ゴーン平原商業ルート4
空は夕焼けで赤く染め上がっている。
日中の暑さも和らぎ、心地よい風が吹いてくる。
平原をさすらう生き物たちが散見され、人生のすばらしさを実感する。
前を見れば果てしなく道が続く。
「...頭領」
「頭領.........、おい!!ガストン」
うぁぁああああ、危うく馬にしがみつく、ひゃぁあ驚いた。
いいっの間にかユリアンが横にいるぅぅうう。
後ろを見たら馬車の連中が顔をそらして肩を震わせてやがる。
ポチが耳をパタパタさせている。
「ガストン...、宿営場所に着いたよ、君は馬の上で寝ていたのかね。」
「ば、馬鹿いうな、宿営のこと、を考えていたのよ。」
「ふーん、それでは設営に入ろう。」
ユリアンの美人顔には皮肉めいた笑いが...........
えー 宿営だ、この街道には所どころポイントがある。
昔、街道を造った際に所どころ水場付近を通るようにしたのさ。
川や泉だな、中には造られたものさえあるのよ、人も馬も水が必要だよ。
ルートの宿営ポイントは必然に繰り返し使われている
水場に近くて、四方が見渡せられる街道横の広い平坦地がある。
先頭の馬車から順に輪を描くように馬車を止めてゆく。
中央は安全地帯だ、騎馬の団員は水場や周囲を警戒し見回っていく。
安全が確認されたら御者は馬をつれ水場に連れて行く。
残ったものは水を汲み、テントを張り食事の仕度に入る。
馬車を止めてつくった円の外側に矢を放ち矢の落ちた場所までが警戒範囲だ。
馬車から矢の落ちた場所の中間くらいの一定の距離に馬車を囲んで夜間の明かりを灯していく。
便利なものが昔からあるのさ、発光石といって発光しながら減っていく石がある。
熱くは無い光るだけの石なので枯れ草の上でも安全だし、雨でも消えない。
これは幻視の森に住む妖精族が商人に売っているもので、やつらの専売品だ。
食事は簡単な汁物と保存食で賄う、時たま狩をし肉を焼く。
夜間は商人達を馬車の輪の中に入れ、我々は外側で警戒する。
焚き火を絶やさないようにし、弓矢を抱え交代で寝るのさ。
この世界にも月はある。
平原の夜は月が無ければ暗闇に閉ざされる、発光石、焚き火の灯りだけだ。
夜は夜行性の獣だけが動き回る、古の神々もさ迷っているかな?
時たま声が聞こえるんだよ。
夜、人は動かない、平原を住処とする部族でさえ閉じこもる。
知っているかい? この世界の馬というのは、どこぞの世界のかわいい馬とは違う。
体はでかくって皮膚は硬く矢も通らない。
一見とろい感じだが恐ろしいんだよ。
気が小さく、何かに驚くと速い速い、重量1トンの岩が崖を転がっていく様だ。
俺の馬、ポチが丸まって寝ている、大きな石が転がっているようなもんだ。
馬は草を食べるが、雑食でもある、時たま近寄ってくる小動物が丸呑みされている。
ぱくって感じだな。
夜は、そんな馬を一噛みで黙らせる獣もいる。
矢の距離を警戒するのは俺たちの武器は主に弓だ、剣も持つがこれは念のためだ。
発光石の灯りで見えたものは有無を言わせず射倒す、矢には即効性の毒を塗る。
まあ、傭兵の矢を受けては無事にすむものは神以外いないはずだ。
たいがいの獣も灯りを警戒して近寄ってこないが、こないことを願う。
焚き火の周りで適当に世間話をしながら夜を過ごす。
酒を飲めないのはつらい、夜は決して酒は飲まない、自分の命がかかっている。
夜明け
地平線が明るくなる、宿営地も人が動く気配がする。