旧、心の折れたエピローグ
※この物語には、敵見方問わず複数の、しかも重度の変態が続出します。苦手な方、純粋な方、魔法少女が大好きな方、ロリコン、進撃の巨人をこよなく愛している方、なだそうそうは屈指の名曲だと感じている方、むしろ自分こそが変態だから、変態を悪く言うやつはこの右手でぶっとばす、な方は、悪い事は言いません、どうぞ、お引取りください。
「魔法少女の天敵が何かを、君は知っているかい?」
白い髭を生やした老人はニヒルに笑い、右手に茶色く濁った半透明の球体を握りながら言いました。
「……知りません。というか、知りたく、ない、んですけど……」
震えた声で私は言います。
私は魔法少女になって、幾人もの敵と戦ってきました。しかし、その経験の中でこれほどの危機感を覚えた事があったでしょうか。
いえ、ありません。これは、今回の敵は、今まで以上の強者です。
私が戦慄している理由はひとつ。老人の持つ茶色い球体が怪しい光を薄く放つと、それに呼応するかのように老人の背中に生えた触手が蠢いたからです。
「魔法少女といえば、触手じゃろう」
なんと言うべきでしょう。とても……きもいです。何がきもいかと言うと、魔法少女の天敵の話をしていたはずなのにいつの間にか魔法少女が触手だ、みたいな言い方になっているところがきもいです。そこをイコールで結ばないで欲しい。
「ふひひ……ふひっひっひ」
私の貞操が危ない。本気でそう思いました。
これまでも、何度かこういう種類の強敵と戦ってきました。その中でも指折りきもいです。
けれど、私は戦わなければなりません。
この手の、いわゆる異能と呼ばれる力を得てしまったどうしようもない変態を私達魔法少女は『想魔』と呼んでいます。
人の感情が、人の心が生み出したなんらかの想いが現実に摩訶不思議な現象を呼び起こす。それを排除するのが私達魔法少女なのですが……はっきり言って世界とかどうでもいいです。俗世では魔法少女は世界のために戦っていると言われているようですが、それは間違いです。私は自分のために戦っています。例えばあちらにおわす変態さんは、魔法少女に悪戯をしたいという想いが高まり過ぎて魔法少女へ悪戯をするための異能を得ました。そういう力を私達は『魔法』と呼び、その魔法を使うための力を『心力』と呼んでいます。
あの触手は、あの変態さんの心の根幹とも言えるものなのですが、それを排除する、ということが何を意味するか。聡い方はお気づきでしょうが、そうです、変態さんの心の一部を取り除く事で世界は平和になるのです。というのは先述した通りおためごかしです。
魔法少女は、変態さんが駆使する心力を吸収し、自分のものにする事が出来るのです。
魔法少女も変態になる、というわけではありません。私が知る魔法少女の殆どが変態ではあるものの、少なくとも私は違います。心力を吸収し、魔法ステッキにチャージしていった魔法少女は、より強力な魔法を使えるようになります。なんと素晴らしいことか、その魔法は戦闘に用途の限られたものではないのです。なんでも出来るのです。ええ、願望欲望を実現させた変態さん達を討伐する事によって、私の願いが叶えられるのです。
私には、どうしても叶えたい願いがあるのです。
それを実現させるためには、かなりの量の心力が必要です。たくさんの想魔と戦わなければなりません。
例えその想魔が――――股間からも触手を生やしたくそったれ変態であったとしてもです。
「死ねよ変態ぃいいいいいいいいいいいいい!」
「おお!? そうだ、わしの胸に飛び込んでおいで魔法少じょばぁあ!」
「あんたの汚い欲望はどぶ川にでも流して下さいよ変態!」
「どご! ぐはっ! ちょ、待って、せめて、攻撃するなら、魔法少女、らしく魔法、で……せめてそのメリケンサックは外しどぼうっ!」
「あんたなんて拳で充分ですよ変態!」
触手を踏みつけ腹パン顔パン。こうやって物理攻撃でもって想魔を倒せば、このご老人はご自身の変態願望をすっかり忘れた状態で、翌日から綺麗さっぱりになって日々を過ごせるわけです。その上で心力が節約出来て私の願いも叶えられるのですから一石二鳥、いえ、世界から変態が消えるという利を考えると一石三鳥です。
ああ、早く、一刻も早く――
よく解りませんが「もっと、もっと」と連呼しながら血反吐を吐いている老人をさらにさらに痛めつけながら、私は想う。
――早く、私の願いを、叶えなければ……。




