《スカイツリーダンジョン編:第三層 ― 深層境界/生き残るための選択》
第三層に初めて踏み込んでから、三日が経った。
毎日入るわけではない。
一日潜って、必ず地上に戻る。
それが、第三層で生き残るための最低条件だと、全員が理解し始めていた。
■ 情報の整理
管理課の休憩スペースで、簡易資料と自分たちの記録を突き合わせる。
「第三層は、魔獣の強さより“消耗”が問題ですね」
後衛が、はっきり言った。
「戦闘自体は勝てる。
でも、続かない」
弓使いも同意する。
SPの減少。
集中力の摩耗。
判断ミスが、即命取りになる環境。
「……だから、拠点化が必要だ」
俺の言葉に、全員が顔を上げた。
■ 拠点化という発想
第三層に長時間留まるのは無謀だ。
だが、“短時間で戻る前提”なら話は変わる。
「安全な休憩ポイントを決める」
「戦闘は、一日二戦まで」
「スキルは、必要な場面だけ使う」
ルールを作る。
それだけで、生存率は跳ね上がる。
(……強さより、継続)
第三層は、そういう場所だ。
■ 新しい魔獣との遭遇
四日目の探索で、また別の魔獣に遭遇した。
《境界獣・スケイルワーム》
地面を這う、鱗だらけの巨大な虫。
突進力が異常に高い。
「真正面は危険!」
弓使いの声。
俺は、一歩前に出るが――
《絶対防衛》は、まだ使わない。
(……ここは、受け流す)
盾を構え、角度をつける。
衝突の瞬間、
体が大きく弾かれた。
痛みが走る。
だが、致命傷ではない。
「今!」
その隙を突いて、
剣士と魔法が畳みかける。
スケイルワームは、短時間で沈んだ。
■ 判断の価値
勝った。
だが、俺はすぐに手を上げた。
「撤退する」
「え、もう?」
「SPが削られすぎてる」
全員が、即座に納得した。
第三層では、
勝った後に撤退できるかどうかが重要だ。
無理をしない。
深追いしない。
それが、命を守る。
■ 地上での評価
管理課での買取処理中、
職員が少し驚いた顔をした。
「第三層で、このペースは……かなり慎重ですね」
「生き残る方を選んでます」
そう答えると、職員は小さく笑った。
「正しい判断です。
第三層で脱落する探索者の多くは、
“勝てるから進む”んですよ」
胸に、重く残る言葉だった。
■ 守戦士の役割の変化
宿に戻り、装備を整えながら考える。
第二層までは、
“前に立って受ける”ことが全てだった。
だが、第三層では違う。
受けない判断。
引く判断。
仲間を守るために、戦わない判断。
(……守戦士ってのは、盾だけじゃないな)
生き残るための判断役。
それも、前衛の仕事だ。
■ 次への布石
数日後、管理課から小さな情報が届いた。
「第三層内部で、
長期滞在可能な特殊エリアが確認されています」
全員が、息を呑む。
「ただし、条件付きです」
条件。
この言葉が、嫌に重い。
(……来るな)
第三層は、
さらに一段階、難易度を上げてくる。
だが――
今の俺たちなら、
準備して、選んで、進める。
守戦士として、
前に立つ覚悟は、もう揺るがない。
今回は第三層への「定着」を描きました。力押しではなく、判断と撤退を重視する段階に入り、主人公の役割も“盾役”から“生存判断の要”へと変化しています。




