ゴーン平原商業ルート8
商隊は街道を進む、広い街道は楽でよい。
街道の周りは林や畑が広がっている、農村の風景が続く。
日差しは暖かく穏やかだ。
時たま牛の群れが街道を横切っていく、
ポチが近づいてきた牛と鼻面を付き合わせる。
親愛表して? いや味見かな、ぺろりと牛の顔をなめる。
ゴン! 牛がポチに頭突きをかませて逃げてゆく。
耳をパタパタさせて「ぐぅぅ」と泣いてやがる。
右手に石を積んだ低い壁が見える、壁の向こうは 豊穣の神 デメテル様の神域だよ。
大地に色々な穀物の種をまき恩寵を与える神様だ。
デメテル様は世界中をさ迷い歩き、恩寵を与え続けている。
農民たちはデメテル様に毎日祈りをささげる。
「ポーン」と音が一帯に響き渡る。
なんだ?周囲を確認する、商隊の者も皆、怪訝な顔つきで周囲を見渡す。
神域から「ポーン」「ポーン」「ポーン」「ポーン」「ポーン」連続した音が続く。
思わず、右手の空を見ると緑の玉が多数飛んでくる。
空が覆われるほどの勢いだ!
おおぉぉぉ、デメテル様が大地へ恩寵を送ってきている、これは大変だ。
農作業していた者、家に居た者も外に出て空を見上げている。
この世界の神様は現世に実在し、絶大な神威を見せる。
やがて緑の玉が大地に落ちてくる、
あちらこちらで玉がはじけ、一帯は緑色に霞む。
種だな。
声が聞こえる。
「兄ちゃん驚いたかね」
「こりゃなんだい?」
「ハハハハ、兄ちゃんはまーだ若いから見たことが無かったろうや。」
「おっさん、こりゃ何かの種だよね?」
「ああ、種だよ。 豊穣の神 デメテル様の大地への恩寵品さ。」
「何の種だい?」
「さぁー、なんだろうなぁ、デメテル様が撒く種は成長してみないとわからないよ。
あの女神さんは太古の昔から大地に新しい種を撒き続けているからなぁ。
樹木、穀物、薬草、雑草、魔草に全て女神さんが創作して世界に撒いているし。」
「そういゃあ、ガキのころ神殿の祭司様がデメテル様のありがたい恩寵だと言ってたなぁ。」
「わっはは、兄ちゃん素直だな。」
「なんだいおっさん?違うのかよ。」
「いや違わないけどよ、女神さんは大地の為に撒くんだよ、人の都合は考えていないよ。
ところかまわず撒くからね、町・畑かまわず生えたら困ってしまうだろう。
昔、それで町が無くなった事があるよ。」
「ああ、そりゃ迷惑だね。」
「ハハハ、女神さんに文句は言えないしな。早く種を掃っときな、頭の上に花が咲くぜ!」
まったくその通りだ、道端で農民が集まって呆然として周囲を見回していた。
何が生えてくるか不安だろうな。
神の気まぐれは人ではどうしようもない。
商隊は種で霞む中、都へと進む。