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無能王女と最強勇者伯~無能王女は無能が無能らしく生きていける平和な世界が欲しい~  作者: たけすぃ


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得難き、そして堪え難き2

 *


 自分がぶっ壊してしまった食堂の窓ガラス。

 その修理工事を眺めながらメフティアと昼食をとった俺は、特別授業なる物に参加するべくクラスメート達と一緒に大議場に集まっていた。


 大議場に来たのは入学祝賀の時以来だ。

 前回は招待客もいたりと、狭苦しいイメージだったが、一年生しかいない今は随分と広く感じる。


 大議場にずらっと整列させられた生徒の頭を眺めながら、ぼんやりとそんな事を考える。

 ちなみに特別授業とは、学園の先輩がたでケミカ先輩のように独自の研究をしている人間の発表を見る、という授業だ。


 この先、お前らの中でこういうのがしたい奴は努力しろよ、という事であり。

 そして、研究を頑張っている先輩方の発表の場でもあるのだそうだ。


 当然授業にはケミカ先輩も出るらしい。この前、嬉しそうに教えてくれた。

 発表内容は魔道具に関してらしい。


 まさか魔物召喚の魔道具じゃないですよね? とメフティアが顔を青くして確かめていたのが面白かった。

 そんなワケないだろと思いつつも、今も隣に立っているメフティアは若干心配そうな顔をしている。気持ちは分かる、何というかケミカ先輩ならやりかねない雰囲気がある。


 そして相変わらず俺達の周辺に人は近づいてこない。俺とメフティアを中心に人間三人分ぐらいの空間が出来ている。

 実を言うと密かに俺が満足している事の一つだ。


 自分でも呆れるのだが、メフティアが人から畏怖の感情を向けられる事に俺は満足している。

 誰からも無能だとあなどられていたメフティアはもういない。


 無能だからきっと友達が少ないはずだ、という理由で近づいた俺が言うのも変なのだが、彼女が人から侮られていると思うと、最近ではイラっとくる。

 メフティアと知り合って間もない俺だが、その短い期間でも分かるぐらいにメフティアは真面目で努力家だ。


 それにメフティアは――。


「ああ、そうか」


 俺は思わず呟いていた。メフティアが不思議そうな顔をして俺を見てくる。

 自然彼女の瞳を覗き込むように見つめてしまう。


 俺はなぜメフティアが人から侮られるとイラっとするのか気が付いた。

メフティアは他人に嫉妬しないのだ。

 人から無能と思われ、本人も自信が無さそうな顔してるのに、他人の才能に嫉妬しない。


 それどころかケミカ先輩のような天才を見て、派閥に捕らわれる事無く自由に動けるような身でいて欲しいと、助けようとする。

 それは思った以上に才能の世界だ。


 人を羨む気持ちは、簡単に嫉妬に変わる。

 そうでなくても、悪意なく相手の失敗を願い、悲劇を因果応報だと笑う人間は想像以上に多い。


 メフティアのように、相手の才能含めて、ありのまま受け入れられる人間は稀なのだ。

 ……あれ? コイツって凄い奴なんじゃ?


