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偉大なる工匠6

 朝早く、皇帝がやってきた。

「おはよう、諸君、どうかね良く寝れたかね。」


「旦那、あのおっさんは頭がボケボケじゃないのか?」

花人が俺にささやく。

「お前もそう思うか、昨日から俺も思っていた、年齢とか時間はまったく頭に無いらしい。」

「旦那、あれは神の感覚に近いぞ、人ではないな。」


皇帝はひとしきり馬や馬車を見て、昔と大して変わっていないと感心している。

白と黒の霊獣となにやら話をしたり、竜を見て何処から来たなどと聞いていた。

俺の肩の花人には、年齢を聞いたりして「ああ、まだガキか。」などと言う、

「こら、花の神を敬え、俺様を敬え!」などと花人が怒っている。

朝飯を見て俺も喰うと言い、しっかり食べていた。


「陛下、そろそろ出発しましょう。」

重機屋が皇帝に行こうと声をかける。

「おお、そうであったな、博物館に行こうか。」


「皆、出発するぞ!」


博物館は我々の拠点から帝宮を間にして、反対側になる。

内郭をまわる街路をゆっくりと歩いていく。

巫女が陛下に聞いていた。

「陛下、贈られた品とはどの様な物ですか?」

「そうだな、工匠よ、おぬしは魔国の者だな、国のものからは何と言われた。」

魔族の爺さんが首を傾げる。

「は、国の役人からは、親切に遠い昔のことなので良く見て無理をするなと。」

「そうか? ところでわしが贈ったものの評判はどうかな?」

「どうかと言われましても、申し訳ありませんが、探しても残っておらず、

 役人によれば、混乱の時代に失われたのではないかと聞いておりますじゃ。」

「はっはっはっ、そうかそうか、失われたと言っておったか。」

「どのような物を贈られたので?」

皇帝は楽しそうに言う。

「海賊ギルドが魔大陸に行くので何か贈り物をと言うのでな、密告の鏡を贈った。」

「密告の鏡ですか?」

「鏡に悪魔が潜んでおってな、写ったものの真実をささやいてくれる鏡だ。

 さぞや喜んでくれたろうに、失われたとは残念だ。」


え、悪魔が潜んでいるって、そんな危険物を贈ったの?

周りを見ると、巫女は顔をしかめ、重機屋は微妙な顔つきだ。

爺さんは素直に、「すばらしい、真実の鏡ですか!」などと喜んでいるが。


「ふっふっ、工匠の国からの贈り物は、考えるとわしの贈ったものと相等しいかな。」


は?、皇帝の贈り物と等しい危険物だと?

大丈夫だろうか?

爺さん、国の役人が言う「遠い昔のことなので良く見て無理をするな」とは、

役人用語では「見るだけにしとけ」と言う意味ではあるまいか。

呪いの鏡の返礼に魔国は皇帝に何を贈ったんだろう?





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