《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/狙ったスキル》
四本目のスキルロールを手に入れてから、俺は一度立ち止まった。
職業取得まで、あと一つ。
だが――ここからが、本当の分かれ道だ。
(何でもいい一本じゃ、意味がない)
石盤に刻まれていた注意書きが、頭から離れなかった。
職業とスキルの組み合わせは複雑。誤った選択は成長を阻害する。
だからこそ、最後の一本は「狙う」と決めた。
求めるのは、前衛職と明確に噛み合うスキル。
回避、防御、もしくは攻撃補助。
どれか一つでもあれば、職業取得後の伸びが大きく変わる。
その代わり――
向かう場所は、安全圏ではなかった。
■ 危険区域への踏み込み
第一層の奥。
ボス部屋へ至る通路の手前、魔力が渦を巻くエリア。
ここは探索者の多くが避ける場所だ。
理由は単純で、魔獣が強く、数が多い。
だが同時に、ドロップテーブルも一段階上がる。
「……行くしかない」
深く息を吸い、足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。
重い。
魔力が、皮膚にまとわりつくようだ。
最初に現れたのは、影狼の上位個体。
身体が一回り大きく、動きも鋭い。
鑑定が告げる。
《影狼・強化個体》
危険度:中
推奨:複数人
「……ソロで来る場所じゃないな」
だが、引き返す気はなかった。
■ 連戦と消耗
影狼を倒すまでに、ポーションを一本使った。
続けて現れたのは影蟲の群れ。
数が多く、集中力を削ってくる。
集中力強化のスキルが、ここで初めて実感として役に立った。
判断が鈍らない。
疲労の中でも、次の動きが見える。
(……まだ、いける)
だが、体力は確実に削られていく。
時間も、すでに二時間を超えていた。
撤退の二文字が、何度も頭をよぎる。
そして――
影狼・強化個体を倒した、その直後。
床に落ちた光が、はっきりと“違う”色をしていた。
■ 五本目候補――だが
震える手で拾い上げ、鑑定をかける。
【スキルロール:反射神経強化(Lv1)】
分類:パッシブ
効果:回避成功率微増
必要SP:4
「……これだ」
求めていたものの一つ。
前衛職との相性は抜群。
だが同時に、必要SPは重い。
今の俺が付ければ、他のスキル構成に影響が出る。
(取るか……それとも、見送るか)
職業取得に使うなら、問題はない。
だが“今”使うには、少し早い。
迷いながらも、俺はロールを丁寧に仕舞った。
これは、最後の一本候補。
■ 生還
それ以上の深追いはしなかった。
体力も、集中力も、限界に近い。
帰路の途中、何度も背後を気にしながら進む。
だが幸い、追加の強敵には遭遇しなかった。
出口が見えた瞬間、思わず息が漏れる。
「……生きて帰れたな」
今回の探索は、明確に“危険”だった。
だが、その分、得たものは大きい。
五本目は、もうすぐだ。
職業取得は、現実のものになりつつある。
今回は「狙ったスキルを求める危険な探索」を描きました。安全な狩りでは得られないリスクとリターン、その選択を主人公自身が行う段階に入っています。五本目は手の届く場所にありますが、同時に「選ばなければならない」局面でもあります。次回はいよいよ職業取得直前、もしくは第一層ボスを絡めた決断の回になるでしょう。




