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三話

 家に着き、携帯電話を見る(PAとは別に携帯電話も持っている。これは明星高校生の基本だ)と時刻は七時二五分。真斗は靴を脱ぎ、「ただいま」を言って階段を上がり、二階の自分の部屋にカバンを置いてリビングへ向かった。

 リビングへ行くと、ソファーにジャージ姿で寝転ぶ妹――(なぎさ)がテレビを見ていた。

「ただいま。母さんは?」

 真斗はだらしない格好(と言っても普段からこの格好である)の渚に声を掛けた。

 渚は寝転んだ格好のまま器用に首だけ真斗の方を向くと、サイドポニーの少し長めの髪を揺らし返答する。

「おかえり、おにぃ。遅かったね~。お母さん、今日も夜勤だって」

 気だるげな妹の口からは決まり文句が零れた。

 須藤家の家族構成は、両親に兄妹一人ずつの四人家族。

 母はいつも夜勤で家に帰るのは遅く、朝は昼ごろまで寝ているため基本的に顔を合わせる事が無い。父は単身赴任をしている為こちらも同様。

 真斗は「そっか」とそっけなく返し、自分の茶碗に飯を盛って椅子に座り、テーブルの上にラップが掛っている野菜炒めをおかずに飯を掻き込んだ。

 若干冷めてはいるが味に支障はない。香りの良いオイスターソースが飯を掻き込む速度を跳ね上げる。

 渚はいつもだらけてはいるが、料理が得意だ。おそらく同年代でここまで料理が上手いのは、なかなかいないのではないかと真斗は密かに思っている。つけあがるので本人に言うことは無いが。

 普段渚が基本的に母親の代わりに食事を作ってくれている。食事以外の家事をやろうとはしない為そこは真斗が担当する事になっていた。

 「ごちそうさま」と短く言って茶碗と皿を流し台へと移動し、水に浸けられているだけの渚の茶碗と一緒に自分の食器も洗う。

 終えると風呂場へ行きシャワーを浴びて汗を流し、二階の自室へと戻った時には時刻は8時半を回っていた。

 すぐさま机の上のパソコンを起動し、USBケーブルを通して『PA』を挿し込む。

 早速、小説の続きへ取りかかりたいところだったがHRの時に担任から配られた課題ファイルをしなければいけない。

 パソコンへと接続し、億劫そうにマウスを動かして課題の入ったフォルダをクリックする。

 だが中には課題とは別の、見慣れない名前のフォルダがあった。

「なんだこれ? 担任め……間違って違うフォルダも一緒に入れたな」

 そう言いながらも興味本位でそのフォルダをダブルクリック。

 中にあったのは、html形式のファイルだ。

 ――名前は……『裏生徒会』!?

 奇妙な名前のファイル。しかし、この名前は……

「……これって、中村が話してた……!?」

 ごくりとつばを飲み込み、眼の前のファイルを凝視する真斗。

 何故こんなファイルが自分のPAに入っていたのか皆目見当がつかない。噂を利用した悪戯か、あるいは――。

 だが、このファイルが中村の話していたゲームだとするならば、

「勝てばどんなものでも手に入り、負ければ大切なものを失う……」

 中村と話している時はそんな馬鹿な、と切り捨てた真斗だったが、今現実にこうしてファイルがある。

 しかし、

「そんなことがあってたまるか! 何かの悪戯だろ。俺がこの目で確かめてやるよ!!」

 真斗は口に出して、自分に言い聞かせるように言う。

 例えどんなものであっても自分の目で確かめればいい事。それで全てが分かる。

 馬鹿馬鹿しいと思いながらも真斗はそれをクリックすると、リンク先が表示された。

 黒い背景のページに白い文字で、タイトルと思しき『第四回裏生徒会選挙』という文字。

 その下には、裏生徒会選挙についての概要の様なモノが書かれていた。

                  

