《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/三本目、四本目》
三本目のスキルロールを狙う探索は、前回からさらに間を空けて行われた。
連日の潜行は避け、二日休み、一日入る。そのリズムを崩さない。
理由は単純だ。
集中力と運は、疲労とともに確実に落ちる。
今日の目的は明確だった。
戦利品の量ではない。
スキルロール、その一点。
■ 狩場の変更
これまでの下層通路ではなく、俺は少しだけ奥――
魔力が濃く、魔獣の入れ替わりが激しいエリアを選んだ。
危険度はわずかに上がる。
だが、その分ドロップテーブルも変わる。
「……ここだな」
現れたのは、影狼と影蟲の混成群。
単体では弱いが、連携されると面倒な相手だ。
慎重に立ち回り、一体ずつ確実に仕留める。
派手な技は使わない。
無駄な消耗を避ける。
戦闘は淡々と進み、気づけば一時間半が経過していた。
(……まだか)
スキルロールは、狙って出るものではない。
それでも、狙わなければ一生出ない。
そして――
影狼を倒した直後、足元に落ちた光が、明らかに違った。
■ 三本目のスキルロール
鑑定が、ほぼ反射で走る。
【スキルロール:耐久強化(Lv1)】
分類:パッシブ
効果:最大HP微増
必要SP:3
「……これも、悪くない」
身体強化と耐久強化。
方向性が揃ってきた。
前衛職向きの構成。
剣術基礎とも噛み合う。
職業を取る前段階としては、理想に近い。
だが――
今日はここで終わらなかった。
■ 四本目は、想定外の場所で
三本目を入手してから三十分ほど経った頃。
帰還を意識し始めた、その時だった。
通路の壁際、影が妙に濃い場所。
影蟲が溜まりやすい、嫌なポイントだ。
(最後に一掃してから戻るか)
軽い判断だった。
だが、それが結果的に正解になる。
影蟲をまとめて倒した直後、床に落ちたのは――
細く、黒縁のあるスキルロール。
鑑定結果を見た瞬間、俺は息を呑んだ。
【スキルロール:集中力強化(Lv1)】
分類:パッシブ
効果:戦闘時の判断精度向上
必要SP:2
「……当たり、だな」
派手さはない。
だが、このスキルは“地味に効く”。
長時間探索、連戦、判断速度。
すべてに影響する。
しかも必要SPが軽い。
これで――
一つ、二つ、三つ、四つ。
職業取得まで、あと一つ。
■ 欲が出る前に、引く
四本目を手にした時点で、俺は即座に決断した。
「今日は、終わりだ」
欲張ると、ろくなことがない。
五本目を今日中に狙うのは、明らかにリスクが高い。
ダンジョンを出て、換金を済ませ、身体を休める。
次は――
“職業を取るための一本”だ。
地上に戻る頃には、空はすっかり夜に染まっていた。
だが、心は不思議と軽い。
(もう、ここまで来た)
職業は、確実に射程圏内に入っている。
今回は三本目・四本目のスキルロール入手回でした。構成が明確に「前衛向き」に寄り始め、主人公自身も進む方向を自覚し始めています。ここまで来ると、次の一本は単なるアイテムではなく「選択」になります。次回はいよいよ五本目、職業取得直前の回に入ります。




