表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

8話

八ソ戦争が始まって5ヶ月。

1942年4月27日

満州では江草隆茂少佐率いる銀河爆撃機や各種水上機を用いた奇襲戦術により何とか怒濤のソ連兵の人海戦術を食い止めているが、数の利に関しては向こう優勢であり、制空権についても何とかこちらが掌握しているが、もしソ連側が米国製戦闘機(F4UやF4F)を投入した場合、後継機の定数が揃っていないので各地に配備されている零戦を朝鮮半島に回さざるを得なくなるので、はやくその後継機を揃えなければならなかった。


更にそれに加え、書記長と現米大統領は親しい友人とも言える間柄で、特に後者は大の八洲嫌いで、打倒八洲を簡単にすべくソ連への軍事支援の強化していた。

なので米国側が本気で支援した場合は開発中の新鋭機も提供されるだろうと考え、八洲皇国としては何としても烈風と紫電の生産数を揃えなければならなかった。


だが、大八洲皇国に幸いだったのは43年10月のルーズベルトの死去と44年5月の欧州戦争の分水嶺となったノルマンディ上陸であった。特にルーズベルトの後継者、トルーマンは反ソ主義で、対独戦用の援ソ物資を対八戦で使用しているとの報道を中華民国経由で聞き付けるとそれに激怒し、対八支援を開始した程である。


閑話休題。

ハルビンを流れる松花江に6機の瑞雲が着水するとすぐさま海軍航空隊の整備兵が乗った警備艇が瑞雲に横付けし、瑞雲の整備を始め、別の警備艇に乗っていた操縦士と機銃手がさっきまで瑞雲に乗っていた乗員に変わりに乗り込む。

そう、椰子川参謀のアイディアによって広大な満州に流れる黒龍江などの河川や各地の湖にソ連戦車部隊への攻撃を終えた瑞雲及び99式水上爆撃機は着水すると、即座に機体の整備及び燃料弾薬を補給し、別の乗員の元で飛び立ち、少ない機体で多大な戦果を挙げていたのである。


とは言え、ソ連側の方が遥かに生産力や数で勝っていた上に前述の援ソ物資が加われば我が八洲の敗北は確定的であった。


「では水戸川大尉、また四時間後にここで会いましょう!」

そう瑞雲の操縦席で橋倉大尉が言うとそれに対して水戸川大尉は「そうだな!ではあんたの武運を祈るよ」と呟くと橋倉及び水戸川両大尉は互いに敬礼し、水戸川の乗る瑞雲は虚空の彼方へと飛び立ったのである。


1時間後、ノモンハン上空

「敵機甲師団か…………各機、かかれ!」

水戸川はそう叫ぶと操縦桿を傾け、平原を進む敵に向け機体を急旋回させたのである。


だが、そんな時であった。

斜め左上方から急降下しながら白く塗られ、赤い星と尾翼に薔薇が描かれたソ連軍のF4Fとおぼしき戦闘機が水戸川機含む瑞雲隊に対して銃撃を加え、通り過ぎたのである。

グラマン(F4F)だと!?」

水戸川がそう言うとさっきのF4F戦闘機は宙返りして再びこちらに向かって来たのである。

無論、水戸川もただでやられているはずが無い。彼は右手で操縦桿の上に備わる主翼内20㍉機銃のトリガーを押し、左手で胴体内12.7㍉機銃のトリガーを押し、そのグラマンに反撃を加える。


だが水戸川機とグラマンがすれ違うと水戸川機だけが火を噴き地上へと落下していく。

「戸村!落下傘はあるか?脱出するぞ!」水戸川がそう言うと戸村2等兵曹は「大尉、先程腹をやられまし…………ぐっ」と力無く言うと「大尉………お逃げ下さ…………」と続き、水戸川は「いや、お前を残して俺だけ逃げる訳にはいかない」と続き、近くの沼に燃え盛る機体を緩降下させて辛うじて不時着水させたのである。

そして水戸川は操縦席から出ると偵察員席の風防を取っ払い、戸村を背負おうとした、次の瞬間であった。今度はIL-2シュトロモービクと言う攻撃機が水戸川の瑞雲を発見し、機銃掃射を加える。すると流れ出ていた瑞雲の燃料に引火。それから大爆発を瑞雲は起こし、水戸川と戸村はそれに巻き込まれ、爆死したのである。


そして残った瑞雲も多くが撃墜されたのである。


遂に皇国陸海軍が恐れていた米国製航空機が八ソ戦へ投入されたのである。


とは言え、5月2日までに対ソ連戦開始と同時に大八洲皇国は取り敢えず自由英国などの英連邦に米国、更にはドイツと中立条約を結び、多くの戦力をソ連いや満州や朝鮮半島に割く事が出来るようになったのである。

無論、米国とのわだかまりは健在であり、いつ太平洋で権益を巡って対立するかがわからないので、トラック諸島や硫黄島の航空隊、それに米領グアムが近い沖ノ島などにはレーダーや早期警戒用にレーダー装備の2式大艇や1式陸攻が優先的に配備されつつあった。


連合艦隊旗艦・特務艦鳳翔

司令部室

「まさか連中が(対独戦用の)米国製機を投入してくるとは予想していませんでした…………」

そう言ったのは満州方面で航空戦の指揮をとっていた富浦鶴雄大佐だ。すると二航戦旗艦の飛龍艦長の加来止男大佐と同じく蒼龍艦長の柳本柳作大佐に彼らの上官である二航戦司令である多聞丸こと山口多聞少将が立ち上がり富浦の責任を追求する。


とは言え、貴重な新鋭機を本土に全て配備していたと言うのは流石に海軍のミスであった。それに関しては一航戦と二航戦に烈風及び紫電改が行き渡る1ヶ月後を目処に両航戦の零戦22型と同52型を満州や朝鮮半島の航空隊に回す事となり、解決する事として、瑞雲の護衛が可能な長距離戦闘機を揃える事となったのである。


とは言え、満州の白薔薇と名付けられたソ連軍戦闘機乗りの存在は帝国陸海軍の攻撃機乗りの間で広まりつつあった…………


5月11日、福岡県の築城及び春日飛行場に所属する零戦52型36機からなる海軍第301航空隊は朝鮮半島北部の羅津の飛行場を経由して満州の飛行場へ、その翌日には零戦22型54機からなる岩国の第315航空隊が釜山、仁川を経由し満洲へ向かった。それに加えて12日には満州方面の海軍航空部隊指揮を解任された富浦に代わって源田実大佐の搭乗する96式輸送機とその護衛の烈風11型6機も佐賀飛行場から満洲へ直接向かい、本格的に航空部隊が八ソ戦に介入出来るの様になったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