偉大なる工匠4
謁見の間の扉を開ける。
中は意外に明るい、天井は高く日の光を巧みに取り込み謁見の間全体に光が満ちている。
空虚な大広間、床は石造りだが塵を払えば光沢が光る。
奥に石を積み上げ高くしてあり、玉座が鎮座する。
奥の壁には巨大な神竜の浮き彫りがあり、赤く目が輝いている。
壁際には燭台をささげ持つ守護獣の石像が一定の間隔で立ち並ぶ。
ここは荒廃してはいない様子だ、床の埃には足跡も無い。
「すばらしい、この様なものを見れるとは、ああ、すばらしい!」
魔族の爺さんは大感激のようだ。
確かに凄い、大陸を支配した皇帝の勢威を俺たちに示している。
ここは財宝の山だな、財宝の山か?
「おい、薬剤師、これはまさか夢の神の神威ではあるまいな?」
「む、確かめましょう。」
懐から袋を取り出し、粉を撒く、紫の霞に包まれ眩暈がする。
感覚が戻り、再び周囲を見回し確認する。
「おう、変わらないな、これは現実か。」
巫女が声をかけてくる。
「ガストン、どうした?」
「皆、気をつけろ、おかしい荒らされた跡も無い。」
傭兵たちは思わず身構える。
「歓迎するぞ、客人たちよ。」
思わず声のほうを向く、玉座に人影が在った。
「あんたは誰だ?」
玉座の人影に目を凝らす、ローブを着た壮年の男がいた。
男は愉快そうに応える。
「私か、ここの主だな。」
巫女が問う。
「ここの主は古に滅び去ったはずだが?」
「巫女よ、私は現にここにおるぞ、かっては皇帝とも呼ばれておった。」
「あなたは帝国最後の皇帝リカルド陛下だと言うのか。」
「はて、私はそんな名前だったかな?
なにせ帝位に就いてから名前で呼ばれたことが無く、忘れてしまったよ。」
馬鹿な、古の時代の皇帝だと言うのか。
「そのような年齢の方とは思えん風貌だが?」
玉座の人は愉快そうに笑い。
「はっはっはっはっ、私は年を取らん、うろ覚えだが帝国を建国した際にはこの姿であったな。」
重機屋が驚愕したような表情で問う。
「あなたは初めて悪魔と出会い、人に魔術を伝えた始祖の大魔法師なのか!」
玉座の人はさらに愉快そうに笑い、応える。
「私が異界の神とであったのは確かだが、始祖とはなんだろうな。
まあ、弟子にも伝授したはず? ああ、もう昔のことで覚えておらんな。」
「建国の皇帝からは幾人か別の方が皇帝になられているが?」
玉座の人は首を傾げ、少し考えてから応える。
「ああ、そういえば暫く我が部屋で引きこもっておったら様子が変わっておったな?
その頃から主様と呼ばれた気がする。
なんだろうな? 陛下も主様も大して変わらんので気にしていなかったぞ。」
俺はあきれ果てて言う。
「あんた、それは大した違いだと思うんだが?」
玉座の人は不思議そうに言う。
「おお、そうなのかなぁ、違いがあるのか?」
巫女も魔族の爺さんも、皆、呆れはて、首をかしげている玉座の人を見ていた。




