《スカイツリーダンジョン編:第一章 ― 初探索(続き)》
スカイツリー内部へ進むと、天井の光が落ち着き、薄暗い青白い通路が奥へと続いていた。
外とは違う空気。湿った石のにおいと、どこか澄んだ冷気が肌を撫でる。
「……ここから本当に、ゲームじゃないんだよね」
玲奈が小声でつぶやく。俺もその気持ちは痛いほど分かる。
でも、引き返したいとは思わなかった。
なぜなら——
「千秋、玲奈、いくぞ。まずは弱い魔獣だけの区域だ。焦らずやる」
村瀬おじさんが言うその声が、妙に安心感をくれたからだ。
◆
通路を進んで三分ほど。
最初に出会った魔獣は、小型の犬ほどの黒い影の獣だった。
「シャドウパピー……かな?なんか可愛い名前だけど」
「油断するな、牙は普通に鋭いぞ」
おじさんが前に出て剣を構えた瞬間、影犬は低く唸りながら飛びかかってきた。
「うわっ、速っ!」
その一撃を、おじさんは軽い体捌きで避け、柄で頭を小突くと影犬は煙のように霧散した。
地面にコロンと黒い石が落ちている。
◆ 《魔石(小)》を入手した。
「これが魔石……小さいね」
「弱い魔獣はこんなもんだ。売値も安いが、積み重なれば悪くない」
おじさんがそう言って拾い上げ、俺も同じように魔石を拾った。
その後、さらに影系の小型魔獣を数体倒し、3割ほどの確率で魔石が落ちた。
ときどき「牙」「影布」といった部位も落ちるが、これらは加工スキル持ちでないと使い道がない。
「スキルロール……今日は出ないかなぁ」
「まあ、2時間で一本見つかればいい方らしいからね」
そんな話をしながら通路を進むと、少し広い空間に出た。
そこで俺たちの「レベルアップ」が起こった。
◆
空気が震え、頭の奥でカチリと何かが噛み合う感覚。
身体がほんの少し軽くなり、視界が冴える。
「——あ、これ……レベル上がった?」
「おう。こういう感覚がレベル1→2のときの変化だな」
おじさんも微かに笑った。
スキルをまだ持っていない俺たちでも、レベルが上がるごとに基本ステータスは上昇する。
SPも1だけ増えた。
「……地味だけど、なんか嬉しい」
「積み重ねだよ。強いスキルほどSPが必要になるって村瀬さん言ってたし」
◆
その後も慎重に探索を続け、無理をせず——
「今日は、ここまでだな。初日だし、慣れるだけでいい」
「だね……疲れたぁ……!」
俺たちは入口へと戻った。
◆ 《探索1日目終了》
出口のゲートをくぐると、再び現実の世界へ。
外に出た瞬間、身体の緊張が解けて、同時に安堵の息が漏れる。
「お疲れ。まずは買い取り所へ行くぞ」
◆
「ダンジョン管理課・買い取りカウンター」は、スカイツリーの横に特設されていた。
白いブースに並ぶ職員たちは慣れた手つきでアイテムを鑑定し、入力していく。
「魔石小、7個で……全部合わせて1万2000円ですね」
「お、悪くない」
「ほんとにお金になるんだね……!」
実感が湧いてくる。
「さて、買い出しだ」
俺たちは近くのアウトドアショップへ移動した。
◆
——初日の買い出しはこんな感じ。
・市販のテント(小・2人用)
・キャンプマット
・保存食(3日分)
・水袋
・簡易ランタン
・低価格の護身用ナイフ(玲奈用)
・クラフトロープ
・魔獣避けのスプレー(弱効果)
全部で4万円弱。
正直高いが、ダンジョン攻略のためなら必須だ。
◆
その夜、俺たちは早めに解散し、次の探索日まで休むことにした。
「千秋、明日は体力温存でいいからね」
「うん。次の探索は……明後日ね」
ダンジョンには毎日入る必要はない。
むしろ、休息を挟んだ方が安全だと管理課も推奨している。
俺は家に帰り、布団に倒れ込むように寝た。
——こうして、俺たちのスカイツリーダンジョン生活は始まった。
初回探索を一から構成し直し、世界観のルールに基づいた導入編としてまとめました。アイテムの確率、レベルアップ、魔石の価値など細かい設定が今後の展開の軸になります。次回はキャンプ準備と、二度目のダンジョン探索。そして主人公が“運命を変えるアイテム”に出会います。
次回タイトル:
《スカイツリーダンジョン編:第二章 ― 二度目の探索と運命のスキルロール》




