ゴーンの都2
「どうだ?」
「ん... 難しいな。」
「おいおい、これはなんだ?」
「ふっふっふっ、俺に任しとけば間違いない!」
「前回はこれで通ったのだが?」
「今度の奴は頭が固い。」
「じゃー抹殺するか?」
「あ、やめろ真っ当な傭兵のすることじゃない!」
真夜中、5人の男たちが顔を寄せて密談している。
机の上には書類が散らかっている。
ランプの灯が怪しく踊る。
「むぅー、仕方が無い出たとこ勝負になるな?」
「よし、じゃーいいな。」
「へまは許さんぞ!」
「もう遅い、寝よう。」
都の朝は早い、日の出とともに活気づいてくる。
冷たい井戸水で顔を洗い、身支度を整え、宿屋での朝食を落ち着いて取る。
あ~頭痛い、今日は傭兵団頭領としてなすべきことをせねば。
「さぁ行くぞ!」
頭領の俺、副頭領のユリアン、小頭3名の5人だ。
小頭3人は見るから剣呑な顔つきだ。
もちろん完全武装だ、鎧兜を身につけ剣を帯びる。
弓矢も持つ。
街中をゆっくり5人で歩く、周囲の人間は俺たちを恐ろしげに見る。
すれ違う者はあわてて離れる。
商人街交易広場が近づく、倉の列を過ぎ商人組合の建物が見える。
俺たちは今日は横の建物に用がある。
建物の前に立ち、呼吸を整え入り口をくぐる。
俺たちの入った建物には古びた看板が掛かっている。
看板にはこう表示されている。
「王国行政府国税局交易広場出張所」
建物の中に入ると静かな雰囲気だ、瘴気が漂っている、
カウンターの内側には、笑みを浮かべた役人が商人たちを応対している。
商人たちの顔色は心持青い。
傭兵徴税と表示された部屋に行く。
奥まった見えにくい場所にその部屋はあり、周りから隔絶されている。
扉を開け中に入る。
窓を背に机に座っている役人がいる、窓から日が差し込んでいて顔が影で見にくい。
左右にも役人がたむろしている。
机の横には抜き身の大剣を立てかけている。
壁沿いに槍や斧が見える。
低い声がかかる「何の用だ。」
ユリアンが答える。
「徴税官殿、税の申告に参りました。」
「座れ、後ろの奴らは何だ。」
「団の幹部もご挨拶にと同行しております。」
「そうか、俺は新任の徴税官のブルーノだ。
前は王国辺境軍討伐部隊百人隊長をしていた。
この部屋にいるのは俺が連れてきた部下だ、遠慮はいらんぞ。」
げっ、辺境軍討伐部隊といったら軍の中でも精鋭部隊じゃないか!
今までは都駐留近衛軍の青二才が座るポストだったはずだ。
当てが外れた、これじゃ脅しは聞かんか。
「書類を出せ。」
「はっ、お手数をおかけします。」
ユリアンが書類を出して説明を始める。
「ふむふむ」
「なんだこれは?」
「契約書をだせ。」
「この経費はなんだ?」
「交際費は認めないぞ。」
「人数は何名だ。」
ユリアンの顔が青ざめてくる。
窓のから見える風景は部屋の中とは別世界だ、日がだんだん落ちてくる。
途中、茶も出された、器を差し出す相手がごつい。
夕方、俺たちは解放された、皆の目がうつろだ。
疲れた。
税金の申告は疲れるよね。




