《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/ボスドロップ鑑定》
地上へ戻った瞬間、肺いっぱいに現実の空気を吸い込んだ。
ダンジョンの魔力に慣れた身体には、少しだけ薄く感じる。
「……まずは鑑定だな」
第一層ボスを倒したという事実よりも、
今はバッグの中身のほうが気になっていた。
影狼王のドロップ。
ボスから得られるスキルロールは、一回の探索で多くて一つ。
その価値は、一般魔獣の比ではない。
■ ダンジョン管理課へ
政府直轄のダンジョン管理課。
探索者にとって、換金と情報の拠点だ。
受付で身分証を提示すると、職員の視線が一瞬だけ止まった。
「……第一層、単独踏破ですか?」
「はい」
軽いざわめき。
だが、俺は気にしない。
鑑定室へ通され、テーブルの上に戦利品を並べた。
・魔石(大)
・影狼王の牙
・スキルロール(未鑑定)
職員が鑑定メガネをかけ、まずは素材から確認していく。
■ 素材の評価
「魔石(大)は高品質ですね。第一層としては上物です」
値段は想定通り。
弱い魔獣の魔石とは、桁が違う。
「影狼王の牙は……加工可能です。ただし、特定の生産職が必要になります」
やはりか。
魔獣の部位は、誰でも扱えるわけではない。
(いずれ、生産職の価値も跳ね上がるな)
だが、本命は――
■ スキルロール鑑定
職員の動きが、わずかに慎重になる。
「……スキルロール、確認します」
鑑定メガネ越しに光が走り、数秒の沈黙。
そして、職員が小さく息を呑んだ。
【スキルロール:挑発(Lv1)】
分類:アクティブ
効果:一定範囲の敵対心を強制的に引き付ける
必要SP:5
「……なるほど」
守戦士向け。
それも、はっきりと。
敵の注意を自分に向けるスキル。
複数人パーティでこそ真価を発揮するが、
ソロでも、敵の行動を制御できる。
必要SPは重い。
だが、職業スキル枠と噛み合えば話は別だ。
「こちらは高額買取も可能ですが……保持されますか?」
俺は迷わず答えた。
「持ち帰ります」
売る理由が、どこにもない。
■ 周囲の視線
鑑定が終わり、控室へ戻る途中。
何人かの探索者が、こちらを見ているのに気づいた。
視線の意味は、すぐに分かった。
(……情報は、もう回ってるな)
第一層ボス単独討伐。
職業取得済み。
そして、ボススキルロール所持。
悪目立ちしないよう、今日は早めに引き上げる。
ダンジョンを出たら、買い出しと休息。
この基本は、これからも変わらない。
■ 静かな確信
宿に戻り、ベッドに腰を下ろす。
スキルロール《挑発》を手に取り、改めて考える。
(前に立つ者に、必要な力だ)
受けるだけでは足りない。
狙われる覚悟が、必要になる。
第一層は終わった。
だが、探索者としての評価は、ここからだ。
次は第二層。
魔獣も、仕組みも、一段階上がる。
それでも――
守戦士として、前に立つ。
それが、俺の選んだ道だからだ。
今回は第一層ボスドロップの鑑定回でした。守戦士向けのアクティブスキル「挑発」は、今後パーティを組む展開や、より大きな戦闘への布石になります。第一層は一区切りですが、探索者としての評価や立場はここから変化していきます。次回は第二層突入前の準備、あるいは第二層初探索回に進めます。




