八話
前日の残りだという鍋を平らげる如翔。
楓の祖父母と如翔は、楓の家に祖父母が来た時に知り合っている。そもそも如翔と楓の両親が、学生時代からの友人関係でもある。如翔と楓が幼馴染み同士というのは自然な形なのだろう。
「お祖父ちゃん。元気だった?」
「お陰さんでね。楓ちゃんも元気そうでなにより。お母さんから連絡は受けている。楓ちゃんから来てくれるなんてうれしいよ」
「どうしても会いたくなって。迷惑だった?」
「とんでもない。すごく嬉しいよ」
「孫が遥々来たってんだ。煙たがるわけないだろ」
「来たといえば、楓ちゃんはともかく、如翔くんまで来てくれるなんて」
「ご馳走さまでした。お祖母ちゃんの料理に外れはないな」
「そいつはよかった。私の料理なんざ、最近はお祖父さんも褒めちゃくれない」
「祖母さん!?」
「仲が良いこと。結構、結構」
如翔は満足したのか横になる。ウトウトくらいで済まそうと思っていたが、如翔が次に目を覚ましたのは夜だった。
※ ※ ※
「うー……?」
「ようやく起きたの? 随分とお疲れみたいだったけれど」
「こういうのが田舎なのか? 妙に落ち着いてよ」
「如の祖父母は」
「とっくのとうに召してる。だから余計なんだけど」
「ごめん」
「気にすんな。それよりも明日だ。明日、祖父ちゃんを救い出す」
「そうだね、ありがとう、如。手伝ってくれて」
「元の時代に帰る為でもあるからな」
「だね」
※ ※ ※
「あれ? おかしいぞ?」
「うん。おかしいねえ」
翌朝、楓のお祖父ちゃんの日課の散歩に同行した二人。お祖父ちゃんの死因となった事故を防いでから三十分は経とうとしていた。
「なあ、本当に躓き事故だったんだよな?」
「それは間違いないねえ。事故現場の段差はとっくに過ぎているのに」
「アテが外れたのか?」
「……私がこの時代で悔いていることといえば、お祖父ちゃんの死だけだ。それを防げたのなら……」
「僕に心当たりはやっぱりない。詰んだかな」
「どうした二人とも。疲れたのか?」
「何でもないよ、お祖父ちゃん。行こ!」
「そうだの!」
(今は、いいや。いいよな?)
手を繋ぐ祖父と孫。笑顔を交わして歩いていく。
その後ろ姿を眺めながら、ゆっくりと如翔も続いたのだった。




