九話
その日の夕方。田舎から戻ってきた如翔と楓は、その足で神社へと来ていた。
二人から事情を聞いた神様ちゃんは溜め息を吐いた。自身が期待していた展開と違っていたからだ。
「楓ちゃん。お祖父ちゃんの死、それが本当に君の悔いです?」
「私にとっての悔いといったらそうだねえ。お祖父ちゃんが亡くなったのは凄く辛かったから」
「お前さん。本当に心当たりのある悔いはないです?」
「祖父ちゃんを救ってからも考えてたけど、僕にはやっぱり見当はないな」
「……ふぅ……しょうがないです。自分で気が付くのが一番だったですが」
神様ちゃんは、楓の手を握る。
握られた楓は首を傾げるが、次の瞬間、自分の頭に直接聞こえてきた声に驚いた。
《楓ちゃん。聞こえるですか?》
《神様ちゃん!?》
《神の力を使ってるです。テレパシーです》
《神様ちゃん……本当に神様だったんだねえ》
《嘘はつきません。楓ちゃん、本当に他に心当たりはないですか?》
《本当だよ。どうしたものかねえ?》
《私は神様です。今回の現象の原因に実は、とっくに気付いているです》
《本当!》
《嘘はつきません。そして、これから言うことも本当です》
《何? 神様ちゃん》
《楓ちゃんにとっては五年前の今日、楓ちゃんのお祖父ちゃんは事故で亡くなり、田舎にひとりぼっちになってしまったお祖母ちゃんの為に田舎に引っ越しをすることになったですね?》
《そうだよ》
《お祖父ちゃんが亡くなったことはとても悲しくて、楓ちゃんにとっての悔いなのも間違いないです。でも実は、もうひとつあるです、悔いが》
《それは?》
《それは、如翔と離ればなれになったことです》
《え?》
《生まれてからずっと一緒だった如翔との別れ。家族同然の彼との別れも辛かった筈です。気心知れた親友との別れですから当然です。それが、楓ちゃんの悔いです》
《確かに如と離ればなれになるのは寂しかったけど、それからも連絡は取り合っていたから、悔いというまではいかないと思うけど?》
《そです。その現状に満足してしまったです。電話で話せ、画面越しに会える現状に》
《うん。だから……》
《でも嬉しかったでしょう? 直接会えて。一緒に行動出来たことが嬉しかった筈です》
《確かに嬉しかったねえ。とても懐かしく思えたよ。不思議だよ、いつも連絡し合っているのに》
《それは何故だか分かるです?》
《そりゃあ友達だから。幼馴染みだからだねえ》
《それもあるです。でも、それだけじゃないです。でしょう? 楓ちゃん》
《それだけじゃない?》
《近すぎるあまり気付かなかったこと。五年間、離ればなれになって気付いたこと。どですか?》
《気付いたこと……!?》
《楓ちゃんは嘘をついてたです、自分自身に。本当に辛くなってしまうから》
《私は……》
《自分に正直になってです。その答えが、元の時間に帰る方法へと繋がってるです》
《私、如のこと……如が好きなんだ。如に惚れてる……恋してる》
《そです。じゃあ分かるですね? 帰るにはどうするべきか》
《如に私の気持ちを伝えること》
《合格です、楓ちゃん》
神様ちゃんは、楓とのテレパシーを解いた。




