十五話
目を覚ます。目覚まし時計の音が耳に訴えかける。その音を止め、時間を確認する。
「……七時、か」
幾度かの葛藤の末、身体を起こしてカーテンを開ける。窓を開けて浴びる朝日は、寝惚けている頭を一気に覚まさせる。
「うーん! ぼちぼち起きるとすっか」
※ ※ ※
「これは!?」
窓を開けた楓の目に映る景色、五年前に別れた景色が広がっていた。
自室にある姿見で自分の姿を確認する。そこに映るのは五年後の姿。戻った自分の姿だった。
「戻ったんだ……。なのにこれは一体」
※ ※ ※
「本当に合ってるのか?」
「日付を偽ってどうするのよ? 息子に対して無意味でしょう」
「うーん」
如翔はカレンダーを確認する。何度も何度も確認する。やはり何回見直しても事実は変わらなかった。
その日付は、現在で最後に眠りに就いた日の翌日だったのだ。
「あ、如翔。これ、楓ちゃんに渡してくれない?」
「ハンカチ?」
「楓ちゃんから借りっぱなしだったのよね。お願い」
「別に構わないけど」
※ ※ ※
「如!」
「よう」
玄関を出て互いに顔を会わす。昨日も普通に顔を会わせていた筈なのに、何だかとても照れくさい二人。
「これ、母さんが」
「これって、如が私に貸してくれたハンカチだよねえ」
「そういえばそうだよな。じゃあ僕のなのか?」
「どうなんだろうねえ」
「ま、いっか。僕、他にもハンカチ持ってるし」
「良いの?」
「おう」
如の返事を聞いて、楓はハンカチを大事にしまう。
楓の様子を見ていた如翔は、思わず吹き出してしまった。
「どうしたの!?」
「悪い悪い。何だか可笑しくてな」
「もう、びっくりしたじゃないか! 私に何か付いてるんじゃないかと思ったあ」
「安心しろって。何か付いてたら、僕がちゃんと取ってやるから」
「あのときみたいに?」
五年前で如翔が自分の頭の桜を取ったことを覚えていた楓は、何だか嬉しくなった。
※ ※ ※
暫くして、二人は神社へと来ていた。
神様ちゃんと出会ったあの神社に。そこは何も変わっていなかった。今にも神様ちゃんが出てきそうな雰囲気すら感じる程に。
「不思議だよねえ。確かに数日間、五年前へと行っていた筈なのに、朝起きたら翌日だったなんてさあ」
「周りは普通にしていて、お前が当たり前に住んでいる。引っ越しなんてなかったみたいにな」
「うん。お祖父ちゃんも生きているしねえ。明日、お祖母ちゃんと遊びに来るみたいだよ」
「……なんだったんだろうな……あれは」
「なんでもいいんじゃない? 嘘じゃなかったんだし。少なくとも、私と如には」
「まあな。あれは嘘じゃないんだ、うん」
「如?」
「だから、これからのことも全て本当だな」
楓の頭をぽんっと触れる如翔。
思わず顔を赤らめる楓。五年前は同じくらいの目線だったが、楓の視線は如翔を見上げる形となっていた。
「如、大きいんだねえ」
「そうか?」
「うん。五年の差は大きいんだねえ」
「今なら実感できるな」
「そうだよねえ……改めて実感したねえ。私、如が好きなんだってこと……をさあ」
「それは僕の台詞だ、てな」
二人の間に静かな時間が流れる。
誰の邪魔も入らない静かな時間が。




