校生だ。趣味はゲーム、漫画。それもやる見る専門だ。
「だったらもっと始めやすい部活で・・・」
「どれも同じだよ。団体競技はレギュラー入りできないと活躍できないし」
「こ、個人競技のあるスポーツにしますよ!色々あるでしょう?」
「ねえ・・・?ダメ?」
「あ・・・」
目を合わしちゃ駄目だったんだ・・・この時そらしてさえ入れば・・・。
「にゅ・・・・」
「にゅ?」
「入団テストをしてください!それで決めましょう」