ゴーンの都5
人は旅をする、理由はさまざまだ。
人生に疲れを感じ癒しを求める者、新たな発見を求めさまよう者、
名誉と栄光を求める勇者たち、などなど、いずれの理由も人々を旅にいざなう。
えー、傭兵団頭領 ガストン・テーダ だ、名前を名乗ったのは意味は無い。
もしかして、俺の名前を書き忘れていたということは無い。
疑うものは最初から見直すように。
皆も旅をするよね、旅に出る際には様々なものを準備する。
衣服、洗面用具、かみそり、化粧品、おやつ、地図、お守り、などなど
そして薬だ、忘れちやいけない物だ。
この世界でも医者はいるが少ない、旅の最中は自分でやらなければならない。
ということで薬を皆で買いに行く。
やって来たのは繁華街の裏通り、傭兵組合推奨店だ。
裏町の一角に店はある。
最近できたらしい、前回都に来たときには推奨店リストには無かった。
組合窓口の事務員さんに聞いたところ、良いものが安く買えて効能が確実とのことだ。
店の案内図をもらったが、注意書きがあった、何じゃこれ?
※注意書き
1.店では前を良く見て、左右を確認し安全を確認しましょう。
2.店の展示品にみだりに触らないようにしましょう、危険です。
3.店がすすめるサンプル品は効能を良く確かめてから使用しましょう。
むむむ...、はて? もう1度店を見る。
普通の薬店に見えるが。
看板は、花と緑の薬店 となっている。
こじんまりとした店だ。
おかしなところはないよね?
「さっさとはいるぞ。」
「おうおう、早く買ってしまおうぜ。」
店の入り口で買い物かごを持つて入る。
陳列棚が並んでおり結構広い、入り口付近にレジカウンターがある。
店内は明るく、案内板が浮かんでいる、普通だな。
店の描写にかなり矛盾点があるかと思う、皆考えるように。
「まずは傷薬からだな。」
「えー、コーナーはどこだ?」
「あそこだ!案内板がある。」
ん、はて、いつのまに?
並んでいる傷薬を見る、えーと。
傷薬はたくさん種類がある、人族用のものはと、これだ。
カゴに入れる。
「痛み止めも要るな。」
「どこだ?」
ふと上を見ると、
「案内板にあそこって表示されているぞ、矢印があるぞ。」
便利だな。
良い香りがするので横を見るよ化粧品コーナーがある。
何人か女性?の姿が見える、ここは女性用みたいだ。
店のポップを見ると、【幻惑の香りで男性をとりこに!】と、
香料が色々と展示されている。
何か頭がくらくらしてきた、さっさと行こう。
「しかし、ずいぶん広いな。」
「うむ、向こう側に霧がかかっている。」
「うわ!」
「どうした?」
「今、台車が猛スピードで横切って言ったぞ!」
「何か、黒っぽい者が押していたような気がする。」
「おう気をつけろ、注意書きにもあったろう。」
何やかやで必要なものをカゴに入れ終わった。
レジに向かう。
レジでは若くは無い女の子がてきぱきと客をさばいていた。
「ポイントカードはお持ちでしょうか?」
「いや、持っていないから。」
「すぐお作りしましょうか?」
もう一人レジに客がやってきた。
女の子はチラッと見て、2人に分裂して応対しに行く。
おう、器用だな。
俺たちはポイントカードをもらい、店を出た。
どうやらこの店は妖精族が経営しているようだな。
宿に帰って薬を整理していたら、サンプルがいつの間にか入っていた。
飲み薬のようだ、【これ1本で1週間眠気なし、旅のお供に是非どうぞ!】
「便利そうだな。」
「効能は?」
「危険な旅の最中眠る必要がありません、と書いてある。」
「......微妙だな。」
「こんど若い奴に試してみよう。」
「それは鬼畜の所業ではないか?」
薬の準備は終わった。
妖精族は常に新しい薬の開発に努力しているそうだ。
彼らはサンプルでは死なない、と保証している。
我々は嘘をつかないと言う。




