十話
楓の心臓の高鳴りが、楓自身に自覚させる。ずっと前から秘めていた想いを。幼馴染みという近い存在故に、離ればなれになるまで気付かなかった想いを。
「どうした? 楓。ボーッとして。眠いのか?」
「ふぇ!? ……いや……なんだろうなあ」
自分を気にかけてくれる如翔の視線。さっきまで何ともなかった視線。でも今は違った視線。楓は、まともに如翔と目を合わせられずにいた。
「楓?」
「ごめん如! ごめん!」
「お、おい!?」
自分に背を向けて走り去っていく楓を如翔は黙って見送ることしか出来なかった。
「あ~あ。楓ちゃん、明らかに様子が変だったですね」
「お前、楓に何かしたのか?」
「どしてです」
「お前と楓が手を繋いでから、明らかに楓の様子が変わったんだ。他に考えられない」
「お前さんにしては鋭いです。褒めてあげるです」
「何をした」
「楓ちゃんとお話ししたです。楓ちゃんは、自分の心を知ったです」
「遠回しにするなよ。直球で頼む」
「これはデリケートなことなんですが……お前さん、訊く以上、楓ちゃんと向き合うですよ?」
※ ※ ※
「どどどどうしよおー!」
家に帰った楓は自分のベッドへとダイブした。枕に顔を埋めて足をバタつかせる
「うーーー!」
枕に向かって叫ぶ楓。
五年前へと飛んだ原因が自分にあったこと。それが如翔への恋心であったこと。いつから如翔を……と考える楓だったが、神様ちゃんに指摘されるまで気付かなかった為、ハッキリとは判らなかった。
「如」
仰向けになり、枕を胸に抱える。抱えた枕に力が入る。まるで、高鳴る心臓の音を抑えるかのように。
※ ※ ※
「……です」
「は?」
「だーかーら! 楓ちゃんは、お前さんのことが好きなんです。恋をしているです!」
「待ってくれ。今回の事と楓の事は関係あるのか?」
「何度も言わせないでです! 五年前に来た理由は、お前さんと離ればなれになった時間だからです。その時には少なくとも既に、お前さんに惚れているです。楓ちゃん自身に自覚はなかったみたいですが」
「楓が……僕を」
「引っ越しはせずに済みましたが、特に変化がない以上、お前さんが楓ちゃんとの関係をハッキリさせるしかないです」
「マジで!?」
「マジマジです。で、どですか? お前さん自身は楓ちゃんのことをどう思ってるです?」
「楓のこと、か。急に言われてもな」
「はぐらかしても無駄です。お前さんの心は把握してるです」
「こんなときは神様気取りかよ。たく。そんなの決まってる。僕は、ずっと前から楓が好きだ」
「そですか。ごちそうさまです」
「素っ気なさ過ぎだろ! 訊いといて!」
「他人の恋路に興味ないです。只、楓ちゃんを泣かしたりしたら容赦しないです」
「わ、分かった」
ギロリと見つめてくる神様ちゃんの視線に、如翔も返事をするのが精一杯だった。
どこか、神様ちゃんの表情が明るく見えた如翔だった。




