《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― 影の回廊/深部への接近》
影の回廊をしばらく進むと、通路は再びひらけた空間へと変わっていった。壁を伝っていた黒い魔力の霧も薄れ、どこか乾いた岩肌と冷えた空気が漂っている。
「……気をつけろ。ここから先、魔獣の種類が変わる」
昨日の探索で得た経験と、鑑定スキルによる気配の読み取りで、俺は仲間二人に警告を入れた。
レベルが上がったとはいえ、まだ第一層の半ばだ。油断したら簡単に命を落とす。
すると、通路の奥から「カサ……カサ……」という乾いた足音が響く。
「きた!」
闇の中から姿を現したのは――
◆新たな魔獣:シャドウラット(影鼠)
影のように平べったい体。
光を吸うような毛並み。
そして、目だけが赤く光る不気味な小型魔獣。
物語の中でいう「影の薄い雑魚キャラ」だが、実際に遭遇するとまったく可愛くない。
「レベル2か……弱いけど数が多い!」
三匹、四匹……さらに影が揺れ、合計七匹。
「昨日よりレベルは上がってる。いけるよ!」
仲間のミユが短剣を構え、シンは盾を前に出した。
――そして、戦闘が始まった。
◆短い戦闘とドロップ判定
結果、七匹すべて撃破。
俺たちのレベルはそれぞれ 3 → 4 に上昇した。
そして魔獣は倒すたび、光の粒子を散らして消える。
ポトッ
「……お、落ちてる!」
「まさかスキルロール……?」
「いや、これは魔石だな」
やっぱり確率は渋い。
魔獣がアイテムを落とすのは約3割だが、スキルロールはさらにその中の低確率だ。
それでも今日は――
「……一本ある!!」
俺が叫んだ。
黒い円筒形のロール。
触れるだけで微弱な魔力が伝わってくる。
「きた……っ! 今日二本目か!」
鑑定を使う。
◆鑑定結果
名称:〈ダッシュ Lv1〉スキルロール(アクティブ)
説明:一定時間、移動速度を上昇させる。SP消費:小。
「便利だけど……戦闘用としては微妙?」
「逃げるときには大事だろ。持っておけ」
仲間二人も頷く。
俺の鑑定スキルはまだ完全版ではないが、上位版の《鑑定・深層》へ進化する前兆のような反応を見せ始めていた。
◆影の回廊・深部前の休息ポイント
さらに奥へ進むと、小さなくぼみのような休憩スペースが現れた。
天井が高く、風の流れも音もほとんどない。まさに「ダンジョンが用意した安全地帯」。
「ここで一度、休もう」
シンが荷物を下ろし、水筒を取り出す。
「テント、張る?」
「今日は入ったばかりだから必要ないよ。ボス部屋までは行かない」
俺たちは腰を下ろし、リアル世界の15時頃という時間も確認する。
スカイツリーダンジョンは、現実世界の東京とほぼ同じ時間軸で動いている。
一度外へ出るにも体力は必要だし、夕方までには引き返さなければならない。
「それにしても……やっぱり怖いよね」
ミユがぽつりと言った。
「何が?」
「これだけ強い魔獣が出るのに、まだ第一層の途中なんだよ?」
確かに。
そしてまだ俺たちは――
スキルも職業も、ほとんど手に入れていない。
今日見つけたスキルロールも、ダッシュと初級攻撃スキルの二本だけ。
「でもまあ、焦らなくていいさ。スキルロールは本来、二時間に一本見つかれば運がいいレベルのレアアイテムなんだ」
「それでも今日の一本は奇跡だったね!」
ミユが笑う。
◆再び進行 ― ボス部屋の手前へ
休憩を終えた俺たちは影の回廊をさらに前へ進んだ。
そして――見つけた。
「……あれ、だよな」
「うん。壁の紋章が変わってる」
巨大な石扉。
そこだけ異様に空気が重い。
――第一層ボス部屋。
ただし今日は入らない。
俺たちは初日、絶対にボス部屋へ入らないと決めている。
「じゃあ、今日はここまで!」
「また明日来よう」
「うん!」
俺たちは引き返し始めた。
◆地上へ帰還
入口ゲートへ戻ると、ダンジョン管理課の職員がいつものように並んでいた。
「今日の収穫は?」
「魔石が十個、魔獣の牙が三本。それとスキルロール一本です」
職員の目が瞬く。
「スキルロール……!? 第一層でですか?」
「まあ運がよかっただけです」
「査定させていただきます」
結果――
◆魔石(弱級)……1個300円
◆魔獣の牙……1本1500円
◆〈ダッシュ〉スキルロール……査定額 135,000円
三人で山分けしても、今日は十分な成果だ。
◆買い物と帰宅
売却資金でまず買ったのは、
◆高耐久ロープ(30m)
◆エネルギーバー30個
◆ダンジョン用簡易ライト
◆非常用煙玉(視界遮断)
◆回復ポーション 3本(1本1万円)
そして帰りに食事をして、今日は早めに解散した。
「明日は……ついにボス部屋の扉に挑戦、だね」
「まあ、無理なら手前で帰ってくればいいだけさ」
「うん……でも、少し楽しみ」
明日。
第一層のボス部屋へ、初めて足を踏み入れることになる。
次回のタイトルは――
《スカイツリーダンジョン編:第一層 ― ボス部屋・影の守護獣》
第一層の本番であるボスバトルが描かれます。
主人公たちはまだスキルも装備も弱く、レベルも低い状態ですが、そのぶん緊張感のある戦いになる予定です。
また、ここで“職業の石盤”の存在が明らかになり、鑑定スキルの進化にも兆しが現れ始めます。
どうぞ次回もお楽しみに。




