《スカイツリーダンジョン編:第一章 ― 第三日目・再突入》続き
翌朝。
昨日よりも早い時間帯だというのに、スカイツリー前の特設ゲートにはすでに探索者たちの列ができていた。
千秋たち三人も、その列の最後尾へ並ぶ。
「今日は本格的に、第一層を全部回るつもりで行くぞ」
隆一がそう言うと、玲奈は軽く頷いた。
「うん。レベルも少しずつ上がってきてるし、昨日より楽に戦えると思う。千秋はどう?」
「……緊張はしてるけど、大丈夫。装備も揃ったし」
千秋の声には不安と期待が半々混じっていた。
だがその手には、昨日手に入れたばかりの《上位鑑定眼鏡》がしっかり握られている。
(これがあるだけでも、だいぶ違う……)
本物の鑑定スキルは言わずもがな超超超レア。
それに対して劣化版鑑定メガネでも名前とスキル種別は分かる。
探索初心者にとっては十分すぎる戦力だ。
三人は管理課を通過し、ゲートを潜った。
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◆ 第一層・影の回廊
入った瞬間、昨日と同じ薄暗い通路が広がる。
壁の模様はまるで夜のビル群の影を伸ばしているようで、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「魔獣の種類、昨日より少し増えてるな」
隆一が呟いた通り、目の前には“狼型の黒影”だけでなく、“羽根の生えた目玉の妖怪のような魔獣”も浮いている。
「……これ、どこかで見たことある気がするんだけど」
「海外映画に出てた浮遊アイボール的なやつじゃない?」
「わ! 言われてみれば!」
このダンジョンの魔獣は、どうやら既存の物語やゲーム・映画などを参考に生成されているらしい。
それこそが“現代型ダンジョン”の特徴でもあった。
「来るぞ!」
浮遊眼球が三人に向かって魔力の槍を放ってきた。
千秋は咄嗟に身を低くしたが、その瞬間――
「《クイックステップ》!」
昨日覚えたばかりのパッシブスキルが反応し、千秋の動きは一瞬ふわりと軽くなる。
槍をかすめながら回避に成功。
「ナイス回避! 行くよ、千秋!」
玲奈が短剣を構え、隆一が前衛に立ち、三人は連携して魔獣を撃破した。
光になって消える魔獣。
足元には小さな石――魔石が転がっている。
「魔石だ。……弱い魔獣の魔石はやっぱり安いな」
隆一が拾い上げながら言う。
「でも、数を集めれば資金源にはなるよね」
「うん。それに……」
千秋は足元に落ちている丸い筒状のアイテムを見つけた。
「スキルロール……!」
「出たか。確率3割だから、今日は運良いな」
鑑定メガネをかけ、千秋はロールの名を確認する。
●《影滑り(シャドウグライド)》――アクティブ
「影系スキルが続くね。千秋、適性あるのかも」
「え、そ、そうなのかな……?」
スキルレベルは最大5段階。
スキルを使い込むことでSPが増え、少しずつ上達する。
千秋も昨日から《クイックステップ》の使用感を掴み始めていた。
そして探索は続く――。
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◆ 昼過ぎ・軽装備キャンプ
一度ダンジョン入口に戻り、管理課に魔石と部位を売却。
その後、三人は休息し、食料と回復薬を補充した。
探索は一日に一度が基本で、無理な連投は事故率が跳ね上がるからだ。
「千秋、今日のスキルロールはまだ使わないの?」
玲奈の問いに、千秋は小さく首を振った。
「……今のSPじゃ、強いアクティブ系はちょっと怖い。使いこなせないままじゃ迷惑かけちゃうし」
「それでいい。スキルは焦って付ける必要はない」
隆一が頷いた。
「ただ――鑑定やアイテムボックスのスキルは、手に入ったら即装備しろ。あれは例外中の例外だ」
「うん……」
鑑定とアイテムボックス。
スキルには10段階の種類があり、上位ほど希少。
千秋はまだそれを持っていないが、いずれ超上位を拾う“未来”が待っている。
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◆ 夕方・帰宅
探索を終えた三人は、再び外の世界へ戻った。
空はすでに夕焼けに染まり、人々のざわめきと車の音がいつもの日常を思い出させる。
「今日もお疲れ」
「ありがと。また近いうちに行こうね」
「明日は休息日。明後日、再探索だ」
三人はそれぞれの帰路につく。
千秋は振り返ってスカイツリーを見上げた。
(強くならなきゃ……)
その瞳に宿る光は、昨日より確実に強くなっていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
千秋たちはまだ第一層の途中ですが、レベルがゆっくり上がり、スキル運用にも慣れ始めています。次回はアイテムボックスに関わる重要な出来事が起き、ダンジョン内で泊まる準備が整い始める流れに入ります。
次回タイトルはこちら!
▶ 《スカイツリーダンジョン編:第一章 ― アイテムボックス覚醒》




