《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/職業の石盤》
再びスカイツリーダンジョンに入ったのは、前回の探索から三日後だった。
買い出しと休息を挟み、装備も整えた。ポーションは最低限、消耗品は多め。焦らず、だが確実に前へ進むための準備だ。
影の回廊は相変わらず薄暗く、静かだった。
下層に出る魔獣はすでに見慣れたものばかりで、戦闘も大きな危険はない。
それでも、油断はしない。
(今日は……ボス部屋の前まで行く)
目的はひとつ。
職業の石盤を読むこと。
第一層のボス部屋には入らない。
だが、石盤は扉の内側――ボス部屋の壁に張り付くように存在していると聞いていた。
通路の空気が変わる。
魔力が濃く、重い。
「……ここだな」
巨大な石扉の前に立つと、壁の一部に埋め込まれた古い石板が目に入った。
文字とも紋様ともつかない刻印が、淡く光を放っている。
俺は一歩近づき、鑑定を発動した。
■ 職業の石盤(第一層)
《職業石盤:第一層・一般職対応》
《条件:該当スキルロール所持数 5》
《上位職・特殊職:非対応》
さらに、石盤の文字がゆっくりと変化し、情報が流れ込んでくる。
【一般職について】
・職業はスキルとは別枠で取得される
・職業は攻撃力、防御力、成長補正を大きく底上げする
・職業は使用・戦闘経験によってレベルが上昇する
・職業は複数存在するが、初期取得は一つのみ
【取得条件】
・対応するスキルロールを5つ所持していること
・石盤に触れ、承認を受けること
「……なるほど」
今まで誰もはっきり説明できなかった理由が、ここで分かった。
スキルは比較的手に入る。
だが、同じ系統のスキルロールを5つ集めるのは、第一層ではほぼ不可能だ。
さらに、上位職や特殊職は――
【上位職】
・必要スキルロール数:10
・第一層ではほぼ出現しない
【特殊職(生産職含む)】
・必要スキルロール数:10
・対応石盤は別階層に存在
「だから……誰も職業を持っていないのか」
理解した瞬間、背筋が冷えた。
情報はある。だが、意図的に“届かない場所”に置かれている。
石盤の最後に、さらに小さな文字が刻まれていた。
※注意
・職業とスキルの組み合わせは複雑
・誤った選択は成長を阻害する可能性あり
・一度選んだ職業は容易に変更できない
俺は石盤から手を離した。
(焦る必要はない)
今はまだ、スキルロールの数も足りない。
無理に職業を取る段階ではない。
だが――
(確実に、道は見えた)
スキルを集め、情報を整理し、最適な職業を選ぶ。
それができれば、探索者として一段上へ進める。
石扉の向こうから、低く重い気配が伝わってくる。
第一層のボスは、確かにそこにいる。
「……今日は戻ろう」
今日は“知る日”だ。
戦う日は、また別に来る。
俺は踵を返し、影の回廊を引き返した。
ダンジョンは逃げない。
だが、準備不足の探索者は、簡単に消える。
そのことを、職業の石盤は静かに教えてくれていた。
今回は「職業の石盤」を初めて読む回でした。
スキルとは別枠で存在する職業、その取得条件の厳しさ、そして情報が意図的に隠されている構造が明らかになりました。主人公はまだ職業を得ていませんが、だからこそ“考えて選ぶ余地”が残っています。次回は、スキルロール収集と職業選択を意識した探索、そして第一層ボスへの本格的な準備に入っていく予定です。




