第5話:聖なるクリスマスツリーは、幸せを運ぶ
それから数年が過ぎた。
ユウイチの木は、教会の庭に、堂々と立ち続けている。
クラウスは、フィーナの養父となり、孤児たちの生活を全面的に支援するようになった。彼は、ユウイチの木のおかげで、再び人生の喜びと意味を見つけたのだ。
ユウイチの木は、帝都の子供たちにとって、「願いを叶える聖なる木」として、伝説的な存在となっていた。特に、フィーナが毎年作って飾る、手作りのオーナメントが、木の魔力を高めると信じられていた。
ユウイチの木は、聖夜祭の時期だけでなく、一年を通して、微かな暖かな光を放ち続けた。それは、教会の庭を暖め、周囲を平和な空気で満たした。
ある冬の日。成長したフィーナが、ユウイチの木に抱きついていた。
「ねぇ、聖夜の木。私、クラウス様みたいに、困っている人を助ける立派な商人になりたいの。そして、この教会の屋根を、雨が漏らないように直してあげたい」
フィーナが語る夢は、自己満足ではない、他者のための具体的な願いだった。
ユウイチは、彼女の「願いの魔力」を全身で受け止めながら、心の中で「ああ、立派になったな」と、父親のような眼差しで彼女を見つめた。
数年後、フィーナはクラウスの商会で見習いとして働き始め、教会の屋根を、自分の給料で直した。
フィーナが夢を叶えるたび、ユウイチの木の光は、祝福するように強くなった。
ユウイチは、動けないまま、話せないまま、ただそこに立つだけで、誰かの人生を照らし、喜びと感謝の魔力を得るという、最高の生き方を見つけた。
前世でモテなかったユウイチは、異世界の聖夜の木として、無数の子供たちの愛と希望を一身に集める「最も愛される存在」となったのだ。
ある聖夜の夜。フィーナとクラウス、そして孤児たちが、ユウイチの木の周りで歌い、笑っている。
ユウイチは、その幸福の光景の中で、静かに思った。
(俺のクリスマス、最高じゃん)
木の幹の中で、モテなかった男の魂は、永遠に満たされ続けた。




