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無能王女と最強勇者伯~無能王女は無能が無能らしく生きていける平和な世界が欲しい~  作者: たけすぃ


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得難き、そして堪え難き4

 *


 先輩方を空中浮遊の魔法を応用してまとめて浮かしながら、俺は大議場の扉を蹴破って外に出た。これも後で弁償だろうか?

 大議場の前は営庭だ。先に脱出した生徒達が、騒ぎを聞きつけて出てきた教師に〝うわヤバい僕ら死にそうなんです〟を説明しているのが見える。


「ケミカ先輩、ここでおろします。後は自分でお願いします」


「はい! メフティア様を! あ! また今度さっきの魔法で私を飛ばしてください!」


 ケミカ先輩の言葉に他の先輩方も俺も私もと手を上げるのに、分かりましたと短く返事して振り返る。

 そしたら大議場の屋根が吹き飛んだ。大量の瓦礫が宙を舞う。


 できる事をしなかったらメフティアに嫌われそう。

 それは嫌だな、とか考えながら辺り一面に降り注ごうとしている瓦礫やらを、片っ端から魔法で粉砕していく。


 ご先祖様ノートに記載されている、『細かい敵が沢山いる時に凄い便利魔法』だ。

 何かカッコいい読み方(ルビ)が振られていたと思うが覚えていない。


「なんだこの魔物?」


 大議場の屋根を突き破って現れた魔物の姿に思わず声が漏れる。

 学園校舎の二階ぐらいの大きさの、デカい鶏――の胴体にカエルの顔が付いており、背中には何だあれ? 木? 木だよなアレ? あー顔がついてる鬼面樹かアレ――、が生えている。


 一つ一つは見覚えのある魔物だが、それが全部一つにかたまっている。


「魔道具をあんな風に動作させると、魔物が合体されて召喚されるんですね」


 ケミカ先輩が感心しているが、この人マジで凄い人だな。

 魔物を合体させるとか、たぶん魔王でもやった事がないぞ。


 鶏にカエルと木の魔物がくっ付いた……なんて呼べば良いんだこの魔物? が鶏の翼をバッサバッサさせながら営庭に着地する。

 事ここに至って、何が起きたのかを把握した教師たちが慌てて避難誘導を開始する。


 営庭から逃げ出す人々から上がる、悲鳴やら怒号の中から聞き覚えのある声が俺の名前を呼んでいる。どこだ?


「凄い所にいるなメフティア」


 鬼面樹の枝に巻き付かれたメフティアが、……そうだ融合魔物って言おう、の背中でプランプランしてる。


「ショウ君! 助けてください! あばばばば! 木の枝! 木の枝痛ったい!」


 割と元気そうでよかった。

 鬼面樹の枝に巻き付かれながら、「王家が宮中闘争の中で作った至宝! 防御用魔道具下着の力があれば!」とか叫んでいるので、元気ではあるが冷静ではなさそうだ。


 ついでに言うとラドラリー先生もメフティアの隣で枝に巻き付かれ、気絶しながらプランプランしている。


「あー召喚主の命令受付も上手く働いてないみたいですね。火喰鶏と巨毒蛙は殺そうとしていて、鬼面樹は捕まえるって命令を実行しているみたいです」


「魔物に命令まで出来るのか、凄いな先輩」


 あれ?


「じゃあなんで召喚主のラドラリー先生まで捕まってるんだ?」


「魔物に複雑な命令なんて理解できるわけないじゃないですか勇者様」


「あーつまり無差別か」


 だから召喚主のラドラリー先生も捕まっており、そして捕まえるを優先している鬼面樹のおかげで二人は死んでいない。


「ありがとう先輩。さっさと倒さないとマズいってのが分かったよ」


 今はメフティアとラドラリー先生に夢中だが、いつ他の人間に向かっていくか分からない。


「ショウ君! 何をしてるんですか! 早く! 早く助けてください!」


 鶏の嘴と、胸に生えた蛙からの長い舌に狙われているメフティアが悲鳴を上げる。

 俺は先輩方に避難するよう伝えると、ギャーギャーと悲鳴を上げ続けるメフティアに声をかける。


「今から助けてやるから動くなよ!」


 体を振った勢いで蛙の舌とか鶏の嘴を器用に避けているメフティア。

 見てる分には結構笑えるんだが、本人からするとたまったもんじゃないだろ。


 王家の至宝とかいう防御用魔道具下着なる物も、いつまで保つか分からないしな。


「早くしてください! 下着がギチギチ言ってます!」


 女性用下着ってギチギチ言う物なんだ。

 世の中には知らない事も多いなと思いながら、俺は収納魔法に手を突っ込む。


 えーっと確かこの辺に……あーそう言えば入学前に倒した竜の死体を入れっぱなしだったわ。討伐の証拠に牙はもう提出したから今度処分しておこう。


「っとあったあった」


 俺は初代勇者が使っていた剣、『ただの一振り』を取り出す。

 ちなみに名前がちょっとアレだが、名付け親は大恩人である初代国王様であるヴァン国王なので、我が家では剣の名前ちょっとダサいよね、は禁句だ。


 空間から引き抜いた剣身は薄青い半透明だ。剣全体に炎のような模様が浮かんでいるので、ご先祖様ノートでは『ただの一振り』に氷炎剣とルビが振られていた。

 悲鳴を上げていたはずのメフティアが、一瞬だけ静かになるとクソデカい声で叫んだ。


「聖剣じゃないですか! 馬鹿なんですか! こんな所でそれを使う気ですか!? それ初代勇者様が山とか海を割った奴ですよね!?」


 あーそうそう、聖剣って呼び方もあったな。


「大丈夫だ! 安心してくれ、ちゃんと加減できるから!」


 俺は頭上で必死に融合魔物からの攻撃を避け続けているメフティアに向けて聖剣を振って見せてやる。

 アイツのあの頑張りのおかげで融合魔物による被害は大議場のみだ。


 なんだかんだ言ってアイツも王族だなぁと思う。身のこなしにはちゃんと努力の跡が見て取れる。

 でなければ俺もこんなにゆっくりしていられなかった。


 なんだよーアイツもちゃんと王族じゃねーか。なんか、意味もなく嬉しい。


「加減!? 貴方の加減ですか!? まだチワワが竜を倒したと言われた方が信じられますよ!?」


 酷い言われようだ。よし、ここは一つメフティアに俺の良い所を見せてやろう。

 俺がちゃんと加減して魔物を倒せば、メフティア《《も》》俺を友達と思うようになるかもしれない。むしろならない方がおかしい。


「俺を信じろメフティア!」


「無理!」


 お前、即答で無理はねーだろ無理は。よし見てろよ。

 俺は剣を上段に構える。いわゆる剣の握り手を顔の横にくるように構えるってやつだ。


 融合魔物は頭という大事な部位が見事に縦に並んでいるので、そのまま盾に真っ二つにしてやれば問題ないはずだ。

 しかも相手はメフティアに夢中でこっちを見ていない。


 これでは失敗する方が難しい。

 よーし、良い所見せるぞぉ!


 俺は聖剣を振り下ろした。


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