【裏生徒会選挙】概要


 ゲーム『裏生徒会』は、高校生のみ参加可能のヴァーチャルゲームです。このゲームではプレイヤーは自身の学校の裏生徒会へ所属し、他校の裏生徒会役員と試合形式の対戦ゲームを行います。最終的に残った生徒会グル―プには、「どんな願い事でも叶える」という特典が与えられます。『裏生徒会選挙』とはその生徒会のメンバーを決める為の選挙なのです。

 ルールはシンプル。プレイヤーは、自身の分身となるアバターを用いて、期間内に選挙に参加しているプレイヤーとランダムに対戦を行い、相手プレイヤーを倒してください。

 試合は勝ち抜き方式で行われ、最終的に残った5人のプレイヤーが今期の生徒会役員となります。倒されたプレイヤーはその時点で参加資格を失い、来期の生徒会選挙まで参加する事は出来ません。また、倒されたプレイヤーは自身の大切なモノを一つランダムに失います。

 参加を希望される方は、下記の応募フォームのところに氏名と学校名を明記して、参加受付を行ってください。その後アバター製作ページへと進んで頂き、自身のアバターを設定して頂く必要があります。アバターは一人につき一つです。作り直すことは出来ません。が、もし、負けてしまった場合、来年の生徒会選挙への参加の際には再度アバターを作ることが可能です。

 登録後、試合スケジュールに組み込まれ、対戦を行って頂きます。

 試合スケジュールにいたしましては、参加登録後、メールによって通知させて頂きます。



(――なんだこれ!?……)

 真斗は驚きを隠せなかった。自身の開いたファイルに内封されていたのは、『裏生徒会』というゲームについての説明。悪戯にしてはやけに作り込みがしっかりしている。

 読み進めていくうちに、とんでもない一文を目にした。それは「どんな願い事でも叶えられる」というもの。それは中村が言っていた裏生徒会の説明と全く同じ。

 しかし所詮ネットゲームだろう、と真斗は思う。

 一見大げさに書いてある『どんな願い事でも叶える』というのは、おそらくゲーム内でのアイテムやマネーについてだろう。流石にリアルでのことであろう筈がない。デメリットに関しても同様で、アイテムやマネーを失うのが『大切なものを一つ失う』に当たるのだろう。

 だから、中村が言っていたことは何かの偶然の一致であり、また、噂話についても噂が独り歩きしてそういった間違った方向で話が進んでしまっているのだろう。

 つまりこの『裏生徒会』は、現実には全く影響の無いただのゲームだということだ。

 真斗は自身の解釈でこのゲームに対して納得した。

 色々な憶測や噂のおかげで脳内がぐるぐるの、ごちゃ混ぜで、今の真斗の精神状態では、こういった結論で着地してしまったのもしょうがないと言える。

 何故自分の『PA』の中にこのファイルが入っていたのかなど、分からないことはまだあるが、そういった現実に全く関係の無い事だと分かった安心感からか、真斗はこのゲームに対しある感情を浮かび上がらせた。

(――面白い!)

 真斗にはこのゲームが非常に魅力的なモノに見えた。まるでライトノベルのような設定、なおかつ、同じ高校生が集まるというところ。

 不審な点はいくつかあるものの、真斗はその不信感を塗り潰すほどに、わくわくする気持ちを感じていた。

 ネットゲームの良さは多種多様な年齢の他人が同じゲーム内で素性を隠し、共にプレイをする事にある。

 しかし、このゲームはその良さをあえて失くし、高校生という枠組みでのみプレイを可能としている。

これは一見デメリットに見えるかも知れないが、真斗はそうは思わない。ネットゲームは素性を隠してプレイするからこそ本当の姿を見せるということが無い(多分に偏見が含まれる)。そこで得た繋がりは希薄なものになるし、それを利用した悪質なプレイヤーを生み出すきっかけになると真斗は考える。

