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ミステイク  作者: 碧衣玄
15/18

十五話

 目を覚ます。目覚まし時計の音が耳に訴えかける。その音を止め、時間を確認する。


「……七時、か」


 幾度かの葛藤の末、身体を起こしてカーテンを開ける。窓を開けて浴びる朝日は、寝惚けている頭を一気に覚まさせる。


「うーん! ぼちぼち起きるとすっか」


※ ※ ※


「これは!?」


 窓を開けた楓の目に映る景色、五年前に別れた景色が広がっていた。

 自室にある姿見で自分の姿を確認する。そこに映るのは五年後の姿。戻った自分の姿だった。


「戻ったんだ……。なのにこれは一体」


※ ※ ※


「本当に合ってるのか?」


「日付を偽ってどうするのよ? 息子に対して無意味でしょう」


「うーん」


 如翔はカレンダーを確認する。何度も何度も確認する。やはり何回見直しても事実は変わらなかった。

 その日付は、現在で最後に眠りに就いた日の翌日だったのだ。


「あ、如翔。これ、楓ちゃんに渡してくれない?」


「ハンカチ?」


「楓ちゃんから借りっぱなしだったのよね。お願い」


「別に構わないけど」


※ ※ ※


「如!」


「よう」


 玄関を出て互いに顔を会わす。昨日も普通に顔を会わせていた筈なのに、何だかとても照れくさい二人。


「これ、母さんが」


「これって、如が私に貸してくれたハンカチだよねえ」


「そういえばそうだよな。じゃあ僕のなのか?」


「どうなんだろうねえ」


「ま、いっか。僕、他にもハンカチ持ってるし」


「良いの?」


「おう」


 如の返事を聞いて、楓はハンカチを大事にしまう。

 楓の様子を見ていた如翔は、思わず吹き出してしまった。


「どうしたの!?」


「悪い悪い。何だか可笑しくてな」


「もう、びっくりしたじゃないか! 私に何か付いてるんじゃないかと思ったあ」


「安心しろって。何か付いてたら、僕がちゃんと取ってやるから」


「あのときみたいに?」


 五年前で如翔が自分の頭の桜を取ったことを覚えていた楓は、何だか嬉しくなった。


※ ※ ※


 暫くして、二人は神社へと来ていた。

 神様ちゃんと出会ったあの神社に。そこは何も変わっていなかった。今にも神様ちゃんが出てきそうな雰囲気すら感じる程に。


「不思議だよねえ。確かに数日間、五年前へと行っていた筈なのに、朝起きたら翌日だったなんてさあ」


「周りは普通にしていて、お前が当たり前に住んでいる。引っ越しなんてなかったみたいにな」


「うん。お祖父ちゃんも生きているしねえ。明日、お祖母ちゃんと遊びに来るみたいだよ」


「……なんだったんだろうな……あれは」


「なんでもいいんじゃない? 嘘じゃなかったんだし。少なくとも、私と如には」


「まあな。あれは嘘じゃないんだ、うん」


「如?」


「だから、これからのことも全て本当だな」


 楓の頭をぽんっと触れる如翔。

 思わず顔を赤らめる楓。五年前は同じくらいの目線だったが、楓の視線は如翔を見上げる形となっていた。


「如、大きいんだねえ」


「そうか?」


「うん。五年の差は大きいんだねえ」


「今なら実感できるな」


「そうだよねえ……改めて実感したねえ。私、如が好きなんだってこと……をさあ」


「それは僕の台詞だ、てな」


 二人の間に静かな時間が流れる。

 誰の邪魔も入らない静かな時間が。

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