《スカイツリーダンジョン編:第三層 ― 深層境界/新ルールの洗礼》
第三層のゲートをくぐった瞬間、空気が変わった。
視界が暗転するわけでも、派手な演出があるわけでもない。
ただ――はっきりと分かる。
(……ここは、今までと違う)
呼吸が、わずかに重い。
魔力の密度が、第二層とは比べものにならない。
地形は岩と巨大な根が絡み合ったような迷路状。
天井は高く、どこか洞窟にも似ているが、壁面には人工物のような直線も混じっている。
「自然と人工が……混ざってる?」
後衛が小さく呟く。
「第三層は“境界層”って言われてるらしい」
剣士が、管理課でもらった簡易資料を思い出す。
「下層と中層、その境目だ」
つまり――
敵も、ルールも、中途半端ではない。
■ 早すぎる異変
進み始めて、十分も経たないうちに違和感が来た。
(……減り、早くないか?)
SPだ。
《絶対防衛》の消費が、いつもより重い。
第三層では、
環境そのものがSPを圧迫する。
それを、体が理解し始めていた。
「ちょっと止まる」
俺は手を上げ、全員を止める。
「SP管理、今までと同じ感覚だと危険だ」
「……やっぱり」
弓使いも、表情を引き締めた。
魔力濃度が高い。
その分、スキルの効率が落ちる。
力押しは、通用しない。
■ 第三層の魔獣
気配が、複数。
「来るぞ……!」
岩陰から現れたのは、
獣とも植物ともつかない魔獣だった。
体表は苔と鱗が混じり、
動きは遅いが、明らかに重い。
《境界獣・グロウルート》
「……硬そうだな」
剣士が呟いた瞬間、
魔獣が地面に前脚を叩きつけた。
根が、地面から突き出す。
「範囲拘束!」
後衛の警告と同時に、
俺は前に出た。
《挑発》――発動。
SPが、ごっそり削られる。
(……重い!)
第二層とは比べものにならない消費量。
だが、やらなければ後ろが危険だ。
魔獣の視線が、完全に俺に集中する。
■ 《絶対防衛》の真価
境界獣の体当たり。
盾に衝撃が走る。
だが――
押し負けない。
足が、地面に吸い付いたように安定する。
(……防げる)
SPは削られる。
体も重い。
それでも、
「崩れない」という一点において、
《絶対防衛》は圧倒的だった。
「今です!」
魔法が、根を焼き切る。
弓が、露出した弱点を射抜く。
剣士の一撃で、
境界獣はゆっくりと崩れ落ちた。
■ ドロップと現実
魔獣は、光となって消える。
残ったのは、
安価な魔石と、加工用の部位。
「……スキルロールは無しか」
確率は三割。
分かってはいるが、やはり落ちない。
(第三層でも、そう簡単には出ないな)
むしろ、
戦うコストの方が高い。
SP、集中力、時間。
ここでは、一戦一戦が重い。
■ 休息の判断
「今日は、ここまでにしよう」
俺は、はっきり言った。
「もう?」
「もう、だ」
無理はできない。
第三層は、“引き際”を間違えた瞬間に詰む。
全員が、黙って頷いた。
ダンジョンを出る。
それが、この世界の正解だ。
■ 地上での静けさ
外に出た瞬間、
張り詰めていた感覚が、少しだけ緩んだ。
「……第三層、やばいですね」
「ああ」
強い。
危険だ。
だが――
絶望ではない。
(ちゃんと、考えて進めばいい)
力を得たからこそ、
無茶をしない。
それもまた、
守戦士の役割だ。
■ 次を見据えて
宿に戻り、装備を外す。
《絶対防衛》の重みを、改めて感じる。
自由は減った。
消耗も激しい。
それでも。
第三層で、
仲間を守りきれる力がある。
(……この先も、前に立つ)
選んだ道だ。
第三層は、まだ始まったばかり。
世界は、
こちらを試すつもりらしい。
第三層突入回でした。環境によるSP圧迫、新しい魔獣、そして「無理をしない判断」が重要になる段階に入りました。《絶対防衛》の強さと代償が、より現実的な問題として描かれています。




