《スカイツリーダンジョン編:第三層前夜/強者の影》
《絶対防衛》を得てから、数日が過ぎた。
体は、確実に強くなっている。
それは、訓練の最中にもはっきり分かった。
剣士の全力の一撃を、
正面から受けても、踏みとどまれる。
「……冗談だろ」
剣士が、半ば呆然と呟いた。
「今の、本気だぞ?」
「分かってる」
盾越しに伝わる衝撃は、確かに重い。
だが、致命的ではない。
(……これが、高位スキル)
守戦士としては、理想的だ。
だが同時に――
SPの減りは、想像以上だった。
■ 見え始める限界
模擬戦が終わった頃には、
息が荒くなっていた。
「大丈夫ですか?」
後衛が心配そうに声をかける。
「……少し、使いすぎた」
《絶対防衛》は、常時発動型。
防御していなくても、SPは確実に削られていく。
長引けば、
戦う前に動けなくなる可能性すらある。
(……万能じゃない)
むしろ、使いどころを誤れば、
一気に崩れる。
■ 管理課からの通達
その日の夕方、管理課から正式な通知が届いた。
「第三層の解放が、確認されました」
空気が、一瞬で張り詰める。
「ただし――
挑戦は、高位スキル保持者を含むパーティに限られます」
条件付き解放。
それは、暗にこう言っている。
危険度が、これまでとは違う。
「……狙われますね」
弓使いが、静かに言った。
高位スキル保持者。
希少で、目立つ存在。
協会。
他のパーティ。
時には、良くない噂を持つ者たち。
(……力を得るってのは、こういうことか)
■ 距離の変化
街を歩いていても、視線を感じる。
好奇心だけじゃない。
値踏みするような目。
声をかけられることも増えた。
「一緒に組まないか」
「情報、買わない?」
どれも、悪意があるとは限らない。
だが――
気軽に応じられる話でもなかった。
仲間を守るためにも、
不用意な関わりは避ける。
(……前より、ずっと孤独だな)
強くなるほど、
選択肢は減っていく。
■ 夜の決意
宿で、一人装備を整えながら考える。
第三層は、間違いなく今まで以上に危険だ。
《絶対防衛》があっても、油断はできない。
それでも――
仲間と進むなら、
俺が前に立つしかない。
(……逃げない)
代償を払って得た力だ。
使わずに後悔するくらいなら、
使い切る。
守戦士として、
壁になる覚悟は、もうできている。
■ 次へ
翌朝、パーティが集まる。
「第三層……行きますよね」
後衛の問いに、全員が黙って頷く。
俺は、一歩前に出た。
「俺が、全部受ける。
だから――後ろは任せた」
誰も、笑わない。
誰も、軽く受け取らない。
「任せて」
その言葉が、何よりの支えだった。
第三層は、もう開いている。
強くなりすぎた者だけが、
足を踏み入れられる場所へ。
今回は第三層突入前の“間”の回でした。高位スキルを得たことで生まれる制限、周囲との距離、そして孤独。それでも前に立つと決める主人公の覚悟を描いています。




