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消えた五十両

掲載日:2024/11/10

むかし、むかし。茶碗を売る店があった。


そこの番頭はソロバンが得意であった。


お客さんがたくさん買い物しても…


パチ! パチ! パチ! パパチ!


…とすぐさま計算し、お客を待たせることはなかった。


「なに、カンタンさ。品物の値段を覚えているから、勝手に指が動くんでさ」


番頭はケラケラと笑うのだった。




ある日のこと。

ひとりの若い男が店に入ってきた。


「うむ、これは…なかなか…」


店の茶碗をながめ、それぞれの手に金の茶碗と銀の茶碗を手に取った。


「番頭さん、この茶碗は、それぞれいくらするんだい?」

「へい、金の茶碗は百両、銀の茶碗は五十両でございます」

「そうかい…ありがとう」


そういうと男はしばし、考え込み…


「よし決めた!この銀の茶碗をおくれ!」

「はいよ、五十両でございます」


男はお金を払うと銀の茶碗を抱えて店を出ていった。

男が虫のように小さくなったとおもったら、なんと引き返してきた。


「どうかしなすったかい? お客さん? 忘れものですかい?」

「やっぱり金の茶碗にしようと思ってね」

「さようでございますか…どうぞ」


と、金の茶碗をわたした。

男がそのまま持っていこうとするもんで、番頭さんはあわてて引き止めた。


「ちょいと、ちょいとお客さん。金の茶碗は百両でございますよ」

「…へ!? おいおい、きちんと支払ったろう?」

「???」


と、番頭さんはどうにも腑に落ちぬ顔。


「いいかい? 最初に払ったお金が五十両」

「そうですね」

「だろ?そんでいま、返した銀の茶碗が五十両だ」

「そう…ですね……」

「銀の茶碗は五十両って番頭さん言ったじゃないか」

「そう……です……ねぇ……」


番頭はやっぱり浮かぬ顔。


「五十と五十。合わせて百じゃないか」

「ああ、なるほど…ねぇ…」


しかし番頭の手には、五十両だけ…。番頭は大きく首をかしげる。


「納得いかないかい?…そうだなソロバンをつかいなされ」


番頭はソロバンを持ってきた。


「さあ、番頭さん。ちゃんと計算してみてくださいよ」


番頭はまばたきせず、気合いを入れてソロバンをはじいた。


「では…、銀の茶碗が五十両なので…最初に五十両を支払った…」


パチン!


「つぎに銀の茶碗を番頭さんが受け取ってまた五十両というわけだ」


パチン! パチン!


「だからあわせて百両というわけさ」

「へぇ…たしかに百両だ。まいど………ありがとうございます」

「納得したかい? そんじゃ、あっしはこれで…」


番頭はお客さんを送りだした。

しかし、やっぱりどうにも腑に落ちない……。

番頭は男がかえったあとも、すきまの時間にソロバンをばじいておった。


「なんどやってもソロバンは百両だ。それなのに手もとには五十両…」


そろばんが得意な番頭も首をひねった。


「う~む、五十両はどこへやら………?」

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