《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/守戦士、最初の一歩》
職業【守戦士】を取得してから、俺はすぐには深部へ向かわなかった。
力を得た直後ほど、勘違いしやすい時期はない。
(まずは、慣れる)
職業はスキルとは違う。
装備のように付け外しできるものでも、数値だけが上がるものでもない。
戦い方そのものを変える枠組みだ。
だからこそ、最初の一日は「確認」に使うと決めていた。
■ 守戦士としての感覚
影の回廊・下層。
いつもの狩場で、影蟲と影鼠を相手に剣を構える。
踏み込んだ瞬間、違いが分かった。
(……重い)
悪い意味ではない。
体の芯がぶれない。
攻撃を受ける前提で、自然と重心が低くなる。
影鼠の体当たりを、あえて受ける。
──ゴッ。
衝撃はあったが、ダメージは想像よりもずっと小さい。
「……なるほど」
守戦士は、避ける職じゃない。
受けて、立ち続ける職業だ。
剣を振るう動きも変わった。
一撃一撃が、相手を押し留める意識になる。
戦闘が、安定する。
■ 初めての職業レベル上昇
数体の魔獣を倒したところで、体の内側に確かな変化が走った。
《職業【守戦士】のレベルが上昇しました》
《防御補正 微増》
《職業適性 成長》
「……早いな」
スキルと違い、職業レベルは行動そのものに反応するらしい。
守戦士として戦えば、守戦士が育つ。
単純だが、残酷でもある。
(別の戦い方は、もう伸びない)
それでも後悔はなかった。
自分で選んだ道だ。
■ 上位個体との正面衝突
少し奥へ進んだところで、影狼・強化個体が現れた。
以前なら、慎重に距離を取っていた相手。
だが、今日は違う。
「……正面から行く」
影狼が跳ぶ。
俺は逃げず、剣を構えたまま踏み込んだ。
爪を受け、衝撃を殺し、そのまま斬る。
派手な一撃ではない。
だが、確実に相手の動きを止める。
影狼は怯み、再び距離を取ろうとするが――
それを許さない。
数合後、影狼は霧となって消えた。
ドロップは魔石と牙のみ。
スキルロールは出なかった。
それでも、満足感はあった。
(……勝てる)
危なげなく。
無理なく。
守戦士という職業が、きちんと機能している。
■ 今日の引き際
その日の探索は、短めで切り上げた。
職業を得た直後は、欲を出さない。
ダンジョンを出て、いつものように買い出しと休息。
体を休めながら、次を考える。
(次は……ボスだな)
第一層の主。
職業を得た探索者として、避けては通れない相手。
まだ準備は必要だ。
だが、もう「無理」ではない。
影の回廊は、静かに待っている。
今回は職業「守戦士」を得たあとの初戦闘と、職業レベル上昇を描きました。守戦士は派手さはありませんが、物語全体を支える“土台”になる職業です。ここから主人公は「役割を持つ探索者」として成長していきます。次回はいよいよ第一層ボス戦、もしくはボス前の最終準備編に進む予定です。




