七話
騒がしい都会から、静かな田舎へ。
心を躍らせる都会から、心を和ませる田舎へ。
周りに在るのはビルではなく自然。豊かな緑。川や滝からはマイナスイオンを感じられる。
「五年前も変わらないねえ、ここは」
「何にもないな。木と水だけだ」
「絵に描いたような田舎だよ。お陰で空気は美味しいけどねえ」
「それは言える。排気ガスなんかより絶対に!」
「如も思ってたんだあ? 意外だねえ」
「吐き出すんなら、排気ガスよりマイナスイオンで頼むわ」
「ま、私は自然が生み出す空気が一番だけどねえ」
※ ※ ※
「まだ?」
「まだ歩いて一時間だよ。あと三十分は歩くよ」
「電車やらバスやら乗り継いで疲れてるのに……。歩くのシンドイ」
「普段、怠けているツケだねえ。部活くらい入ればいいのに」
「入りたい部活がなかったんだ」
「はいはい。耳タコ程の言い訳だね」
「うるさいな。本当なんだ」
※ ※ ※
「着いたよ。祖父母の家」
「平屋なんだな」
「二人で住むなら充分だし、移動も楽だし。私達が一緒に住んでも充分だしねえ」
コンコンとノックする楓。
二人を出迎えたのは、楓のお祖父ちゃんだった。
「連絡は受けているよ。朝からの出発で疲れたろ? さあ、上がりなさい」
「「お邪魔します!」」
疲れた様子で言う如翔に対し、楓は声を震わせていた。もう会えないと思っていたお祖父ちゃんに会えて、嬉しさを抑えきれないでいた。
ハンカチを差し出す如翔。『お腹が空いた』と言ってお祖父ちゃんの意識を自分に向けさせる。
「如のばか。……泣かせるねえ」
玄関に腰を下ろした楓は、如翔のハンカチで涙を拭いた。『ありがとう』と小さく呟いて。




