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無能王女と最強勇者伯~やめろ私は玉座に興味ない~  作者: たけすぃ


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私だって友達が欲しい2

 *


 学園に入学して一週間、新入生向けの基本的な説明などが終わって本格的な授業が始まりだして、俺はある疑問を持っていた。

 俺が学園に入学した目的は、無能と呼ばれているメフティア王女の友達になる事だ。


 貴族の社交界に疎い俺が、無能だと知っているぐらいに無能な王女なので、友達なんていないだろうと思っていた。

 案の定、俺のその予想は当たっており、彼女の周りには誰もいなかった。


 王位継承権第三位なので派閥の取り巻き程度はいるのかもと思っていたが、それすらいない。友達になる機会を逃さない為に、〝四六時中〟彼女のそばにいた俺が見ていないのだから、メフティアは本当に学園ではボッチなのだろう。


「なあメフティア」


 俺は学園の食堂で目の前に座るメフティアに声をかけた。

 ちまちまと皿の上の魚だかを細かく切っては口に入れていたメフティアが視線を上げて俺を見る。


 卵型の顔に銀糸のような髪、ルビーのような赤い瞳は、俺の曽祖父にデッカイ借りを作った王家の特徴そのものだ。

 愛嬌がある、とも言えるのだろうが、その顔は実にノホホンとしており、緊張感は感じられない。お前そんなんだと強い魔物に突然襲いかかられた時に苦労するぞ?


「お前って友達いないのか?」


 俺は入学してからずっと抱えていた疑問を遂に投げた。

 一瞬の間が空いて、カランと音が鳴る。


 メフティアが持っていたナイフとフォークを皿に落とした音だった。

 目を見開いたメフティアが震えている。


 ハムスターみたいな奴だな。震える両手で自分の顔が今どんな顔をしているのか、確かめるように撫でるメフティアを見て思う。


「いったいだ……」


 自分の表情筋を確認しおえたメフティアが、震える声を漏らしグッと言葉を飲み込むような顔をして首を横に振った。

 たぶん俺の厳しい指摘に王女として言ってはいけない言葉を吐きそうになったのだろう。


「なぜそう思うんです?」


 気を取り直したのか、質問を質問で返してきたメフティアに、事実を指摘してやる。

 こういうのは変に気を遣って言葉を着飾るから余計に相手を傷つけるのだ。


「だってずっと一人じゃないか。王女って普通は派閥の取り巻きとかがいるもんなんだろ? それすらいないって事はそういう事なのかと」


 メフティアが片手で口を隠す。コイツの変な癖の一つで、溜息を吐く時に口元を隠すのだ。溜息程度、好きに吐けば良いと思うのだが変な奴である。

 メフティアが素知らぬ顔で、落としたナイフとフォークをそっとそれらしい位置に戻す。


「えっとですね?」


 メフティアがどう説明したものかと悩む顔を一瞬だけ見せる。

 自分の感情を隠そうとする貴族仕草は、俺にとっては鼻につく物だが、彼らにしてみれば俺が明け透けで馬鹿に見えるのだろう。


 みんな素直に生きれば良いのにって思う。


「私にも派閥はありますし。この学園にも派閥の子息はかよっています。もちろん同学年にもいますね」


 なるほど? つまりは何かしらの理由があって自分は一人だと言いたいわけだな?

 しかし理由が分からん。


 派閥の連携というのは大事なものじゃないのだろうか?

 基本的に一人行動の我が家はともかくとして、貴族にとって派閥とは大事な物であったはずだ。数は何事においても重要だ。


 俺も山を吹き飛ばせる一体の魔物よりも、地平線まで埋め尽くす弱い魔物の群れの方が厄介に感じる。アレはマジで大変だった。全部駆除するのに丸二日もかかった。


「つまり数は力って事だな」


 メフティアが首を傾げる。

 なんだ? 俺は何かを間違えたか? そういう話ではなかったか?


「えーっと、そうですね。数は力です」


 何か言いたげな顔をしたメフティアは、なぜか諦めたような顔をして話を続ける。


「数は力、確かにそうですが……。それは逆を言えば、数を揃えなければ力を持たない者の群れとも言い換える事が出来ます」


「なるほど?」


 確かにそうとも言える。俺の曽祖父のように圧倒的な個の力で全てを凌駕できるのなら群れる必要はない。

 まあ実際には、曽祖父にとって最も必要だったのはその群れの存在だったわけだが。


「そんな弱者の群れとも言い換える事が出来るところに、圧倒的な個を放り込めばどうなるでしょうか?」


 メフティアが何かを期待するような視線を俺に向けてくる。

 これは……なんだろうか?


 俺は曽祖父から続く借りを返す為に、王女と友達にならなければならない。

 その王女からの〝期待〟を込められた視線を投げられているのだ。

ここはちゃんと応えなければならない。


 そして、ありがたい事に俺はこの答えを知っている。なんせ俺の曽祖父は勇者だ。

 まさにその弱者の群れの中にいた、圧倒的な個なのだから。


「みんな安心するだろうな!」


「あーそうなるかー。ですよねー」


 メフティアが天井を仰ぎ見る。

 もしかして期待にそえる答えじゃなかったのだろうか?


「いえ、これは私が悪かったですね」


 答えを間違えたかもと、若干、若干だぞ? 不安になった俺を真面目な顔をしたメフティアが見つめてくる。


「勇者伯その一族に対して、まるで試すかのような質問でした。貴方がたは初代勇者様よりずっとそうであったというのに」


 今の質問は忘れてください。

 静かな、だけど真摯さを感じさせるメフティアの声。


 貴族らしい声と思うのだが、それと同時にそこらの貴族連中の言葉とも違う物を感じる。

 俺はそれに妙な安心感を感じてしまう。


 もしかしたら、これが王家の貫禄という物なのかもしれない。


「それはそれとしてですね」


 真剣な顔をしていたメフティアが、分かり易く怒った顔をする。


「ショウ君にも友達いませんよね!?」


 おい馬鹿やめろよ傷つくだろ。

 俺は急に食堂の天井画を眺めたくなった。


今日から二日に一度の更新になります。

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