第五章プロローグ
二匹のドラゴンは、しばらくの間上空で互いに睨み合っていたが、突如として大きな方が咆哮した。そして、そこから厄災が始まった。二匹は互いを攻撃し始め、その戦闘によるブレスが街へ降り注いできたのだ。家屋は抉り取られ、巨体が衝突すると、建物は崩れ落ちていった。
この街は、人間の活動によって徐々に終わりゆくものになるのだと思っていた。昨日と変わらないいつもの日常の最中、唐突に終わりを迎えるなどとは、一度たりとも思ったことはなかった。徐々に破壊されつつある街並みを見て、俺は確信した。この街はもうすぐ、人間でないものによって滅びることになるのだと。
俺をはじめ、野次馬性分で空を眺めていた住民は、その光景をただ見守ることしかできなかった。空を飛ぶドラゴン同士の戦闘なんか、ギルドの連中でさえ大して介入できないだろう。一端の住民なんて、被害の様を檻の外から指を咥えて見ていることしかできないのだ。
辺りからは、いつしか祈りの唄が聞こえてきていた。どうやら、神に願いを乞うている連中がいるようなのだ。俺は神なぞ信じたことはなかったが、このとき初めて、信じる人間の気持ちが理解できた気がした。
でも俺は、神に祈りはしない。祈ったところで運命は決まっている。そして、今更逃げたところで、街と俺の結末はさして変わらないはずだ。それなら、この結末を最後まで見届けてやる。どちらのドラゴンが勝利するのか。それともこの街が壊滅するのか。もしくはもっと別の運命が待っているのかーー
【Zの備忘録】




