最終話
少女は目を開ける。カーテン越しの光で起き上がる。眠い目を擦りつつ、ゆっくりと歩を進める。
「おはようです~」
「「おはよう」」
ニコニコと少女を出迎える男女。
その笑みで、少女は眠気を覚ました。
「パパ! ママ!」
「おっ!? 朝から元気じゃないか」
「元気なのが一番だよねえ」
顔を洗った少女は、テーブルに並べられた朝食を嬉しそうに食べ始める。少女にとって至福の時間だ。
少女の幸せそうな表情を見ながら、少女の両親も朝食を摂る。両親にとってもまた、至福の時間だ。
「ママのお味噌汁は美味しいです!」
「褒めても何も出ないぞお? でも今日の夕飯はオムライスにしちゃおうかねえ」
「やったです!」
「そうと決まれば、僕も早く帰らないとだな」
「そんなに急がなくても大丈夫だよ」
「出来立てを食べたいんだ。昔からのこだわりなんだ」
「そうだったねえ。昔から、如のこだわりだったねえ」
「楓の料理なら尚更だ」
「もー! 私を置いてかないでです。ちょっと放っておけば、二人揃ってノロケちゃうです!」
「「あはは!」」
朝の幸せな時間はあっという間。
父は仕事へ、少女は学校へと行く時間になった。背中に背負ったランドセルが重く感じる。
「いってきます」
「いってきますです」
「いってらっしゃい!」
※ ※ ※
校門を通る。教員が笑顔で出迎える。
少女に対しても変わらず、その笑顔を振り撒いてる。少女はニッコリと笑って挨拶した。
「あっ!」
母親から渡されたハンカチが落ちてしまう。
急いで拾おうとしたが、代わりに男の子が拾ってあげ、少女に渡してきた。
「気をつけろよ? それでなくても、おっちょこちょいなんだからな。早く教室に行こうぜ。先生、口うるさいしな」
「うん!」
渡されたハンカチをギュッと握り締めて仕舞う。少女は男の子の隣に並んで歩いていく。
「ありがとう、です」
「お礼なんか要らない。けどまあ、悪い気はしない。なあ、あのよ……名前で呼んでもいいか?」
「良いですよ? どしてです?」
「なんとなくだ! ほら行くぜ、結愛!」
「はいです!」
如翔と楓のハンカチが、その娘の結愛にも受け継がれ、新しい出会いを生んでいく。
背負っているランドセルが軽く感じた結愛の顔には、晴れ晴れとした笑顔があった。
※ ※ ※
「如、行こう」
「おう!」
再び始まった日常。並んで歩ける日常。
如翔と楓は青空を見上げた。雲ひとつ無い青空を。
《ありがとうです》
「「?」」
気のせいかもしれない声に顔を見合わせる二人。自然と笑いあってしまう。
「「どういたしまして」」
重なりあう声。心からの声。
その声は、きっと未来へと届いているだろう。




