二話
「五年前ということは、僕達が小五の頃か。五年前は僕達、ランドセル背負ってたんだな」
「そうだねえ。五年前だってのに、妙に懐かしい」
「桜の花びらが落ちてるな。散ったのか」
「満開の頃に戻れたらよかったねえ」
「えぇー? 僕は、そうは思わないけどな。今も混乱していて参ってるし」
「考えても仕方ないじゃん。私も如も、原因が解らないんだから」
※ ※ ※
歩くこと二十分程。
綺麗に掃除された階段を上った先に、祠と賽銭箱があった。目的の神社に着いたのだ。
「あ……財布ない」
「如の忘れ癖は相変わらずのようだねえ。楓ちゃんの小銭を借してあげようではないか」
「借りたお金でもいいのかな?」
「盗んだお金よりはいいんじゃない?」
「それはあんまりじゃないか?」
二人は賽銭箱に小銭を入れると、鈴を鳴らして両手を合わせた。
「……こんなんでいいのかな? ……」
「……分からない。神様次第じゃない? ……」
風に乗って、桜が舞い落ちる。一枚の花びらが、楓の頭に落ちてきた。それに気付いた如翔は、サッとそれを取ってあげた。
「ありがとう、如。このまま歩いてたら恥ずかしかったねえ」
「桜ならいいんじゃない? 鳥の糞なら最悪だ」
「それもそうだねえ」
用を済ました二人は、神社をあとにしようと歩いていく。すると、一人の少女が道を阻んだ。
「待つです」
「「誰?」」
「神様です」
「「失礼します」」
「待つですー!」
自分を完全スルーする二人を呼び止める少女。
呼び止められ止まる二人だが、完全に不審者を見る目をしていた。
「宗教の勧誘なら断ってます。僕、神様とか信じてないんで」
「神社に来といて!?」
「信じてないです。ほら、ノリと勢いみたいなもんで」
「信じてないのに神頼みとは!」
ムキーッと睨む少女など構いなしに、二人は背を向けて歩いていく。
少女は地団駄を踏みながら泣きわめく。その変わりように踵を返すと、仕方なく二人は戻った。
「何の用なわけ? 引き留める程の用件なのか?」
「お前さん達に関係ある筈です」
「何なの? 神様ちゃん」
「ちゃん!? 我はそんな子供ではっ!」
「早く用件を言ってくれ」
ジタバタする少女に促すと、咳払いをした少女は語り始めた。話を聞いた二人は困惑する。
「未練? 後悔? 僕達にそれがあると」
「そです。この時代に何らかの悔いがある筈です。その悔いが強ければ強い程、お前さん達に起きたような現象が発生するです」
「……なあ、その定まらない喋り方、どうにかならないのか? 威厳がない」
「そうだよねえ。見た目も可愛いから、何だか説得力に欠けるよ」
「お前さん達、我を馬鹿にしてるか!」
またもジタバタする少女。目頭に涙を溜めながら喚いている。おまけに鼻水も垂らしていたので、楓がハンカチをニコニコと差し出した。
「~~っ! ありがとです。スッキリしました」
「それはいいよ。それよりも神様ちゃん。本当に神様なら、ちょちょいのちょいでなんとか出来ないの?」
「神様は高貴な存在です。それ故、人間界で力を使うことは禁じられてるです」
「使えない神様だ」
「誰が使えないだー! 罰当たり!」
「言ったろう? 神様を信じちゃないって」
「ひ、酷いです~! 楓ちゃん~!」
涙を流しながら楓に抱き付く少女。
少女をあやすように頭を撫でる楓。
神様と人間というよりも、妹と姉のほうがしっくりくる光景だった。
「如、お腹空いたねえ。何か食べに行かない?」
「それは構わないが」
「決まりだねえ! 神様ちゃん、何が食べたい?」
「お子さまランチ!」
「即答かよ。しかも、お子さまランチ。絶対に子供じゃんか」
如翔は只、呆れることしか出来なかった。




