《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/スキルロール集め》
職業の石盤を読んだ翌日、俺は目的をはっきりと定めて再びスカイツリーダンジョンへ入った。
(今やるべきことは一つだ)
スキルロールを集める。
職業を得るには、同系統のスキルロールを五つ。
だが石盤を読んで分かった通り、これは単なる運試しではない。
狙って集めるには、時間と場所、そして倒す魔獣を選ぶ必要がある。
第一層の下層部。
影の回廊でも、魔力が比較的安定している区画を俺は選んだ。
理由は単純だ。
このあたりに出現する魔獣は弱く、数も多い。
ドロップ率は約三割。
長時間探索すれば、いずれスキルロールに辿り着く。
焦らない。
今日は「戦う日」ではなく、「集める日」だ。
■ 影蟲と影鼠
最初に現れたのは、影蟲。
壁や床を這う小型魔獣で、攻撃力は低いが数が多い。
鑑定を走らせる。
《影蟲》
危険度:低
ドロップ:魔石(小)・外殻・劣化スキルアイテム
一体ずつ、確実に倒す。
剣を振るう動作も、もう迷いがない。
数を重ねるうちに、身体の動きが自然と洗練されていくのを感じた。
これもまた、経験値だ。
影蟲を七体倒したところで、光が落ちた。
・魔石(小)
・影蟲の外殻
・劣化スキル付与アイテム「暗視(Lv1)」
「……まあ、こんなもんだよな」
劣化スキルは売却用だ。
政府のダンジョン管理課がまとめて買い取ってくれる。
額は小さいが、積み重なれば馬鹿にならない。
続いて影鼠。
動きは素早いが、耐久は低い。
十体ほど狩った頃、ようやく“違う光”が落ちた。
細長い紙片。
巻物状のそれを見た瞬間、心拍が跳ね上がる。
「……来た」
■ 初めて狙って拾ったスキルロール
鑑定を即座に発動する。
【スキルロール:身体強化(Lv1)】
分類:パッシブ
効果:基礎筋力・耐久微増
必要SP:2
「……当たりだ」
派手ではない。
だが、確実に“職業向き”のスキルだ。
パッシブ系スキルは常時効果を発揮する分、SP消費が重くなりがちだが、Lv1なら問題ない。
将来的にも腐らない。
今日はこれで十分だ。
だが、まだ時間はある。
■ 長時間探索と現実
探索を続け、二時間が経過した頃。
ようやく二本目のスキルロールが落ちた。
【スキルロール:剣術基礎(Lv1)】
分類:パッシブ
必要SP:3
これで二つ。
だが、ここで俺は実感する。
(……やっぱり、簡単じゃないな)
スキルロールは希少だ。
二時間探索して一本見つかれば良い方。
職業に必要な五つを集めるには、最低でも数十時間。
運が悪ければ、もっとかかる。
だが、不思議と焦りはなかった。
石盤を読んだことで、道筋が見えたからだ。
■ 引き際と帰還
今日は深追いしない。
三本目を狙う誘惑を断ち切り、俺は出口へ向かった。
ダンジョンを出たら、買い出しと休息。
そして、数日後にまた潜る。
この繰り返しが、探索者の日常だ。
地上へ戻ると、空は夕暮れ色に染まっていた。
ダンジョン管理課でアイテムを換金し、最低限の収入を確保する。
派手さはない。
だが、確実に前へ進んでいる。
(次は……五つ目を見据えた探索だな)
職業は、もう“夢”ではない。
手を伸ばせば届く場所にある。
今回はスキルロール集めに焦点を当てた回でした。職業取得の条件が明確になったことで、探索の目的が「生き延びる」から「積み上げる」へと変化しています。地味で時間のかかる作業ですが、この積み重ねこそが後の大きな差になります。次回は、さらに踏み込んだスキル厳選、もしくは職業取得を意識した魔獣選びの回を書く予定です。




