プレゼント
「さっちゃん♪はい、プレゼント!」
にこやかに婚約者がきれいにラッピングされた大きな膨らんだ袋を差し出す。
先日のプレゼントが思い出され、素直に受け取れずにいる私を不思議そうな顔して首をかしげるイケメン婚約者殿。
かわいい・・・イヤ違う。今、考えることは、このプレゼントである。
「どうしたのさっちゃん?受け取ってよ。」
なかなか受け取らない私を不思議そうに見るイケメン。
「あ!わかった。ふふふ♪大丈夫だよ。今回は希望の中身と違うけどとっても良いものだよ♪きっとさっちゃんは喜ぶと思うよ♪ほしかったイモリやヤモリの黒焼きに乙女の涙、マンドラゴラ等々は後日プレゼントするね。・・・でも、さっちゃんが調合して僕に惚れ薬を飲ませなくても、僕はさっちゃんにメロメロだよ♪」
「なんの話をしとるかぁ!突っ込みどころ満載だか、まずはきっぱり言う。そんなプレゼントはいらない。」
ほんと、なにをどうしたらそうなるのか謎である。
イモリやヤモリの黒焼き?・・・御免こうむる。なにがうれしくてそんなものを貰わなければならない。
乙女の涙?・・・どうやって手に入れる気だ。手段によっては婚約解消または警察に通報するぞ。
マンドラゴラ?・・・空想上の植物をどうやって手に入れると言うのか?まあ、じっさいにあるマンドレイクで代用しようと考えていてもほしくない。幻覚、幻聴を伴い時には死に至る神経毒が根に含まれている植物なんて御免である。
どうやったら喜ぶ要素があると言うのか?この男、謎である。
「そう?そっかぁ~!そうだよね!相思相愛なラブラブな僕達には惚れ薬なんて無粋なものいらないもんね♪ごめんね、間違えちゃったね。ほしかったのは呪術道具だね。こんど良さそうなもの探してくるね♪」
「まてまてまて、どうしてそうなる!お前は私をどう見ているんだ!そんなものをプレゼントされた日には、即その場でお前に使ってやるわ!ってか、頭大丈夫?」
「え?プレゼントしたものをさっそく使ってくれるの?僕にすぐ使ってくれるぐらい愛してくれてるんだね。しかも、僕の心配してくれるほどに。」
「おめでたい頭でも気づいて・・・。」
いったいどんな呪術道具を探し出してプレゼントするつもりだったのか謎だ。
とりあえず、これだけは言える。
「今現在のプレゼントおよび、今現在考えているプレゼント&今後考えるであろうプレゼントの一切を
私はもらうことを拒否する。・・・要は、お前からのプレゼントはいらない。」
惚れ薬の材料や呪術道具のプレゼントを言い出す時点で、この大きな膨らんだプレゼントの中身は・・・であろう。
そして、これからも中身が怖いプレゼントが予想される。
ほんと私ってばどんなイメージされているの?普通、婚約者って言うかそれ以前に、人にプレゼントする物としてありえないでしょ。
「え~!なんでそんなこと言うの?さっちゃんの愛の奴隷の僕は『さっちゃんが喜ぶ物』しかプレゼントしないのにぃ~。ぶうぶう!そんな意地悪なこと言って僕の愛を試しているんだね。さっちゃんかわいい♪」
おーい!色々と突っ込むとこいっぱいなんですけど。
なにコイツ・・・めんどくさい。やっぱり婚約したのはやまった?
「とりあえず、そのプレゼント持って帰れ。そして二度と来るな!」
きっぱり、はっきり言うがヤツはめげない。
その後もぶうぶう文句は言うし、恥ずかしいセリフ等言うので心が折れた。
色々とめんどくさくなり、今回のプレゼントは受け取ることにしたが、開けるのが怖い。
「さっちゃん、は・や・くぅ~♪」
いや、まて。無駄に色気を振りまいて言うイケメン婚約者にモノ申したいが、これを開けるには決心がいる。
何が出てくるんだ。私はこれを開ける前に色々と削られているんだぞ。
ガリガリと削られすぎて、ヤバイぐらいだ心が。
これを開けてしまったら私はどうなるんだろう?
おそるおそる開けると・・・茶色の物体が目に入る。
がしりと掴んで持ち上げる。
肌触りは良い。
私の正面に持ってきてまじまじと見ると・・・。
「くま・・・のぬいぐるみ?え!?テディベア!?・・・かわいい♪」
びっくりである。まともなプレゼントにびっくりである。驚いたのでもう一度言う。
びっくりである。
「だよね。世界で一つだけのさっちゃんのテディベアだよ。僕がいなくてもさびしくないように作ってもらったんだ。」
幸せそうに、ほわほわと言っているが、オーダー品!?
触って見てわかる、この品質の良さ。
それだけでも高そうだと思うがオーダー品ときた・・・いったいどれ程の値段がするんだか・・・聞くのが怖い。
「ふふふ♪さっちゃんに似合うね♪ね、さっちゃんが喜ぶプレゼントでしょ?さっちゃんの側に置いてかわいがってね。そして、僕がさっちゃんのそばにいないときは色々と話しかけてあげてね。」
かわいいことを言う婚約者だこと。ふふふ
「僕、いつでもさっちゃんのお話を聞くからね♪」
いつでも?聞く?
「このテディベアに盗聴器が仕掛けてあるから、さびしくなったら絶対に話しかけてよ。さびしくなくてもお話して。僕はいつでもさっちゃんのお話聞くからね。ふふ、この盗聴器ってすっごく性能が良いから、色々な音を拾ってくれるしね。あぁ!さっちゃんの生活の音・・・楽しみだね。でも、画像があったほうが良かったかな?画像つきにすると、仕事中も見ちゃうから仕事にならないし・・・うぅ。やっぱ音だけで我慢だね。」
盗聴器!?なにそれである。
「変態!?犯罪者!?なに仕込んでるの?」
「失礼な!いくら愛しの婚約者のさっちゃんでも、ぷんぷんだよ。かわいいさっちゃんをいつでも感じていたいだけなのに。犯罪者ってなに?何も知らないで仕掛けてならそうかもしれないけど、『盗聴器があります』って言ってプレゼントしてるんだから犯罪者にはならないと思うよ。婚約者同士のかわいいお話の手段でしょ。」
なにそれである・・・今回もまともではない。
やはり開けるべきではなかった。
どうしよう、コイツどうしよう・・・いつも思うが、やっぱり婚約したのは失敗だったのか。
とりあえず、
「今日も朝まで正座で説教だ!そこにお座り!」