だが、このゲームはそれが無いうえに同じ学校とまで狭い括りを設けている。これでは本当の自分を隠せるはずがなく、非人道的な行いをする者がいればそいつは間違いなく晒しものになる。つまり、健全なネットゲームとして純粋な競い合いが生まれるのだ。

 おまけに、『高校生』という括りが、限定品を欲しがる日本人特有の感性を刺激する。

 極めつけは、『どんな願い事でも叶える』というモノ。やはり、大きなメリットと言うのは意欲を湧かせる。それがゲーム内のアイテムであろうと変わりは無い。幸い、ネットゲームで良くある『早く始めた者勝ち』の要素が無いに等しいこのゲームは、完璧に初心者である真斗にうってつけだった。

 その設定一つ一つに噂のことは抜きにして真斗は惹かれていた。

 実際、中村の話を聞いている時も面白いと感じていたし、小説のネタとしても使っている。真斗は気付かないうちに、始まる前からこのゲームに興味を持っていたのかもしれない。

 気付けばマウスを動かし、アバター製作ページのリンクをクリックしていた。

 たっぷり十秒程待っていると、画面が表示された。

 そこにはアバター設定画面と書かれたページが表示され、項目が4つのみ書かれている。

 名前、性別、学校名、特殊能力。この4つ。

 真斗は、「おやっ?」と思った。

 自身の分身となるアバターと言うぐらいなのだから、もっと色々な点で細かく設定出来るのかと思っていたが、あまりにも項目が少なくて驚いたのだ。以前に中村に誘われてやったオンラインゲームでも、もう少し色々と弄れる要素があったように思ったのだが。

 項目にはそれぞれ※印で注意書きの様なものが書かれていた。


 ※注意事項


 ・名前は本名をご入力ください。ハンドルネーム等は使わないでください。

 ・性別は本性をご入力ください。  

 ・学校名は、自身の在学先をご入力ください。入力された学校ごとに参加者の対戦スケジュールを組むため、違う学校名を入力すると参加出来なくなります。

 

 注意事項に沿って入力をしていく真斗。

 真斗は、プライバシーの保護とかどうなってるんだ? などと考えながらも学校名まで入力し終えた。後先考えずに個人情報を入力する危機感の無さがまさに最近の若者である。

 そしていよいよ、残すは特殊能力。

 これによってアバターの能力が決まると言っても過言ではないだろう。

 何故ならば、他にパラメーターを弄る事が出来ない以上、この特殊能力がアバターの戦闘能力の大部分を占めるだろうということはネットゲーム初心者の真斗にも分かる。この能力の設定がアバターの優劣を決める最大の決め手に違いない、と。

 注意書きには、


 ・特殊能力は、能力名及び、その能力の説明、発動条件か制約をご入力ください。強い能力には厳しい発動条件や制約を設けてください。


 と書かれていた。やはり強すぎる能力はそれだけでゲームバランスを崩すことに繋がる、それを調整するための措置だろう。

 試しに真斗は適当な能力を空白へと打ち込む――が、《その能力は他の人が既に設定しています》とエラーが出てしまった。

「なるほど、人と被ってはいけないってことか……」

 そう呟く真斗が打ち込んだ能力はパイロキネシス。発火能力だ。

 やはりベタな能力はそれだけ人気が高いという事なのだろう。すでに他の者が設定してしまっていた。ちなみに発動条件は、『ライターをつける』。簡単な発動条件の方が良いと思ったのだが、被ってしまった。

 今度は発動条件を変えて、もう一度打ち込んだ。しかし、再度エラーが表示される。

 発動条件を変えてもダメという事は、能力が被っている時点でアウトという事かもしれない。それなら発動条件は関係ないのだろう。

 次に、説明の方を変えてみる。

 先程入力したのは『手から炎の玉を繰り出し攻撃する』だったが、今度は『自身の体に炎を纏わせ攻撃する(自身は熱くない)』とした。

「……お!」

 すると今度はエラーが、表示されなかった。

(――ってことは、重要なのは能力の中身。同じ発火能力でもその内容が違えばエラーが表示されないということは、かなり特殊能力の設定は自由度が高いな……)

