第4話:最強の盾と永遠の常緑樹
クラウスは、チンピラたちを一瞬で取り押さえさせた。
「この木は、私の所有物だ。許可なく触れることは、帝国の法律に違反する」
クラウスは、ユウイチの木を買い取ったのは、ただフィーナたちのために使うためだったが、法律上は彼の私有物だ。
フィーナはクラウスに駆け寄り、泣きながらユウイチの木を守ってくれたことに感謝した。
「クラウス様、ありがとうございます!この木がなかったら、みんなの希望がなくなっちゃいます!」
クラウスは、ユウイチの木を見つめた。売れない売れ残りだったはずの木が、今やこの貧民街の子供たちにとって、なくてはならない「希望の象徴」になっている。
「そうか。この木は、単なる木ではないようだ」
クラウスは、長年の悲しみから聖夜祭を嫌っていたが、フィーナとユウイチの木がもたらす純粋な幸福と、それを守りたいという自分の気持ちに気づいた。
彼は、その場で騎士団に命じた。
「この木を、教会の庭に正式に植え直す。そして、私がこの木の永代管理者となる。誰もこの木に指一本触れることは許さん」
***
数日後、ユウイチの木は、根を痛めないように慎重に掘り起こされ、教会の庭の最も日当たりの良い場所に植え直された。
ユウイチは、この土地で、この子たちに囲まれて生きていくのだと、心に決めた。
(俺は、モテない男として死んだ。でも、聖夜の木としては、モテているのかもしれないな)
この考えに至った瞬間、ユウイチは、前世の自分の未練やコンプレックスを、完全に手放した。
その時、ユウイチの木全体から、これまでにないほど強烈な、柔らかな光が放たれた。それは、周囲の氷を溶かし、雪を払い、暖かな空気を生み出すほどの、強い魔力(感情)だった。
その光は、ユウイチの木の細胞を、根源から変質させた。
本来、モミの木は、冬の間に一部の葉を落とす。しかし、ユウイチの木は、その強い魔力によって、一年中、緑を保ち続ける、永遠の常緑樹へと生まれ変わったのだ。
「わぁ、木が光っているわ!」
「熱くないのに、暖かいよ!」
フィーナたちは奇跡だと歓声を上げた。
ユウイチは、全身に光を浴びながら、感じた。
(ああ、これで、ずっとここにいられる。ずっと、この子たちを見守っていられる)
動けなくても、話せなくても、ユウイチは、今、最も満たされた存在だった。




