《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊》テント展開直後から
内部拡張テントの設営を終えたあと、俺は深く息をついた。魔獣避けの結界が静かに揺らぎ、周囲の気配は一気に薄まる。さっきまで耳にまとわりついていた影の呻き声や、足音のようなノイズは完全に消えていた。
「……これで、今日は安全に休めるな」
テントの内部は、外観からは想像できないほど広い。小型アパートの一室ほどの空間があり、簡易ベッド、調理台、折り畳み式の収納棚まで設置されている。内部温度は一定に保たれ、ライトも自動点灯する優れものだ。
俺は入口にアイテムボックス(上位ランク10のもの)を固定し、荷物を放り込みながら、今日の成果を机の上に並べた。
◆ 今日拾ったアイテム一覧
魔石(小) × 7
影狼の牙
影コウモリの羽根
劣化スキル付与アイテム「影走り(Lv1)」
スキルロール(未鑑定) × 1
小さい山だが、初日としては十分すぎる成果だ。
「やっぱスキルロールが一番の収穫だな……」
スキルロールは、魔獣の撃破時に約3割でアイテムドロップが起こり、その中でもさらに数百分の一という低確率。一般的には2時間探索して1本見つかれば運がいいほうと言われている。
そのレアものを初日に拾えたのは、運が良すぎると言っていい。
◆ 鑑定の準備
俺はアイテムボックスに入れていた《鑑定メガネ(劣化版)》を取り出す。これは【超超超レア】の本物の鑑定スキルとは違い、
「名前とアクティブ・パッシブの区別だけ分かる」
という代物だが、それでも数百万円で取引される高級品だ。
政府のダンジョン管理課もある程度の在庫を持っているらしいが、一般の探索者に行き渡るほど数はない。
「さて……どんなスキルが出るか」
緊張しながらメガネをかけ、スキルロールに触れる。
淡い光が浮かび、情報が視界に流れ込んできた。
【スキルロール:アイテムボックス(Lv2)】
分類:アクティブスキル
効果:容量拡張・収納展開
「……は?」
思わず声が漏れた。
すでに俺は最上位ランクのアイテムボックス(10段階のうち最高)を手に入れている。なのに、またアイテムボックスのスキルロールを拾うとか、どんな確率だ。
「いや、でも……売れるよな、これ」
アイテムボックスのスキルロールは、鑑定スキルと並んで超高額で取引される。
市場価格は4桁万円クラス。
つまりざっくり1000万円以上だ。
初日でこの収穫。
明らかに運の偏りがすごい。
「……今日は早めに寝て、明日に備えるか」
アイテムボックスへ全てを収納し、ベッドに横になると、ダンジョン内の静寂がゆっくりと身体を包んでいく。
影の回廊特有の薄暗さも、テントの内部にいる限りもう気にならなかった。
明日はスカイツリーダンジョン正式二日目。
レベルも少し上がったし、また下層でアイテムを集めていくつもりだ。
そうして、俺は眠りへと落ちていった。
スカイツリーダンジョン編の再構築、いよいよ本格的にスタートしました。主人公は幸運に恵まれ、早くも強力な基盤を手にした形ですが、ここから先の層には一筋縄ではいかない魔獣やギミックが待ち構えています。次回は、二日目の探索と新たな魔獣との遭遇を書いていきます。
次回タイトル:
《スカイツリーダンジョン編:第二日 ― 影狼と影蟲の巣》