 それから真斗は様々な能力を試してみたが、これがなかなか難しい。自由度が高いという事は、その人の想像力がモノを言う。

 アバターは一人につき一つ。個人情報を打ち込んでいる以上、替えは効かない。アカウントを作り直す事は出来ないのだ。中途半端な能力で妥協してしまうわけにはいかない。

(出来るだけ条件が緩く、強い能力にしないとな……)

 真斗は考えるがどうにも上手くいかない。それは、《強い能力には厳しい条件か制約を設けてください》という項目が邪魔をしたからだ。

 真斗にはこの基準がよく判らなかった。

 例えるなら極端だが『相手を睨んだだけで気絶させる』という能力は間違いなく強い能力だ。発動すればそれはもう勝利に等しい。

 次に条件の設定の際、これについては強い能力である『相手を睨んだだけで気絶させる』を設定している以上、厳しい条件を設定しなければならない。

 ここが問題で、厳しい条件を打ち込むと相手を倒すどころか自分の首を絞め、能力を発動する事も出来ずに負けてしまうこともあり得る。しかし、緩い条件にすると《もっと厳しい条件にしてください》とエラーが出る。このバランスが非常に難しい。

 うーん、と唸りながら真斗は部屋の中を見回し考えていると、部屋の隅にポツンと置かれた物を見つけた。それは古びたノートが溢れんばかりに入った段ボール箱だった。

 このノートには、真斗が小さい頃、毎日『誰か』に読んでもらうために書いていた物語が綴られていた。

 稚拙な文章。

 文法も知らない頃の幼少の自分が『誰か』を楽しませる為に書いていた物語。

 ただ楽しませるだけではなく、書いている自身も楽しんでいた。

 自分の頭の中に広がる情景を物語にする作業。それが、とてつもなく面白かった。

 今でも真斗が小説を書いているのは、この『誰か』の為に書いていた、物語を綴る作業が忘れられないからだろう。

 ただ、その『誰か』を真斗は覚えていないのである。どんな顔だったか、どんな声だったか、全く思い出すことが出来ない。このノートを『誰か』に書いていた記憶はあるというのに。

 『誰か』のことが記憶のパズルから抜け落ちていて、ピースが揃わない。昔のことを思い出そうとすると特にそれが起こる。まるで、虫に食われたみたいに。

(昔の事だから仕方ないけど、分からないってもどかしいよな……母さんに聞いてみたけど、小さい頃の俺はそのことを秘密にしていたらしいし)

 机から段ボールへと移動し埃を払う。

 真斗はノートに懐かしさを覚えながらページをめくり、数行読み始めると、

「……これならいけるかもしれないぞ!」

 真斗は何か閃いたのか、急いで立ち上がって椅子に座り直し、キーボードを叩き始めた。

やがて、それを打ち終わると真斗は満足気な表情を浮かべ登録完了と書かれた部分をクリックした。

 エラーが出る事は無く、画面には《登録が完了しました》と表示された。

 暫くすると『PA』にメールが届いた。


 対戦日時   一〇月一〇日 〇時〇〇分

 場所     明星高校グラウンド

 対戦相手   二年 白石 正美


 ※対戦には『PA』 及び、アバターに関連する必要なものがある場合は各自用意してください。


 真斗はそれを開き、見るとそこには対戦日と対戦相手、集合場所及び集合時間、それに注意事項が一文記されていた。

(明日の0時、場所は……俺の学校のグラウンド!?)

 真斗は驚いた。てっきりネットを介したゲームだと思い込んでいたのだが、メールに書かれていたのは集合場所、しかもそれは自分の学校だったのだ。

 本当にこれはゲームなのだろうか、真斗はここにきて疑念を抱いてしまった。

 そしてもう一つ、驚くべきことがそこには書かれていた。

(対戦相手……白石正美!?)

