《スカイツリーダンジョン編:第二層 ― 灰の森林/ボス戦・開幕》
灰の森林の奥は、明らかに異質だった。
木々は途中から枯れ、地面は踏みしめるたびに粉塵のような灰を舞い上げる。
空気が、重い。
(……間違いない)
ここが、第二層ボスの領域だ。
■ ボスの出現
魔力の渦の中心で、地面が盛り上がった。
灰が崩れ、
骨のような外殻を持つ巨体が、ゆっくりと姿を現す。
《灰森の主》
危険度:高
特性:範囲攻撃・召喚・耐久特化
「……でかいな」
剣士が息を呑む。
第一層ボスとは比べものにならない存在感。
ただ立っているだけで、周囲の魔力が歪む。
(耐久型……長期戦だ)
俺は一歩、前に出た。
■ 開幕の一手
「……俺が引く」
短く告げ、《挑発》を発動する。
胸の奥から、魔力が一気に引き抜かれる感覚。
SPが、目に見えて削られる。
だが――
灰森の主の空洞のような眼窩が、こちらを向いた。
敵意が、完全に俺に集中する。
「来るぞ!」
次の瞬間、
地面から灰の腕が突き出した。
咄嗟に盾を構える。
衝撃。
重い。
想像以上だ。
だが、踏みとどまる。
(……受け切れる!)
■ パーティの連携
「今だ!」
俺の合図で、後衛が一斉に動く。
魔法が外殻を削り、
弓の矢が関節部を狙う。
剣士は、俺の死角から回り込み、
確実に一撃を入れて離脱する。
理想的な動きだ。
(……ちゃんと、噛み合ってる)
守戦士として、
前に立つ意味を、はっきりと実感する。
■ 予想外の展開
だが、第二層ボスは甘くなかった。
灰森の主が、低く唸る。
次の瞬間、周囲の灰が一斉に動いた。
「召喚……!」
灰牙狼。
数は――五体以上。
後衛が息を呑む。
(……来たか)
想定内だ。
だが、厳しい。
俺は歯を食いしばり、再び《挑発》を使う。
SPが、さらに削られる。
だが、敵意は逸れない。
ボスも、取り巻きも、
すべてがこちらを見る。
「全部、引き受ける!」
声が、自然と大きくなる。
■ 守戦士の限界
攻撃が、重なる。
盾越しに、骨に響く衝撃。
防御は間に合っている。
HPも、まだ余裕がある。
だが――
SPが、きつい。
(……長引いたら、持たない)
それでも、下がらない。
下がった瞬間、後ろが崩れる。
(前に立つってのは……こういうことだ)
怖い。
苦しい。
それでも、立つ。
■ 仲間の声
「大丈夫!?」
「まだいける!」
後ろから飛んでくる声が、支えになる。
魔法が、召喚された魔獣を一体ずつ削る。
弓が、確実に仕留めていく。
剣士が、短く叫んだ。
「……主の動き、鈍ってきた!」
確実に、効いている。
■ 前半戦・終了
灰森の主が、一歩下がった。
完全な撤退ではない。
だが、確実に“効いている”反応。
(……まだ終わらない)
これは、前半戦だ。
ボスは、まだ切り札を残している。
俺は盾を構え直し、息を整える。
守戦士として、
ここからが本番だ。
第二層ボス戦の開幕・前半戦でした。挑発による敵意集中、召喚への対応、そしてSP管理――守戦士の役割と限界をはっきり描いた回です。次回はボスの本気、パーティ崩壊寸前の局面、そして主人公の決断へと進みます。




