《スカイツリーダンジョン編:第二層 ― 灰の森林/ボス戦・後半》
灰森の主が後退したことで、空気が一瞬だけ緩んだ。
だが、それは錯覚に過ぎない。
地面に走る魔力の脈動が、むしろ強くなる。
(……来る)
直感が、はっきりと警鐘を鳴らした。
■ ボスの本気
灰森の主が、両腕を大きく広げる。
次の瞬間、
周囲の灰が嵐のように舞い上がった。
「範囲攻撃、来ます!」
後衛の叫び。
灰の暴風が、視界を塗り潰す。
防御しなければ、全員が巻き込まれる。
(……下がれない)
俺は盾を地面に突き立て、前に出た。
《挑発》を、最大限に込める。
SPが、一気に削られる感覚。
視界の端が、わずかに暗くなる。
それでも――
敵意は、完全にこちらへ向いた。
■ 守戦士の決断
灰の暴風が、直撃する。
衝撃が、全身を打つ。
腕が、痺れる。
(……きつい)
正直に言えば、限界は近い。
だが、ここで倒れれば――
後ろが、崩れる。
「……っ!」
歯を食いしばり、踏みとどまる。
その背後で、魔法が集中砲火を浴びせる。
弓が、急所を正確に射抜く。
剣士が叫んだ。
「今だ、いける!」
■ 最後の押し込み
灰森の主の動きが、明らかに鈍った。
外殻に走る亀裂。
魔力の流れが、乱れている。
(……終わらせる)
俺は、最後の力を振り絞り、前へ出た。
盾で押し込み、
敵の視線を完全に固定する。
「――今だ!」
その合図と同時に、
剣士の一撃が、亀裂の中心を貫いた。
鈍い音。
そして――
灰森の主は、大きく崩れ落ちた。
■ 勝利
周囲に舞っていた灰が、静かに地面へ落ちる。
魔力の渦が、完全に消えた。
「……倒した?」
誰かが、信じられないように呟く。
俺は、盾を支えにして、ゆっくりと息を吐いた。
「……ああ。勝った」
その言葉を合図に、全員がその場に座り込む。
誰も、怪我をしていない。
それが、何よりの成果だった。
■ ボスドロップ
灰の中心に、光が残っている。
ボスドロップだ。
魔石。
希少な魔獣素材。
そして――
一つの、特別なロール。
(……スキルロール)
鑑定はできない。
だが、普通のものではないと、直感で分かる。
パーティ全員が、息を呑んだ。
「……これは、街に戻ってからだな」
誰も反論しなかった。
■ 守戦士として
帰還の途中、灰の森林を振り返る。
第二層は、確かに危険だった。
だが――
一人では、越えられなかった壁を、
仲間となら越えられた。
(……守戦士で、よかった)
前に立つこと。
引き受けること。
それが、誰かの勝利につながる。
この職業の意味を、
初めて、胸を張って言える気がした。
第二層ボス戦・決着回でした。守戦士の本質である「前に立ち、崩れないこと」を最大限に描いています。勝利と同時に、強力なボスドロップという新たな火種も生まれました。次回はボスドロップ鑑定回、あるいは第二層クリア後の変化と評価へとつながります。