 学校内の生徒で行われる以上、対戦相手の中に知っている者がいてもおかしくはないが……よりによってあの、白石正美と戦うことになろうとは。

 しかし、これは好都合だった。初戦から顔見知りの相手となれば多少は気が楽になる。それに、正直あの男が真斗は嫌いだ。今の学校を選んだのは自由な校風を売りにしていたからだ(家から近いというのもあるが)。今の学校には少なからず不満がある。

 それに今日のこともある。あの男の理不尽な物言いには流石に許容できない者がある。秋葉が殴らなければ自分が殴っていたかもしれない。

 その嫌いな相手をルールに則り叩きのめすことが出来る。

(白石……!!)

 ぐっと拳を握り、意気込みを高めたところで時計を一瞥するとすでに十二時。

「ヤバイ! 宿題してねぇっ!」

 『裏生徒会』に夢中になっていた為に宿題のことを完全に頭の隅に置いていた。

 真斗は慌ててページを閉じ、宿題のファイルを開いて宿題に取り掛かろうとする。

が、明日のことを考えると頭の中が『裏生徒会』一色になってしまって、全くと言っていいほど、捗らなかった。


      ●


 秋葉は、湯船に浸かりながら今日の事を振り返る。

 三角座りのような姿勢で膝を抱え込み顎先ぐらいまで湯船に浸かっている。


 普段はあまり乗り気ではない生徒会の仕事の手伝い。入学してからあの生徒会長に声をかけられ、なし崩し的に手伝うようになった仕事が今日、初めてやっていて良かったと秋葉は思った。


 指先でお湯を弄ぶ。無意味な行為を秋葉は繰り返す。


 もう真斗と話す事は無いと、自分の中であの日誓った筈だった。しかし白石に言われ、見回りの際あの扉に立った瞬間、立ち尽くしてしまった。

 

 秋葉は掌を視線の先へ真っ直ぐ翳す。まるで扉を押すような動作にも見える。

 

 扉の向こうに彼がいると思う、と自然と体が扉の向こうを目指していた。

 駄目だと分かっていても、自分を自制しながら(真斗に不審に思われたかもしれない)も、時間を忘れて話し込んでしまった。

 その所為で白石と揉める羽目になったが、真斗がそれを庇ってくれた。

(――真斗君……)

 この感情が憎く思えてくる。まるで麻薬の様なものだ。駄目だと分かっていても気付いたら体が求めている。我慢すればするほど求める気持ちが強くなっていってしまう。

 明日もきっと、彼の元へ行くのだろう。自分の甘さが嫌になる。

 彼の顔を思い出し顔が赤くなる。それをごまかすように湯船に思い切り顔をつけた。

 バシャッという水しぶきの後、たっぷり五秒中空を眺める。

 少しは冷静さを取り戻せたのか、今日の真斗との会話の中で不審な点があったと思い直す。

 あの小説のことだ。彼は噂を元に書いたと言っていた。

 どうやら一週間前の裏生徒会選挙の対戦を誰かに見られてしまっていたらしい。おそらく、この前の野球部の上杉との対戦の時だろう。

 あの時に感じた誰かに見られているような感覚は、間違っていなかったのだ。

 本来なら選挙戦がある日は、『裏生徒会』に登録した者以外は校舎内に入れないはずなのにどういうことなのだろうか。

(まるで、噂を立てるために校舎のプロテクトが解かれていたかのよう……)

 そこまで考えて秋葉は止めた。見られてしまったのならばしょうがないと思い直す。

 それが噂になってしまったことには多少引け目があるが、問題はその噂で彼が――真斗が裏生徒会の存在を知ってしまうこと。

 真斗にだけは知られてはならない。あの日に誓ったことの一つだ。

(大丈夫……。私は一人でも……!)

 あの日の決意をもう一度確認し、秋葉は立ち上がった。

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