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勇者君の実力

俺の想像をいい意味(・・・・)で裏切った勇者が目の前にいた。

その勇者は聖剣を右手に持ち、肘を肩まで上げ剣の刃を背中の方に垂らしている。

左手は軽く開き、胸の辺りにまで上げている。

独特の構えだが隙が無い。

さすが勇者と言うところだろう。

見た目はチンピラだが……。


片やイケメン君は少し腰を落とし、腰にかかっている剣の柄に手を添えている。

盗賊と戦った時に見た剣技、おそらく『居合い剣』というやつだろう。

居合い剣、鞘から剣を抜き、標的を切って、また鞘に戻す。

ただそれだけの事だが、イケメン君の技はただそれだけとは言えない。

速いのだ! 常人にはまず見えないだろう。

『キン!』と剣が鞘に納まった時にやっと気付くのだ。


とまぁ、今の状況を説明したのだが、さてさてどうなるのかな?


「行くぞ! オラァ!!」

まず先に手を出したのは勇者君だった。

一歩踏み込んで……いや、踏み込んだだけだ!

その瞬間に床を伝わって衝撃波が襲い掛かる。

瞬時に気付いたイケメン君は足に力を入れ、飛び上がった。


「あががっ!」

俺は傍観しようと気を抜いていたので、衝撃をまともにくらってしまった。

例えるなら高いところから飛び降りて、足だけで着地したときのびりびり感。

気を抜いていた時の衝撃は辛い!

少し涙がでた。


次に仕掛けたのはイケメン君、飛び上がった状態での居合い剣。

キン! と聞こえたので、涙を拭いながら勇者君の方を向く。


「!」

勇者君がブリッジしている!

おそらく避けたのであろう。

すぐさまイケメン君の方を向くと体勢を整え、もう一度居合い剣を使う。

キン! と聞こえたので、もう一度勇者君の方を向く。


「!?」

何故か勇者君は聖剣を口に咥えて、右手で逆立ちをし左手は腰に、両足は大きく開いている!


「何故そうなった!?」

避けたのか?いや、避けるにしろもっと他にあるだろう!

何でそんな不自然な!? 余裕なの?俺はこんな体勢でも避けれるぜって事なの?


「ふっ、お前が初めてだぜ。毛穴という毛穴から脂汗を吹き出させたのは!」

ギリギリだったのかよ!?


「まさか僕の居合い剣を二度も避けるとは、初めてのことです」

あ、何だろうこの安心感。

イケメン君を見るとシリアスな展開だって事を思い出させてくれるなぁ。


「まぁな、だてに魔王を倒す為に旅はしてねぇよ」

そう言って勇者君は体勢を整えた。


「じゃあそろそろ、おねんねしてもらおうか!」

そう言って勇者は大きく振りかぶって何かを、投げた!

何も手に持っていなかったが、イケメン君は何かを察知し避ける。

だけど、その避けた後ろには……。


「ふがっ!?」

俺がいたんですよ!

何か顔面に鈍器のような物がぶち当たったような衝撃。

盛大に鼻血をぶち撒けながら床の上をのた打ち回った!


この感じ、多分魔力の塊を力任せに投げたんだろう。

おおよそ魔法とは言えない粗末な物だが、勇者が放つと馬鹿にならない。

確かに魔法と違い、詠唱も無しに放てるのなら不意はつけるだろう。

ちなみに魔法を無詠唱で放てる者は俺も含めて人間、魔族でも一握りだけだ。


何故俺がこんな目に遭うんでしょうか?

魔王だからですか?

……勇者君、君は無意識のうちに魔王を弱らせているよ。


魔王である俺は通常の攻撃、魔法は魔王固有の絶対障壁で防ぐ事ができる。

この障壁は唯一勇者の持つ聖剣によって無効化させられてしまうのだ。

ちなみに勇者の放つ魔法も聖剣を持った状態でなら同じように無効化してしまう。



ふふっ流石だ勇者よ、我が身体に傷を負わせるとはな!

決戦時に言ってみたいセリフだな。前回は言えなかったし。



床をのた打ち回っている時に、勇者君が見えた。


「!?」

ま、まさか? いや!やめて、もう俺のライフはゼロよ!


俺の目に映りこんでいたのは再度踏み込もうとしていた勇者君の姿だった。



流石にもう我慢が限界だった。

これ以上無防備に攻撃されたらたまったもんじゃない。

踏み込む前に飛び起きて、勇者君が床を突く前に足を掴む。


「何!?」

勇者君が俺に気付くと驚きの表情を浮かべた。

それもそのはず、イケメン君より離れて、しかも床に倒れていた奴が一瞬のうちに接近してきて、ただ足を踏み込むという行為を阻止してしまったんだから。

イケメン君も避けるという事が精一杯だったのに、それを阻止したことに驚いた。


そして足を掴んだまま持ち上げて床に叩き付けた。


「ぐはっ!」

勇者君は背中から叩きつけられて肺から空気が押し出された。


「まったく、人に迷惑を掛けやがって! お前にはお灸をすえないといけないな!」

そう言って俺は何度も勇者君を床に叩きつけた。

何度も何度も、勇者君が泣いて謝るまで……。


イケメン君も何も言えずこの行為を立ち尽くしたまま呆然と見ていた。

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