 俺は気が付いた。

 なんてこった、凄い、コイツたぶん凄い奴だぞ。俺が内心でビックリしながらメフティアの顔を眺めていると、なぜかメフティアがアタフタしだす。


 手で髪を撫でると、次に制服の襟やら裾を直したり、最終的には〝顔の形〟を確かめるように顔を撫でていた。

 挙動不審で面白い。


 メフティアがチワワみたいな顔をする。


「あの……何か変ですか? まさかと思いますが昼食のソースとか口に付いてます?」


 うんうん、実にメフティアだなぁ。


「いや違う。単にお前って凄い奴だったんだなぁって」


「え? 怖い」


 可哀想に、人から褒められると怖いと感じるだなんて。

 俺はメフティアの人生を思って悲しくなった。


 俺だって王国の雑用をこなせば多少は褒められるのに、哀れすぎるぞメフティア。


「怖い怖い、急に涙ぐむのやめてもらえますか?」


「良いんだメフティア」


「何も良くないですが?」


 素直に喜んでも良いんだぜ? と伝えたかったが言葉が足りなさ過ぎた。

 俺が言い直す前に、メフティアの溜息で言葉が遮られる。


「まったく貴方は本当に……何というか自由で」


 メフティアが苦笑に近い笑みを浮かべた所で言葉を飲み込んだ。

 演台に教師が立ったからだ。


 俺達と同じように雑談していた生徒達が一斉に静かになる。

 メフティアが俺に前に向くようにと、演台の方を指さし、俺は演台に立つラドラリー先生の姿を見て困っていた。


 どうしよう……、ラドラリー先生からここ最近感じていた怪しい魔力を感じる。

 落ち着け俺。前回、前々回と即行動した結果、俺はメフティアに怒られたではないか。


 しかも今回は先輩方の研究結果発表である。

 事前の説明では、ケミカ先輩の他にも魔道具に関する発表をする人がいるらしい。


 そうであれば魔力がなんか動いてるのも、それ絡みかもしれないのだ。

 いや、でもこれすっごいあやしい動きなんだよなぁ。


 演台ではラドラリー先生が何事かを語っているが、魔力が気になりすぎて耳に入らない。


「あの……何かおかしくないですか?」


 どうする? 突撃するか? 行くか? 行っていいのか?

 いやしかし、ラドラリー先生に突撃していいのか? またメフティアに迷惑をかけるかもしれない。


「ショウ君?」


 おっとまずい、メフティアの声まで聞き流してた。

 友達になろうとしている人間の声まで聞き流すのは駄目だろ俺。


「すまん、何だメフティア」


 メフティアが周囲を気にするように顔を近づけ小声で囁く。


「ラドラリー先生の様子がおかしくないですか?」


 良かった、メフティアも気が付いていたのか。


「俺もそう思う」


「なんだかお顔も赤いですし」


「昔、魔王の遺体を使って呪いの爆弾? みたいなのを作ろうとしてた奴もあんな顔してたよ」


 十三歳ぐらいだったかな?

 王様から頼まれて爆弾を回収しにいった時の事を思い出す。


「何ですその話? そんな事があったなんて初耳なんですが、不吉な事を言わないでください。それに話されている内容も授業とは関係のない歴史の話ですし」


「あの手の連中は良くそういう話をするぞ。今からやらかす事の正当性を歴史に求めるんだよ、なぜか」


 まあそれを言い出したら王家も一緒か。過去の借りを返せと毎度のように雑用を押し付けてくる。

 メフティアの顔がペタ―ンとした無表情になっている。


「ちなみにですが、ラドラリー先生がやらかすとして、何を、ですか?」


 メフティアは面白い奴だなぁ。気が付いているから「おかしくないですか?」って訊いてきたくせに。


「分かってるくせに、そういう所はちゃんと王族だな」


 王国から雑用を押し付けられまくっている俺だが、その中でも何度かこれは本当にヤバいっていう案件があった。

 最悪は親父に頼るか、と思うような案件だ。しかもそういう案件ほど、王様から頼まれる頃にはのっぴきらない状態である事が殆どだった。


 にもかかわらず、そういう時ほど王様は落ち着いていた。

 危機を前に泰然としている、というのは王の資質なのかもしれない。


「たぶんここで使うつもりだな、魔物召喚の魔道具を」


 この距離で、今にもって状態なら流石に間違わない。

 魔道具と言っても、本質は魔法だ。手順が違うだけの魔法と言い換えても良い。


 魔力の動きでおおよそ何の魔法かは分かる。


「今度はちゃんと突撃は我慢したぞ?」


「くぁ」


 メフティアが奇妙な鳴き声を上げる。

 もしかしたら俺の我慢強さに感動したのかもしれない。


「お、使うみたいだな」


 演台のラドラリー先生が「正当なる王者に王権を!」と叫んだ。

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