《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/第一層ボス》
職業を得てから三日。
十分な休息と準備を終え、俺は再び影の回廊へ足を踏み入れた。
今日は明確に違う。
目的は探索でも、スキル集めでもない。
(第一層のボスを倒す)
それだけだ。
装備は最低限だが、無駄はない。
ポーションは多め。
守戦士としての立ち回りも、すでに身体に馴染んでいる。
通路を進むにつれ、空気が重くなる。
魔力が、濃縮されている。
やがて見えてきたのは、巨大な石扉。
第一層ボス部屋。
俺は一度、深呼吸をした。
■ ボス部屋解放
石扉に手をかけた瞬間、低い音が響いた。
重々しく扉が開き、奥の空間が露わになる。
広い。
天井は高く、床には無数の傷跡。
そして、中央に――
それは、いた。
影をまとった巨大な獣。
狼を思わせる体躯だが、明らかに異質だ。
《第一層ボス:影狼王》
危険度:高
推奨:複数人
「……ソロ、推奨外か」
だが、今さら引く気はなかった。
影狼王が低く唸り、こちらを睨む。
その瞬間、魔力の圧が跳ね上がった。
■ 正面から、受ける
影狼王が一気に距離を詰めてくる。
速い。
強化個体とは比べものにならない。
だが――
(避けない)
俺は踏ん張り、剣を構えた。
爪が迫る。
衝撃が、全身を揺らした。
だが、倒れない。
「……これが、守戦士だ」
防御補正が、確実に機能している。
ダメージは重いが、致命には至らない。
反撃の一撃を叩き込み、距離を取らせない。
影狼王は咆哮し、影を噴き出す。
視界が一瞬、暗転した。
(集中しろ)
集中力強化が、ここで効く。
闇の中でも、動きが読める。
■ 削り合い
戦いは、派手なものではなかった。
一撃必殺など、ない。
受けて、削る。
削られても、立ち続ける。
ポーションを一本、二本と使いながら、確実に距離を詰める。
影狼王の動きが、少しずつ鈍くなってきた。
(……いける)
最後は、真正面からのぶつかり合いだった。
咆哮とともに突進してくる影狼王。
俺は剣を両手で握り、踏み込む。
衝撃。
痛み。
だが、意識は飛ばない。
剣が、影狼王の核を捉えた。
次の瞬間、巨体が霧となって崩れ落ちた。
■ 勝利と報酬
静寂。
重かった空気が、一気に軽くなる。
「……勝った、か」
膝に手をつき、息を整える。
床には、いくつかのアイテムが残されていた。
・魔石(大)
・影狼王の牙
・スキルロール(未鑑定)
そして――
石盤の奥が、淡く光り始める。
(……次への道、か)
第一層は、終わった。
だが探索者としての道は、まだ始まったばかりだ。
俺はアイテムを回収し、ゆっくりと出口へ向かった。
地上へ戻ったら、また休息と準備。
そして、数日後――次の層へ。
守戦士として、前に立ち続けるために。
第一層ボス戦でした。守戦士という職業の「逃げずに受ける」「倒れずに立つ」という役割を、はっきり描く回になっています。派手さはありませんが、安定した勝利こそがこの職業の強さです。次回はボスドロップの鑑定回、もしくは第二層突入前の変化と準備編に進めます。




