《スカイツリーダンジョン編:第二層 ― 灰の森林/ボスの気配》
パーティでの探索は、想像以上に順調だった。
役割分担は明確で、無理な動きもない。
俺が前に立ち、敵を引き付ける。
剣士が削り、弓と魔法が仕留める。
第二層の灰牙狼や灰蟲相手なら、安定して対処できる。
(……順調すぎる)
それが、逆に気になった。
■ 変化の兆し
探索三日目。
同じルートを進んでいるはずなのに、違和感があった。
音が、少ない。
魔獣の気配が、妙に散っている。
「……なんか、静かすぎません?」
後衛が小声で言う。
俺も同意だった。
第二層は、本来もっと騒がしい。
集団行動をする魔獣が多い階層だ。
(……避けられてる?)
いや、違う。
集められている。
■ 異常な魔力濃度
ある地点を越えた瞬間、空気が一段重くなった。
足元の灰が、わずかに渦を巻いている。
魔力が、地面から染み出してくる感覚。
「ここ……」
「撤退ライン、ですよね?」
剣士がこちらを見る。
判断は、守戦士である俺に委ねられている。
(……まだ戦える。けど)
この感覚は、第一層ボス部屋の前と似ている。
「今日は、ここまでにしよう」
即断だった。
誰も反論しない。
全員が、同じ気配を感じ取っている。
■ 帰還後の報告
管理課での簡易報告。
職員の反応は、想像以上に重かった。
「……第二層で、その魔力反応ですか」
記録を確認しながら、眉をひそめる。
「最近、同様の報告が増えています。
第二層ボスが“動き始めた”可能性がありますね」
その言葉に、パーティ内が静まる。
第二層ボス。
第一層とは違い、単独討伐の記録はほぼない。
(……ついに、来たか)
■ 役割の重さ
解散後、一人で街を歩きながら考える。
もし第二層ボスに挑むなら――
前に立つのは、間違いなく俺だ。
挑発を使い、敵意を集め、
仲間が動ける時間を作る。
それは、
一番危険な場所に立つということでもある。
(……覚悟、いるな)
だが、不思議と逃げたいとは思わなかった。
守戦士を選んだ時点で、
この未来は決まっていたのかもしれない。
■ 次への静寂
その夜、装備の手入れをしながら、
剣の刃に映る自分の顔を見る。
まだ若い。
経験も浅い。
それでも――
前に立つ理由は、もう十分だ。
第二層は、牙を剥き始めている。
次に進めば、
もう「様子見」では済まない。
今回は第二層ボスの前兆回でした。直接の戦闘はありませんが、環境の変化・魔力の偏り・管理課の反応を通じて「次は危険な段階に入る」ことを示しています。守戦士という職業の責任が、少しずつ主人公に重くのしかかり始めました。




